第13章 『大罪』と『美徳』
プロローグ 『戦争』へのカウントダウン
――『罪の牢獄』 居住区 コアルーム
帝都制圧から、なんだかんだ忙しい日々を送りつつ、気付けば明日は『七元徳』との魔王戦争での戦場発表日。
相手有利な戦場になるんじゃないかという展開を予想しつつ、帝都制圧でリトスが食べてきた神熾天使からの情報を元に、誰がどう戦えれば勝てるのかは考えてるつもりだ。
明日の戦場発表では、『七元徳』も来るそうなので何を言われるか怖いもんだが、とりあえず煽りを入れてやろうかとは思っている。
「狭い戦場なら、相手自慢の大群の脅威を減らせると思うけど、そう上手い事いかんよなぁ」
「……分断すればどこでも同じ」
「分断されない術があるかもしれないぞ?」
「何されても、自分たちが優位になれるように徹底する。ますたーの教訓」
「メルは今までの魔王戦争でも手札を見せてないから、あんまり警戒されてないと思うし、『七元徳』との戦争では頼むよ」
「……任せて」
こうやって魔王戦争に集中できるのも、帝都制圧後に帝都に行ってくれた優秀な面々のおかげだ。
ミネルヴァを筆頭とした帝国騎士団員は、なんだかんだ皇帝さんが生きていた時と同じように働いてくれている。それを見た住民の皆様も安心しているようだし、アークから助っ人として送ったカノンたちも良い感じに頑張ってくれている。
帝都を襲った魔王である俺は、フェルナンドと助っ人に来たカノンたちが退けましたってことにしておいたので、魔王魔王と騒ぐこともあまり無く、俺が手を回さなきゃいけないようことも少ないので、今のところ楽に帝都を治めることができているようなので、魔王戦争の準備に専念できている。
「戦場発表の後、どんな嫌がらせが飛んでくるのやら……」
「……お互い様」
帝都制圧が終わってから、『七元徳』のダンジョン周辺やダンジョン内に、色んな天使に擬態したメルの分裂体や、バビロンの強化スケルトンを送り込んでみているが、難なく撃退されてしまっている。メルの分裂体の見破りは見事のモノで、メルやレーラズのような感知タイプがいることが判明した。
『七元徳』もアークに人間の姿をした天使をちょいちょい送り込んできているので、今のところ良い分といったところだろう。
さすがにメルとレーラズが監視し続けているのもあって、『七元徳』の嫌がらせは、特に事が起きることなく終えることができているが、戦場発表後はどんなことが起きることやら…。
「ますたーも、凄い悪い事するつもりなんでしょ?」
「勝手なイメージだけど、『七元徳』は落ち着いてるけど、配下の天使たちの頭の沸点は低そうだから、頑張って沸かしておこうかなってな」
「ますたーは意地悪だね」
「戦争するなら、意地悪くらいが丁度いいんじゃないかな?」
「天使たち怒らせてどうするの?」
「統制のとれてない大群なんて、みんなからしたら烏合の衆だろ? それこそ一瞬にして一網打尽にして、メインの神熾天使たちと良いコンディションのまま戦ってもらわないとさ」
「ますたーの悪巧み……そんな凄いの?」
「ん~……天使たちからしたら、逆鱗に触れるような感じかもしれないからなぁ……本当に沸点低そうだし、俺たち『大罪』のこと大嫌いだろうから、何しても怒ってくれると思うよ」
「そうなんだ」
『七元徳』の天使たちとは、何度か戦わせてもらってるが、ウチの面々が抱いた感想は、かなりプライドが高く、天使という種族を神のように思っている存在だということだ。
仲間が多ければ多いほど力を発揮するが、数が多ければ多いほど調子に乗るみたいだし、単体だとそこまで力を発揮できないタイプの相手、今回の魔王戦争では『七元徳』が溜め込んでいるDEが溢れだし、とんでもない数の天使が相手になるので、主である『七元徳』のありがたいお言葉が届かないくらいには怒らせておきたいところだ。
下っ端天使たちなら、すぐにでも沸騰してくれると考えているが、逆に奮起されても困るので慎重にやらなきゃいけない。
「……ますたーの戦場予想は?」
「とんでもなく広い空」
「……その心は?」
「天使は全員空飛べて空中戦が得意、俺たちは全員が飛べるわけじゃないから相手が有利になる」
「……もうちょっと凝ったところになりそ」
「そういえば観戦者も多いから、さすがに雑な戦場にはならないか……地上も空も凝った感じになるのかな?」
「……前のとこと同じ感じになりそ」
「『異教悪魔』の時と同じ感じか……そうなるとありがたいけど、どうなることやら」
「……面倒くさい」
膝の上のメルがプルプル震えながら愚痴をもらす。
魔王界のトップと戦う前なので、かなり苦しいどころか、もしかしたら喰われるかもしれないような展開になるかもしれないが、『罪の牢獄』の雰囲気を見てる感じ、ネガティブ思考なのは俺くらいで、他のみんなは全然いけるという感じだ。
もちろん、みんな根拠のない自信ではなく、帝都制圧戦でリトスが勝利した『ラファエル』から得た情報であったり、天使と比較的近い存在である、ガラクシア・ポラール・イデアが中心となって模擬戦を毎日しているというのが大きいのだろう。
「しっかりやれば勝てる相手か……裏をとられないように徹底的に調べ尽くしてやらなきゃな」
「楽しそう」
「完璧に勝ちきって、『七元徳』にドヤ顔を披露してやらないとな」
「ますたーが前に出て戦うことになったら負けちゃうから、頑張らないと」
「『七元徳』は本体も強いみたいだからなぁ~……俺が戦うことになったら30秒ももたないな」
「ますたー、まともに戦えるようになるまで時間かかりすぎ……瞬殺されちゃう」
「怖すぎる……後ろで威張り散らしているよ」
「後ろで悪い事考えてるほうが、ますたー強いと思うよ。誰かが嫌がること大好きだもんね」
「……褒められてる?」
「悪巧みしてる姿が1番好きだよ?」
「……あっす」
変化球に見えたストレートな好意に恥ずかしくもなるが、素直に嬉しいので、とりあえず膝上のメルを撫でまわしておく。
プルプルしながら嬉しさを表現しているメルを感じながら、『七元徳』の魔王戦争で考えられる展開をしっかりとメモに書き写していた。
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