第19話 『煌蒼火』
枷を外したかのように全てをミカエルが正しくあるためになるよう侵食し始めた『
異形の怪物へと姿を変えたミカエルは、同胞である天使たちも蝕み、異形なる存在へと天使たちと変えていく。
『
世界は新しい地獄へと形を変えたのだ。
「智恵深き魂たちが集い、天上の日より出でし『
理性を無くし、浸食の限りを尽くそうとしていた異形なるミカエルも、ポラールを貪るべくミカエルに姿形を変えられた天使たちも動きを止めてしまっていた。
黄金の空は一瞬にして澄み渡る蒼へ、天上には輝く巨大な光輪と、その周囲を踊るようにして舞う蒼色の魂人たち。
あまりに美しく汚れの無い絶景なる地獄。
『至高天』へと至るための道、全ての『魔』を『
あまりの美しさに目的を忘れてしまったかのように動きを止める異形の存在たちの元に、小さな火から燃え上がるように『
「な……これは一体?」
「溢れ出る『
――ボッ!!
「ウガッ!? ……ア?」
全身から噴き出ていた『
しかし、燃やされているのに痛みどころか、逆に身体が暖かくて心地よくなってきている状態にミカエルたちは驚きを隠せなかった。
何が起っているのか把握できないではいるが、攻撃されていると理解したミカエルに姿を変えられた異形の天使たちは、ポラールの方へ視線をむけ、『
「『美徳』を消されし天使に何ができますか?」
「ナ……ナゼダ??」
意気揚々と突撃をしようとした異形の天使の1体が異変に気付く。
ミカエルの力に蝕まれ、『
「ア……ガァッ!?」
「『
「ガァァァァァァァッ!!」
異形なる天使たちの悲痛な叫び。
先ほどまで心地の良い炎だったのが、気付けば全身を焼き尽くす地獄の業火へと変わっていたのだ。
どれだけ空中で藻掻いても消えること無き『
蒼き炎に包んだ対象から『魔』に関する力が発せられた時、その『魔』を燃やし、対象から力を消し去り、1度その力を燃やされれば2度と使用することが出来なくなる天獄の火。
天使として残っていた魔力も、『
次々と異形なる天使たちが消滅していき、自身の『
「何故……『美徳』と『大罪』にこれほどまでの差が……」
「もし私以外の誰か……そうですね、ガラクシアなんかが戦っていたら危なかったのかもしれません。皆で誰がどういう相手と戦うか考えた結果の話です」
「能力そのものを消滅させるなど……こんな馬鹿げた力……」
「貴方の『
「……天使の長がこのような不甲斐ない……申し訳ありません主」
「天使の長だからこそ、力を使われる前に終わらせる術を選んだのです。……しかし、まだこの魔王戦争は終わりではないのでしょう?」
「……」
「……ここに来て口が堅いのは驚きです」
灰になって空に散っていくミカエルを確認しながら、『
『美徳』を司る神熾天使の全てを撃破し、残るは魔王であるアクィナスのみになったと思われる現状。
自分たちが得ている情報では、神熾天使以上の戦力はいないはずなので、残りは数でアクィナスと真名を持たない天使たちを確実に倒すのみなのだが、ポラールはどうにも不安を感じざる終えなかった。
「『七元徳』1番の魔物が相性と事前準備をしたとは言え、こうもアッサリ……ご主人様はどうお考えですか?」
ポラールは背後から近づいてくる大きな気配に対し、ゆっくりと振り向きながら問いかける。
そこにはウロボロスに乗ったソウイチにメル、ガラクシアや五右衛門など『大罪』陣営勢ぞろいといった面子が揃っていた。
「そうだな……こっからが本番って感じで思っとくのが正解かもな」
「相変わらずご主人様は前線に出てこられるのですね」
「『七元徳』と直接話もしたいし、俺がいるとこによって相手の出方も変わってたと思うぞ」
「……つまり今は誘き寄せられていると?」
「……そうなんだと思うけどなぁ」
ソウイチ達が視線を向ける場所。
『七元徳』の本拠地であるダンジョンがそびえていた地点には、見たことも無いぐらい巨大な金色の天秤が出現していたのだった。
――黄天の秤前
神熾天使を全て撃破し、なんとか『七元徳』前までやってくることができた。
メルや五右衛門、デザイアによる情報収集と事前準備のおかげで、『美徳』の能力に対する対策も、神熾天使それぞれの強さに対する対策もバッチリ行うことができた結果、危なげなくここまで来ることが出来た。
あまりにもスムーズすぎて、怪しさ満点だが仕方ない。
本当に最強の魔王の内の1体かどうか怪しいレベルの戦争状況なので、まだこの後色々あるのはほぼ確実、実は神熾天使たちは囮で、本命戦力を実は隠していましたってパターンも全然ありうるのが『魔王』ってもんだと思う。
「確実にあの秤まで来いってことだよな」
「ますたー……すんごい気配撒き散らして誘われてるよ」
「俺でもピリピリ感じるくらいだから、とにかく俺に来いってことなんだろうな。さっきのミカエルの数倍強そうな気配してるぞ」
秤の方から漂う強烈な気配。
おそらく『七元徳』が放っているだろう気配、さすが最強の魔王候補なだけあって、今まで味わったことのない重い気配だ。
ウチの面々の戦いを見て、ここまで挑発的な行為をしてくるってことは、余程この後の展開に自信があるんじゃないかと思えてくる。
ダンジョンにはアヴァロン、ハク、レーラズにリトスと万全って言えるような布陣を残してきた。
もし俺が引きこもっていれば、『七元徳』の必殺の手がダンジョンに放たれていたと考えれば、ポラールやデザイア、阿修羅のいる前線のほうが対応しやすいから、結果的に良かったのかもしれない。
「……前に出てきたことが阿呆な選択だったかは行けばわかるな」
俺はウロボロスに指示を出し、周囲を警戒しながら巨大な天秤へと向かうことにした。
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