外伝 日々の『成長』


――『罪の牢獄』 居住区 食堂



「ウチの面々って、燃費の良くて広範囲なスキル持ちばっかで凄いよな」


「……それも『大罪』の特徴に含まれるんじゃないかのぅ? 燃費も良く広範囲じゃが、敵味方関係無しの諸刃の剣ってやつじゃな」


「逆に燃費悪いのって誰かいたか?」


「主のスキル評価は燃費を少し気にしすぎじゃと思うが……」


「大事じゃないか?」


「妾らの中に魔力不足に陥りそうな者は考えられんぞい」


「確かに……」



 デザイア&ニャルラトホテプと一緒に少し遅めの昼食を食べている。


 なんとなく頭に浮かんできたスキルの燃費について語り合おうと話を広げてみたものの、デザイアには何故か呆れられているような気がする。

 

 ウチの面々はスキルの燃費が良く、広範囲で高威力なものを揃えており、敵味方関係無しに破壊していくところは変わらぬだが、戦場を手早く支配することのできるスキル持ちが多いので大変助かっている。



「ガラクシアとリトス辺りは燃費の良いイメージは無いがのぅ、リトスは自分で魔力を回収できるからええんじゃが」


「阿修羅とアヴァロンは範囲が他と比べれば狭いけど、かなり燃費良くて連発可な感じするもんなぁ~」


「戦うレンジによって構成も何もかも違うもんじゃから仕方ないのではないか?」


「ポラール・デザイア・ハク・ガラクシアあたりは規模が壊れてるからなぁ」


「妾は自在にやりくりできるから同じにせんといて欲しいんじゃが……」


「デザイアはNo.1初見殺しの称号に相応しいもんな!」


「ハクと良い勝負じゃと思うがのぅ……後ウロボロスも候補じゃな」


「ハクは存在が目立つから相手も構えちゃうけど、デザイアとウロボロスは低燃費かつ手短に相手を始末できるから凄いよなぁ」


「……ポラールやガラクシアみたく派手さは無いもんじゃが」


「殺せさえすれば何でも良くないか?」


「……その考えが主の良いところかもしれんのぉ」



 とんでもなく派手なスキルも嫌いなわけじゃないが、目立ちすぎる場合もあるし、敵に自分たちの位置を完全に把握されかねないので、どちらかと言えば地味で短時間で終えれるスキルの方が個人的には好きではある。


 ポラールやガラクシアは、スキルがド派手だけど、その一撃で何でも破壊してくれるから別に派手さが気にならないので、そのくらいの威力と範囲になってくれれば問題は無いんだけどな。


 転移能力持ちは転移して後ろから初見殺し押し付ける最強のセットがあるから、それが俺の中でも1番評価にはなるんだけど…。



「ポラールの『至高天・堕天奈落輪廻パラダイス・ロスト』なんかは見とって面白くて好きなんじゃがのぅ」


「『至高天・堕天奈落輪廻パラダイス・ロスト』は種類が多すぎて把握しきれんのだよなぁ……把握する意味があるかどうかは置いておいてだけど」


「それぞれ違う効果があるんじゃから、ポラールも使い分けるの大変じゃろうて……」


「デザイアの『深奥の虚空・マウス・無明の閨房・オブ・無窮の宮廷マッドネス』もド派手だよなぁ……結界範囲とんでもなく広いし」


「アレを本気で使ってしまうと、妾とニャル以外役立たずになってしまうから使いどころ少ないのが難点じゃな。……後疲れるんじゃ」


「『枢要悪の祭典クライム・アルマ』は大抵とんでもない結界作れるから恐ろしいもんだよ」


「……フェルも妾らと同じような陣作りスキルを習得したと話を聞いたのぅ」


「五右衛門が言ってた気がする」



 デザイアの『深奥の虚空・マウス・無明の閨房・オブ・無窮の宮廷マッドネス』、ポラールの『至高天・堕天奈落輪廻パラダイス・ロスト』、阿修羅の『天下風雷ノ陣・大狂界天狗道』などなど、『枢要悪の祭典クライム・アルマ』は大体が自分は全力を出し尽くせるが、相手には重い枷を強制するような特殊な結界スキルを使用することが出来る。


 そんな先輩たちを羨ましがったのか、フェルが五右衛門との修行の末に新しいスキルを完成させたという話を聞いた覚えがある。

 まだ実際に見たわけじゃないが、五右衛門が嬉しそうに広めていたところを見ると、それなりに凄いもんが出来上がったんだと思って良さそうだ。



「とんでもなく寒そうな結界スキルになってそうだな」


「話によると『災禍』の状態異常をメインに置いて、氷と索敵無効を活かした陣になっとるそうじゃがな」


「そっちをメインに置いたのか……面白いな。シンラとは一生共存できそうにないけど」



 フェルだけが持つ唯一無二の状態異常である『災禍』。

 相手に付与することができればアビリティ&スキルを2つずつ封印することができる超強力なデバフ、予想だが氷山でも創りだして気配を消しながら滅多打ちにするようなスキルになってそうな感じかも。


 五右衛門は特殊結界というより、仙法や自慢の適応力でどこだろうと十全に力を発揮できるから結界以外のスキルに重きを置いているタイプだったはずだけど、そんな五右衛門と修行して結界を身につけると思うと、なんだか面白いもんだ。


 五右衛門が1番頼みやすかった説が浮上してきたが、この話は面倒な感じになりそうなので黙っておこう。



「それこそフェルの陣は妾らと違って、他者との共存ができそうじゃから五右衛門やメルと相性が抜群かもしれんがどうじゃろうか」


「おー……組み合わせ前提の特殊結界かぁ~…俺たちらしくないけど、新しい戦法は大事だから後で聞いてくるか」


「……妾は昼寝の時間じゃのぅ」


「ここまで話をしたんだから逃すわけないだろ」


「……会話を続けたのは失敗じゃったか」


「ニャルも協力頼んだぞ! デザイアが逃げないようにしといてくれ」


「とほほ…じゃ」



 新しいスキルを使用可能になったのはフェルの努力のおかげだ。

 フェルがどういった意図をもってスキルを編み出し、どのような活かし方をしたいか聞き取って、魔王として十全に活かしてあげられるように頭を悩ませねばいけない。


 せっかくの日々の成長を無駄にしないため、デザイアが教えてくれた活かし方を忘れない内にも行動に出なきゃいけないな。


 成長できるってのは素晴らしいことだと感じる今日この頃である。

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