第7話 『怠惰』vs『知恵』
――ズシャァァァァァァンッ!!
並みの天使たちでは傷つけることが精一杯な巨大な根の一部が爆散する。
七色の花を自身の周囲に咲かせていたレーラズの前に現れたのは、白銀に輝く重厚な鎧を纏った1体の天使、獅子の顔を持ち、右手には威圧感を放つ両手剣、背には天使の象徴である6枚の純白翼を広げる神熾天使。
破壊された根を再生されながら、自身を見下ろす天使に、レーラズは挨拶代わりの笑みを向けた。
「『
――ズゴォォォォンッ!!
笑みの返答と言わんばかりに放たれたのは獅子の形をした巨大な闘気の砲撃であった。
凄まじい速度で放たれた闘気は轟音とともに砂煙を巻き上げ、レーラズが咲かせていた花々を吹き飛ばす。
砂煙が晴れると、自身の身体を守るように根を展開しつつ、変わらぬ笑みを浮かべているレーラズの姿がそこにはあった。
「……随分なご挨拶ですね~」
「このような邪の力に染まる自然を創りだす者に礼など不要なり」
「凄い速さで敵陣であるここまで来ましたもんね♪」
「我単独で来させるように誘導したのは貴様であろうに……。空を汚し、我らが統制を乱せし邪よ、神熾天使アリエルが討ち滅ぼそう」
「随分な自信……少しだけマスターに分けてあげたいなんて♪」
「『
――ドシャァァァァンッ!
「威力をあげた程度では通らぬか」
「お仲間さん来るまで待ちましょうか?」
「……貴様ら『大罪』の魔物は他者を小馬鹿にせねば戦えぬのか?」
「マスターの口調や言葉遣いが移っちゃって大変ですよ~」
「……ふざけたことを」
「冗談です♪ 本当は天使さんたちは沸点低いから、少し煽ってあげれば馬鹿みたいに突っ込んで来るから、遊んでやれってマスターが言ってたんですよ♪」
「『
――ズシャンッ!
神熾天使アリエル。
『七元徳』から『
『神の獅子』の異名で知られ、獣系統の魔物が使用できる武技やアビリティ持っており、天使の中では基礎ステータスが高く、前線を張るこの出来る存在、単騎で『大罪』の魔物と戦うのは危険と知らされていたが、自身の力に自信を持つフロネシスは自軍の魔物に報告をした上で単騎でやってきたのである。
『
相手のステータスデバフからも自身を守る力があり、スキルは少ないが安定感があり、単純な戦闘力の強化である『美徳』なのである。
武技で中心に戦うフロネシスが放ったのは特大の斬撃、『神聖力』を纏ったスキルはレーラズを容易に飲み込み、粉々になったようにフロネシスには見えた。
「転移魔法の気配は無かったが、何故そこにいる?」
「自分は礼不要とか言っておきながら、他者にはわざわざ説明を求める……そんな傲慢だから先制パンチ喰らうんですよ~?」
「根の迷路を創り、統制を乱し同士討ちを狙う程度で我らは崩れぬ」
「天使1番の癒し手が死んでしまったから崩れかけちゃいそうに見えるけどな~? 『
「……よくしゃべるではないか」
「時間をかけるほど有利になるのはコチラですからね~♪」
「『
――ギャオォォォォォォッ!!
『神の獅子』フロネシスの力の1つ、自身の魔力を消費し、『聖神力』を纏った魔物を創り出すことができ、フロネシスの周囲に次々と羽の生えた虎や腕が4本ある熊が誕生していく。
目の前で次々と創り出される猛獣たちを前に、特に脅威に感じることも無く、レーラズは自身の能力を広めることに集中する。
先ほどから話を続けていたのは自身のスキルをエリアに広めるためであり、フロネシスの返答には興味が無かったのだが、話が続きそうなことを適当に口にしていただけなのだ。
レーラズが発動しているスキルは2つ、1つは『
もう1つは、レーラズの周囲に咲いている花から出ている花粉による『夢幻花粉』、その効果も凶悪で花粉を吸ってしまった猛獣たちは身体の異変に気付くが、得既に遅しであり…。
――ドシャッ ドサッ!
「どういうことだ?」
「見た感じ死んでますね~?」
「我が来る前からスキルを使用していた……我に効いておらぬということは毒であるか」
「毒効かないんですか……フムフム…知ってましたけど♪」
『
毒が効かないアビリティを有しているフロネシスは、部下の天使たちを強引にでも連れてこなかったことを内心安堵していた。もし一緒に来ていたら、次々と毒死してしまっていただろう。
味方が多ければ多いほど力をあげる天使にとって単騎は危険であるが、戦争の勝利のためフロネシスはレーラズを速攻で撃退し、仲間たちが困惑する迷路を解除するため、剣をレーラズにむける。
フロネシスの両肩部分に獅子を模した装飾、獅子の両目が紅く光り、白銀の鎧から大量に闘気が溢れだす。
――ドッ!
爆発的な加速力でレーラズの前まで跳び込み、フロネシスは闘気と『聖神力』を纏った剣をレーラズへと叩きつける。
「『
――ドシャァァァンッ!!
「……どうなっている」
フロネシス渾身の近距離での『
地面から生えている樹と融合しているように見える外見、フロネシスからすれば俊敏に動けるはずない相手に背後をとられ、回避方法すら解らない謎の状況である。
「単騎で敵陣に来たんですから……何があっても驚いちゃダメですよ~?」
「転移魔法の気配は無い……何をしたのだ」
――ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!
大量の根がフロネシスに襲い掛かる。
迫る根を斬り払いながら、フロネシスは高速でレーラズに接近し、再び斬撃を叩き込むも、結果は先ほどと変わらず、気付けばレーラズはフロネシスの背後に回っており、小馬鹿にするようにフロネシスにむけて優しい笑みをむけるだけ。
『
感覚鈍化のタイミングをレーラズが自在に操作しているので、フロネシスからすれば攻撃の瞬間だけだが、実際は5秒ほど遅延させられているのだが、フロネシスはまったく感じることができていない。
「『瞬光聖翼』」
――ブワッ!!
フロネシスの翼が光り輝き『聖神力』を纏っていく。
『
気付かぬ間に背後へと回るレーラズ、フロネシスが出した解答は圧倒的なまでの速さで叩き潰すというパワー系のものであった。
「時間はかけさせぬ」
「戦い方までアヴァロンと似ていますね~」
フロネシスは再度剣をレーラズにむけ、自身の翼に闘気と『聖神力』を集中させた。
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