第19話 『帝都制圧』


 フェルナンドは『女神の力』『世界ザ・ワールド』『皇帝ジ・エンペラー』という強大な3つの力を手に入れた。


 『大罪』の魔物たちが放つ理不尽なまでの妨害能力に対抗でき、正面向かって戦えるまでの耐性と、限界を超えたレベルをもたらし、凄まじいステータス上昇になる『女神の力』。


 味方に多大なバフ、敵に強力なデバフ、そして並の守りなら無きものとして消し飛ばすことのできる崩壊の力を持ち、帝国騎士団でも万能かつ、強力な力である『世界ザ・ワールド』。


 守ることや味方を支援する力もありながら、操作できる者の運命を自然と動かし、自身が勝者となれるように様々な効力が働く摩訶不思議系能力である『皇帝ジ・エンペラー』。


 どれも人間が持つには強大であり、伝説や神話で語られるSSランクやEXランクの魔物であれ、1対1で戦っても問題無いレベルの力である。



「……慣れぬ力、汝には過ぎた力であったな」


「何故だッ!? ……『皇帝ジ・エンペラー』の力は俺を勝者へと導くものじゃないのか?」


「0%は何をしようとも覆らぬ。その力は不可能を可能にするものではなく、1%を少しずつ100%に近づけるものである」


「女神の力をもってしても……届かぬ存在だと言うのか?」


「如何なる『神』であれ止めることは出来ぬ存在こそ、我ら『大罪』なり」



 女神の力によって、さらなる高みへと昇華した『世界ザ・ワールド』のスキルをいくら放っても、『創造ト原理ノ神ブラフマー』の『創造せし黄金の卵ヒラニヤガルパ』の前に無力化されてしまう。


 しかも、フェルナンドのスキルを吸収するたびに大きくなり、気付けば3mほどの大きさへと膨れ上がった『創造せし黄金の卵ヒラニヤガルパ』がフェルナンドを囲っている状況。


 スキルを受け止め、そのスキルの完全耐性を持った新たな『創造せし黄金の卵ヒラニヤガルパ』を自ら創り生み出すループ型の防御スキルを前に、フェルナンドは空に浮かびながら、天を仰いで絶望する。



「実力差を測る術を持っておったら、そうなることは無かったかもしれぬな」


「……だとしても、無抵抗で帝国を渡すつもりは無い」


「良い心がけなり、此度の戦は我らが優勢、主の都合ではあるが利用させてもらうとしよう」


「ぐおぉぉぉぉぉぉッ!?」



――ギュルギュルッ!



 周囲を囲っていた『創造せし黄金の卵ヒラニヤガルパ』の1つに吸い込まれていくフェルナンド。

 帝国最強騎士の叫びを聞きながら、『創造ト原理ノ神ブラフマー』は次の行動に移すべく、崩壊した城を観察する。


 4本の腕の先に四大元素の色をした球体が創り出される。

 その球体から魔力のような何かが城の跡地を覆うように広がっていく。



「主の許可を貰い次第始まるとしよう」



 『創造ト原理ノ神ブラフマー』は、自身が戦っていたフェルナンドへの感想を呟くことも無く、ソウイチに許可をとるべく、ゆっくりと動き出した。









「やっぱLv差100ってのは、女神の力があっても変わらないな」


「ただでさえ『枢要悪の祭典クライム・アルマ』はLv差有利な時に働くアビリティが多いですからね」


「持て余してたから、もっと女神の力と『皇帝ジ・エンペラー』を使いこなせてたら話は違ったと思うけどな」


「3時間ほどで『創造せし黄金の卵ヒラニヤガルパ』から出てくるそうです」



 シャンカラとフェルナンドの戦いは想像以上にアッサリと終わった。


 フェルナンドが力を持て余していたことが一番の勝因であり、シャンカラの『創造せし黄金の卵ヒラニヤガルパ』の中に取り込まれて、今はシャンカラが創り出した世界を旅させられているようだ。


 『創造せし黄金の卵ヒラニヤガルパ』には、相手のスキルを7種以上取り込むと、何やら卵の中に特殊結界が創り出されるみたいで、なんとその世界に入ると、シャンカラに都合の良いような精神状態になって出てくるようだ。


 シャンカラが言うには、『創造せし黄金の卵ヒラニヤガルパ』から出てくるころには、とにかく誰が主だろうが、帝国を守りたい立派な騎士になってくれるようだ。



「ボロボロになった帝都、それに城を再生、女神の力を得た帝国最強を味方側につけるために『創造ト原理ノ神ブラフマー』になったんだと思うと、さすがシャンカラだな」


「城の方は終わったようですね」



 『創造ト原理ノ神ブラフマー』は、シャンカラの『神化アヴァターラ』の中でもトップ3に入る存在。

 フェルナンド相手に使用したので、女神の力を警戒してかと思いきや、最初からフェルナンドを処理したあとのことしか考えていなかったようだ。


 使い慣れない力を得たフェルナンドの底を素早く見抜き、今後の計画のために利用する。

 女神の力が入っていたことを加味して、耐久力と対応力の優れた『創造ト原理ノ神ブラフマー』で戦い、勝った後に素早く帝都修復に入ることで、漁夫の利を狙われる可能性をも消す選択。



「みんな頭良すぎて、俺の必要性が危ういな」


「魔王戦争までには自信をつけてくださいね?」


「『七元徳』と女神には、今回の戦い確実に観られてただろうからな。それを踏まえて準備しなくちゃいけない」


「『美徳』の1つを倒したので、作戦会議をしなくてはいけませんね」


「次は『七元徳』との大勝負だからな」



 帝都制圧は終わったと見て大丈夫そうだ。

 油断したところに乱入者が来る可能性が0というわけではないが、俺たちがやりそうなことを警戒しないわけは絶対に無いので、そんな輩がいたら滅殺する準備もすでに済ませてある。


 今回の戦いで、『七元徳』との魔王戦争においても、最終目標に到達においても、かなり重要な情報をいくつか手に入れることができた。



「俺の戦い方や考え方は知られたが、俺も『七元徳』と『女神』の一部を知れたな。この世界についても色々確信が持てたし」


「『海賊』と『異教悪魔』との戦争がありながら、『七元徳』が幹部クラスを単体で戦わせるのは意外でしたね」


「一体逃げたらしいからな。まさかウチの面々がLv上限に近いのばかりだなんて思わなかったんだろうし、少し甘く見てたんじゃないかな?」



 『原初』の爺さんと『女神』が創造した世界。


 『女神』が創り出した部分と、『原初』が創り出した部分で互いの性格がよく出ている感じがする。

 2人に共通しているのは、思ったよりも作り込みが適当で、曖昧な感じで『人』や『力』を創っている感じが大きい。


 

「適当さに助けられているところもあるんだけどな」


「残りは任せておいても大丈夫そうですが、『罪の牢獄』に戻りますか?」


「そうだな。お留守番組暇だろうから、次の仕事について話をしに行くか」


「シャンカラは終わり次第、デザイアと帰ってくるでしょうから安心ですね」



 フェルナンドが『創造せし黄金の卵ヒラニヤガルパ』から出てきた後のことはシャンカラに任せておけば大丈夫だろうし、何あっても、デザイアが残ってくれているから問題無いだろう。


 何気にDEを消費せずに、帝国騎士の装備をいただけたし、死体からスケルトンも制作できたようだから、バビロンとイデアが部隊編成の仕事で忙しくはなりそうだし、メルとデザイアで今回喰らった者たちから情報を得ることやらで、戦争後は得るモノが多いけど、忙しくて気が滅入ってしまう。



「やらなきゃ進めないから仕方ないな」



 気だるい呟きを入れつつ、ポラールの転移術で『罪の牢獄』に戻ることにした。


 

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