エピローグ 『魔帝国』


――『罪の牢獄』 居住区 コアルーム



 帝国騎士団の団長格たち、そして多大な女神の力を得た帝国最強騎士である長『世界ザ・ワールド』のフェルナンドを退け、無事帝都を制圧することができた。


 事前に俺の行動を気に喰わなさそうな魔王を滅ぼしておいたおかげで、漁夫の利を狙うような輩も現れることも無く、無事帝都を落ち着かせることができた。



「あの3人を中心に、残した騎士団員も含めれば確実に帝都を落ち着かせることができるはず」


「シャンカラの力で生まれ変わってしまいましたね。あれはガラクシアの洗脳に近いものを感じました」



 実は生かしていた第7師団のソレイユ、元第2師団団長のミネルヴァ、そしてシャンカラの力で、帝都守りたい欲に染まってしまったフェルナンドの3人で、今後の帝都を任せて行こうと配置させてもらった。


 フェルナンドは、そこらへんの魔王じゃ歯が立たないくらい強い存在なので、何人かの団長格が欠けてしまっているが、それを補えるくらいやれるはずだ。


 ソレイユはみたいな真面目な騎士がいたほうが、騒乱の終息も速くなると思い、なんだかんだ生かしておいたので、帝国騎士として頑張ってほしい。



「帝都には興味が無いようですね? 第2の拠点にするかと思いましたが……」


「俺が前に出るより、フェルナンドやミネルヴァに任せた方が上手くまとまるさ。正直それどころでもないし」


「居住区にスケルトンの大群がいた割には、住民は落ち着いていましたね」


「ソレイユやフェルナンドの対応のおかげだな」



 ポラールは帝都を第2の拠点として考えても良いようなことを言っているが、余程のことが無い限り、帝都には行くことは無い気がする。

 帝都が空いていることに釣られて、ノコノコとやってくる魔王や怪しい輩を成敗しにいくときは、もちろん跳んでいくが、それ以外だと今のところ帝都でやりたいことは無いからだ。


 この後には『七元徳』との大勝負が待っている。

 相手もリトスの本気とやり合って、色々と対策をしてきそうだし、今回の帝都制圧戦をどっかしらで観戦してただろうから、さすがに油断せずにやってきそうだ。


 魔王戦争だから、女神が入り込んで来る可能性は少ないと思っているが、もしかしたらの可能性もあるから用心しとかなきゃいけない。



「『異教悪魔』や『海賊』と違って、さすがに対策ガチガチでやってくるだろうな」


「我々を対策することが出来るのでしょうか?」



 タイマンに持ち込むために、結界や転移を使用して場を創り出して、優位な状況で戦うというシンプルなやり方だからこそ、対策もしやすいだろうが、ウチの面々はその状況に持ち込むのが上手いし、やり方も何通りもあるから大丈夫だと思いたい。


 だが、相手は数が多ければ力を増す天使の軍勢。

 俺たちと同じように、天使にとって優位な戦況を作るのは得意中の得意どころか、俺たちの想像以上の力でやってきそうだ。


 

「怖さと同時にワクワク感があるよなぁ……これだけ大勝負だと」


「珍しいですね。ご主人様が戦う前から強気というのは」


「魔王界の頂点に挑むんだし、『罪の牢獄』みんなの全力を叩きつけてれるのが楽しみでさ」


「余程戦場が広くない限り不可能な話ですね。各々の結界が詰め詰になってしまいます」


「みんなでやる時点でアヴァロンは本気でやれないもんなぁ」



 まぁ具体的な戦略は追々考えるとして、『七元徳』相手でも正面からぶつかり合える力が十分あるので、できるだけ相手の力を発揮させないような方法を煮詰めていくつもりだ。


 帝都が俺の支配下におかれたので、アークの方も盛り上げることができそうなので、そっちのほうにも力を入れていきたい。



「そんでもって、条件がほとんど揃ったな」



 記憶の欠片の条件であった、四大国の王討伐と人間の中で強い奴を数人殺すっていうのを達成することができた。

 残りは『大罪』の魔名をEXランクにすることだが、『七元徳』に勝ったらどうにかなるだろうから、しっかり勝ちきるのみだ。


 帝国皇帝さんが死亡し、その力を引き継いだフェルナンドを支配したことで手に入れた欠片は『この世界の奴は欠片に過ぎない』という、なかなか難しい内容のものだった。


 そして、人間の強い奴らを倒した報酬の欠片は『信用は直感で決める』という記憶というよりは、この世界に来る前の意気込みのようなものだった。



「この世界に来る前の俺は、随分と『原初』と『女神』にボコボコにされてたようだな。今回の感じだと『原初』と『女神』の本体はどっか違うとこにでもいるのかな?」


「難しい話ですね」



 全部揃わないと分からない上に、この記憶の欠片とかいうやつも正しいものなのか信用がイマイチできないもんなので考えすぎても無駄な気がするが、わざわざこんなアイテムがあるんだから、全部揃えば面白くなるんだろう。


 ポラール達からすれば何がなんだが意味不明って感じの話だろうが、特に不満を漏らさずに聞いてくれるので助かるものだ。



「なんだか終盤って感じがするな。1年とちょっとで魔王界のトップと戦うことになるなんて……筋書き通りだとしても、随分せっかちな脚本家だな」


「1年では短いですか?」


「魔王界のトップが3000年とか言ってるのに、1年ちょっと奴に魔王戦争やりますなんて、魔王界の看板が廃れるようなもんだけど、そういうのも気にしていない進行スピードだからな」


「ご主人様がそれだけ脅威ということですね」


「『大罪』っていう魔名を授かれた運もありそうだけどな」



 『七元徳』との魔王戦争まで残り僅か、帝都制圧までも準備していたが、ここからは『七元徳』からのお邪魔虫が、アークか『罪の牢獄』に飛んでくる可能が高いので要注意しなくちゃいけない。


 戦場も何かしらの忖度が働いて、『七元徳』に有利になる可能性もあるので、色んな戦場に対応できるような悪巧みをしておきたい。



「真っ白な羽を毟り取ってやる……くらいの気概で行かないとな」

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