外伝 『罪と徳』
――『罪の牢獄』 居住区 食堂
「『大罪』と『七元徳』の戦いって、魔名だけ聞いたらライバルの戦いみたいだよな」
「アークに来ていた冒険者の話では無かったのですか?」
「その話は終わった」
「……さすが閣下ですな」
「そんな褒めても何もやらんぞ」
「それは残念です」
ルジストルと晩飯を食べながら他愛もない会話をしている。
帝都の制圧は、まだまだ気になる点が多くはあるものの、一応終了したと区切って良いラインまでやり切ることができたので、次の壁である『七元徳』との魔王戦争の話をしている。
アークに来ていた冒険者についての話もしていたような気がするが、俺の中で整理できたのでその話は終わりだ。
『七元徳』側も気にしている通り、『大罪』と『七元徳』は関係性の深い『魔名』であるようで、率いている魔物は全然似ていないがライバルのような雰囲気が魔王界では噂になってきている。
「ここまで意識させられると気にしちゃうよな」
「閣下が燃えるほど、我らの士気も上がるので結果オーライでは?」
「士気に関しては元々高いから良いんだけど、ライバルって意識すると、やっぱ俺の手でアクィナスさん討伐したほうが燃える展開なのかなってなるんだよなぁ」
「閣下が前線に出ても消し炭にされるだけですのでやめたほうが良いですな」
「俺が前線でれば、天使たちは血眼になって俺だけ目掛けて突進してくるぞ?」
「私であれば採用するかもしれませんが、他の者が許すとは思えませんが……」
「俺という餌をぶら下げた最高の作戦が1番強そうではあるんだけど……まぁリスクもあるんだが」
「デザイア様のようなタイプが、もし『七元徳』側にも存在していた場合は戦争終了の可能性がありますね」
「デザイアが出し抜かれることなんて無いだろうから大丈夫だろう」
「他の者が良いのなら、閣下の作戦で良いと思います」
なんとなくだが、ルジストルから俺との話に面倒くさがっている匂いがプンプンしてくるが、気にせずに話を続けることにしよう。
天使はプライドが高く、結局アクィナスさんの言う通りにしか動けないって点を考えれば、俺を餌にして動かして狩るのが1番効率的なような気がする。
『大罪』と対立してくる『美徳』の力をもった神熾天使たちが集団で殴りかかってくるのが1番面倒なので、それを避けるような展開を作らなくちゃいけない。
「まぁなんとなくだけど、残った6体の神熾天使で1カ所を攻めるような大胆なことをできるようなタイプじゃ無さそうだしな」
「コアから召喚できない我らかfらすれば、1体ずつどうにか落とされるのが1番のダメージになりますが、バランスを考えそうな天使さんたちはしてこないでしょうね」
「6体の神熾天使で突撃してくる可能性も考慮するけど、どっちかと言うと、相手の戦い方を受け止めるタイプだと思うから、いつも通り押し付けていかないとな」
「守る柔軟性な思考が閣下にはありませんからな」
「自分たちの強みを押し付けて潰すのが、やっぱり『大罪』の戦い方って感じしないか?」
「『大罪』には相手の強みを受け止めて、柔軟な連携をとるよりは最速で強みを押し付けて、相手に何もさせず潰すのが性にあっておりますからな。閣下の大好きな『不意打ち初見殺し』が効率的かつ最善でしょう」
「さすがにいつもの手法が通用する相手には思えないけどなぁ」
今までやってきた『初見殺し』戦略はしっかり考えないと通用しないだろう。
神熾天使たちを分断させ、誰がどの天使と戦うかしっかり組み立てないと痛い目をみるのは俺たちなのは明確なことだ。
タイプ相性を考えて当たらせれば、特化型の多い俺たちのほうが勝ち切ることができる可能性は高くなるはず。
真名持ちは俺たちのほうが圧倒的に多く、魔物の総量は相手の方が何百倍も上になので立ち回りはミスらないようにしないと…。
「やはりメル様とイデア様、それにデザイア様による敵戦力の分析が我らの1番の強みですから、事前に何通りかの戦う組み合わせを皆で決めておきたいですね」
「それが1番大事……神熾天使は俺たちと違って、バランスの良い性能してるから相性を見出すの大変そうだけどな」
「いつもバランス型は特化型には勝てない……よく閣下がおっしゃられていることではありませんか」
「やっぱり脳筋が1番ってことだな」
「今のところ勝てているので否定はしませんが……」
相手は天使ということで、基本空中戦になることを前提として戦略を考えなくてはいけない。
フェルやアヴァロンは、相手がずっと飛んでいると十全に力を発揮できないタイプも、ウチにはいるので、どうにか組み合わせに頭を回さなくちゃいけない。
『七元徳』側も、さすがに俺たちのお得意の転移して殺す戦法に手を打ってくるだろうから、ウロボロス・デザイアと念入りに転移法を考えとかないといけないなぁ。
「やはり閣下は戦争について考えているときが1番楽しそうではありますね」
「俺の取り柄をそれくらいしか無いからなぁ……」
「おかげさまで私の仕事が多くて困りますな」
「感謝しております!」
「……なら1つ良いでしょうか?」
「……良いだろう」
「シチューと白米の組み合わせ食べる方々を見ると、鳥肌がたつので食堂から出て行ってもらってもよろしいですか?」
「パン派は表に出ろやゴラァァァァァッ!!」
今日も『罪の牢獄』は大変平和だ。
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