第6話 天に『大地』を
「風強くて、少し寒いなぁ」
「空高く浮かぶ城だもんね。上空なだけあって風が強くて鬱陶しい~」
「『七元徳』の天使さんたちは得意な戦場で大盛り上がりだな。ニコニコしてる天使たちがよく見えるよ」
「相手側の封印効果強いもんね♪」
「ウチにはレーラズ様がいるからな! 一撃頼みますぜ! 度肝抜いてやりましょう」
「なんか久々に『罪の牢獄』から出た気がする♪」
12の城が浮かぶ飛行能力持ち優遇の戦場。
相手の『七元徳』は基本全員飛んでるので最高の戦場だろうし、城の封印効果もとんでもないものを引かれてるので、なかなか怠い戦いになるような気配しかしない。
今頃『七元徳』は俺たちの戦い方を天使たちに知らせ、『大罪』の魔物は単独行動だから、1体ずつ集中的に破壊していこうという作戦で来るんじゃないだろうか?
今まで魔王戦争に出た面々はある程度研究されているだろうが、そこまで全力を出していないので、あんまり能力はバレていないはず?
今回の魔王戦争は、どちらが先に敵陣最初の城を破壊できるかどうかが鍵となってくるだろう。
「転移封じの封印と大空の戦場で詰ませたと思ってるんだろうな。初手でアンタの計画を破壊してやるからな……『七元徳』」
「おかげさまで働くはめになりました……と」
「デザイアが仕込んでくれた天使たちも戦場に出てきてくれてるっぽいから、少しは魔力の節約できそうだな」
「私のところに幹部クラスが飛んでくるって言ってたから、結局疲れちゃう流れですよね?」
「レーラズ様よろしくお願いします」
――ドンッ! ドドンッ! バァンッ!
いつもの魔王戦争の1.5倍ほど煩い花火が打ちあがる。
『七元徳』との魔王戦争がついに始まった。
自分たちの攻め方・守り方、相手の戦略の予測もできる限りしてきたし、相手が想定しているだろうことを上回り、初手から破壊していくつもりで考えてきた。
レーラズが集中しているのが隣にいると凄い伝わってくる。
他の面々はレーラズの初手スキルに巻き込まれないように避難しているので、こっちの陣営は非常に静かだ。
「こんな明るい大空で戦うのは性に合わないからな」
「暗くてジメジメしたところがお似合いですもんね♪」
「そこまで言ってないだろ」
「いきますよ~♪ 『
――ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
レーラズのスキル発動と同時に俺たちが守るべき6つの大地が揺れ、地面から大量の樹の根が溢れ出てくる。
一瞬にして俺の視界を根で埋め尽くし、『七元徳』の陣地へと勢いよく侵食していく様を見守りながら、近づいてくる巨大な魔力塊を感じたので逃げる準備をすることにした。
◇
『な、なんということだァ!! 戦場丸ごと木の根で埋め尽くしてしまった! 天空の空中戦から、なんと木の根を渡り戦う地上戦へと戦場を変えてしまった『大罪』。お決まりの戦争開始の合図と同時に仕掛けてきましたが、なんと『七元徳』様の天使からも木の根が発生していたようです!』
魔王戦争実況者であり、魔王界トップクラスの実力者である『
戦争開始直前まで日の光さす大空だった戦場が、一瞬にして巨大な木の根で埋め尽くされ、次から次へと増殖していき、天空迷路のような複雑な地形へと姿を変えてしまったのだ。
戦争開始と同時に『大罪』陣営へと飛び込んでいった大量の天使たちは木の根に巻き込まれ、圧し潰されていき数を減らした。
『と、とんでもない魔力! まさか空中戦という分野から破壊してくる『大罪』の先制パンチ! 一体どれだけの手を隠しているんだァッ!?』
魔王界で誰もが注目するソウイチの魔物の中でも、1度も表舞台に出てきていなかったレーラズの先制攻撃『
焼かれても消し飛ばされても、レーラズが存在している限り成長し続ける巨大な根の波、広々としていた大空を窮屈な根の迷路へと変えてしまうほどに広範囲スキルである。
『
狭い迷路になってしまった戦場を大群で移動するには厳しく、天使たちは少数で迷路内を飛び回り、ソウイチの封印城への道を探しはじめる。
――ドドドドドドドッ!!
『僅かな隙間から見えるのは『大罪』お得意のアスレチックスケルトンッ! 地鳴りを起こしながら根をアクロバティックに移動していく姿はまるで獣人族! 『七元徳』様の圧倒的な天使の数に対抗するかのように次々と戦場に投入されている様子!』
最早ソウイチの代名詞となりつつある『強化スケルトン』の大群。
地上において凄まじい移動速度と小回りの利く存在であり、バビロンの力が通じる限りは永遠に復活し続ける厄介な軍勢。
天使たちが移動に困っている根の迷路を勢いよく進んでいき、遭遇した『
さすがにSS・EXランクと高ランクの天使たちには、いくら強化スケルトンだからと言っても、迎撃され近づくことが難しいものではあるが…。
――ドゴォォォォンッ!
『迎撃されたスケルトンが次々に爆発していくぞオォォ! なんという火力と爆風だ! ただでさえ視界が悪い戦場となった今、スケルトンの連鎖爆発はさすがの天使でも厳しいか!?』
――ドドドドドドドッ!
次々と爆散していく強化スケルトンたち、完全に想定と違う戦争展開に天使たちも困惑し、レーラズにより根内の魔物の位置は完全に把握されており、『大罪』側は迷路内を完全に掌握しているが、『七元徳』側は敵陣にすらたどり着けない状況が出来上がってしまっている。
戦争開始前までは『七元徳』側が戦場・封印効果共に有利と見られていたが、転移無しの地上戦へと変化したことで、完全に戦場有利が逆転した形である。
しかも、ソウイチがただスケルトンを爆発させるわけもなく、強化スケルトン達にはソウイチの魔力が込められており、その結果…。
――ドシャァァァンッ!
『な、なんと! 天使たちが互いを攻撃し始めました! これは『大罪』が『銅の魔王』との戦争で見せた戦法です! 爆発に巻き込まれた敵軍の魔物を同士討ちさせあう悪魔の技だァ!』
『憤怒』の魔力が込められた強化スケルトンたちの魔力を浴びた天使たちは我を失い、手当たり次第に目に映る存在に攻撃を仕掛ける狂った獣のような存在になってしまい、天使内で同士討ちが発生する。
戦争開始僅か2分で戦場は大混乱、戦場は見る影もない形へと変化し、スケルトンが走り回りながら爆散し、爆風を受けた天使たちが仲間内で争い始める混沌の地。
『戦争開始直後から両軍入り乱れる大混乱ッ! 『大罪』が先手で仕掛けるとは予想されておりましたが、戦場をまるごと変化させるなどと誰が予想できたかッ!? そして自らが前線に立ち、能力を使用すると誰が想ったでしょうか!』
数と連携で戦う天使の軍勢を一撃で崩したレーラズの『
そして、先制パンチで崩すことに成功したので、この流れで一気に最初の封印城を破壊したい『大罪』。
そんな中、根の迷路を破壊しながら進む巨大な存在が、凄まじい勢いでレーラズに近づこうとしていた。
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