外伝 『魔王』とは?


 世界に多数存在している『魔名』を持ち、多種多様な力を司る魔の存在である魔王。


 平和に暮らそうとする人間や亜人たちを脅かすような存在もいれば、共存している魔王もいる。なんなら人間に怯えながらコソコソしている魔王だって存在している。


 人間たちに怯える魔王でも、魔王同士で戦うときには勇ましい姿を見せる者が多い。それは何故かと言えば、生まれたばかりの魔王は魔王同士で争うことを強いられ、それ以降も様々な魔王に自身の『魔名』を狙われ続けるという枷が存在しているからである。


 DEと呼ばれる様々な方法で得ることのできる魔王本体のみが使用できる便利ポイント。ダンジョンの命でもあるコアを通して物を創造したり、ガチャや配合、野生で1度でも支配下においた魔物を再召喚したりなんてこともできてしまう。



「人間や亜人たちが一生懸命造り上げた街を一瞬にして創りだせてしまうってのは凄いんだけど、恐ろしいな」


「どの魔王でも出来てしまうのが『原初の魔王』の恐ろしいところでしょうか?」


「ポラールの言う通りだよ」



 『原初』の気まぐれ報酬や、魔王戦争に勝つことで得ることのできる『魔名』や、報酬で『魔名』や魔物、『聖魔物』に武具が手に入れることのできるガチャ、これらで手に入ったモノを混ぜ合わせることのできる『配合』を用いて、魔王は戦力を伸ばしていく。


 戦に勝利し、力を伸ばし続けて、自身の存在を示すように強くなる魔王が目指すとされているものが2つある。


 最強の戦力と揃え、人間には不可能なレベルの領地を築きあげ、最強の魔王と呼ばれる存在であるのが『大魔王の頂きゴエティア』。この呼び名で語られるようになるのが魔王のゴールというような話がある。


 それと魔王界において、魔王単体での強さがトップであったり、多くの魔王が強さを認めることによって呼ばれる名が『魔王八獄傑パンデモニウム』である。



「魔王同士での同盟や、戦争前の小突き合いを制し、魔王としての力を磨き上げた者だけが辿り着ける境地……か」


「相変わらずご主人様が好きそうな呼び名ですね」


「響きが良いよな」



 力を手にした魔王は、世界を好き勝手にできるかのような自由を手にし、永遠とも言えるような寿命を使用し、己の好きなように生きて行くことができる。


 自由を手にするには魔王戦争に勝利し続けること、魔物は死んでも再召喚できるが、魔王本体とダンジョンコアだけは1度たりとも壊されることが許されぬ命がけの魔王道。


 自身の『魔名』と相性の良い多種多様な種族の魔物たちを支配し、『真名』と呼ばれる魔王それぞれに決められた数ある、魔物の名を与え、さらなる力を解放することできる力を使い、魔王界を生き抜いていく。



「どれだけ頑張ってもランダム要素があるから、魔王戦争は気を抜けないよな」


「それが魔王界の緊張感に繋がっているんでしょう」



 魔王戦争は互いのダンジョンの入り口を別時空に召喚し、『原初の魔王』が決めた様々な環境戦場で争うことになっている。

 噂によれば『原初の魔王』による忖度があったりなかったりするようだが、数えきれないほどの戦場のバリエーションが存在しているだとかなんとか…。


 空でも陸でも海でもなんてもあれ、己の『魔名』や魔物たちと相性が良ければ、ある程度のランクやレベルの差なんて簡単に覆ってしまう怖い部分、これがあるから魔王は死なぬためにも強さを求め、様々な力に手を伸ばし続けるのだ。


 魔王戦争での戦い方は本当に魔王の色がでる要素だと思う。



「俺なんかはとにかく敵の真名持ちを有利状況を作って初見殺しを押し付けて、DEの安いスケルトンなんかを強化して雪崩のようにしてエリアを確保していくやり方だもんな」


「真名持ちを不意打ちや初見殺しで倒しすぎて、魔王界では1番の嫌われ者になれましたので誉ありますね」


「それが1番勝率良いと思ったから実行しただけなんだけどなぁ…」



 機動力や転移能力を持つ魔物を活用し、敵ダンジョンに攻め込むのが好きなスタイルだったり、自分ダンジョンの罠や魔物の守り性能を前面に出し、引き守りをして相手のDEを枯らせるまで守る魔王と本当にそれぞれだ。


 魔物や『魔名』の力を活かした無限のように存在する策、特に魔物は環境や状況で力の発揮レベルが変わってくる。

 いくら強い魔物でも、不得意な環境や状況で戦えば、弱者にだって嬲るように刈られてしまうのは魔王戦争あるあるだ。



「強くなればなるほど、魔王戦争の戦い方が雑になっていくのは悪しき流れだな」


「そのおかげで簡単に勝利を手にする魔王も多く存在するようですけどね」


「突然戦争開始……じゃなくて、1カ月くらいは事前に準備する期間があるから、その期間でどれだけ勝負できるかが魔王戦争の勝敗の肝ってわけだ」


「魔物は単純な力強さだけではなく、その準備期間に輝ける存在が重宝する。ご主人様は準備期間が大好きですからね」


「魔王戦争は勝つために仕込み期間が1番楽しい派だからな」


「どれだけ準備をしても、圧倒的な力で踏みつぶす魔王が存在していますけどね」


「何も考えなくて良いからな。そこまで強い魔王はDEも無限大だろうし」


「ご主人様とは訳が違いますね」


「俺の場合はDE云々じゃないから仕方ないだろ」



 誰だって死ぬのは怖いし、築き上げた結晶が壊されるのは勘弁したいところ、それを糧に強くなるのもけっこうだが、せっかく魔王として爆誕したのならば、どれだけ嫌われようと最強の名を手にし、いつか全ての魔王に認められるような強者を目指すのが道だと俺は思っている。


 確実に勝てる方法を模索し続け、1つの負けすら許さない完全な勝ちを続けることで、いつか世界中の全ての存在が恐れるような、そんな偉大な魔王になって、この摩訶不思議な世界を掴んでみせようじゃないか。



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