第5話 『最終会議』


――魔王戦争戦場 『六封城』 『大罪』陣営



 『七元徳』との魔王戦争開幕直前。

 各々が初期配置の最終確認をしあいながら、カバー範囲やどのような攻め方を通していくかの打ち合わせをしている。


 そして今回の魔王戦争で1番大事になるであろう『各城の封印』内容が発表されたので、みんなで確認しながら攻略手順を考えるお時間である。

 先ほどランダムに選出されたいくつかの選択肢から6つ選んだが、何個かは予測できたものだったから安心した。選択肢多くて困ったけど…。


 コアのモニターに『七元徳』が選んだ6つの封印を確認する。



「……面倒だなぁ」



①六封城コア1つ以上存在する場合の封印『種族が天使系統の魔物のステータスが1.2倍になる』

②六封城コア2つ以上存在する場合の封印『光系統の魔法・魔導の威力が1.2倍になる』

③六封城コア3つ以上存在する場合の封印『自軍魔物の体力回復スキルは阻害されない』

④六封城コア4つ以上存在する場合の封印『自軍魔物のLvが10上がる』

⑤六封城コア5つ以上存在する場合の封印『戦場で1番数の多い種族のステータスが2倍になり、状態異常にかかりにくくなる』

⑥六封城コア6つ以上存在する場合の封印『飛行能力の無い魔物は、他者からの移動技を受けることができない』



 ①は天使の初期ステータスの低さを補い、バフの恩恵をさらに良くするためのものだろう。コア1個以上存在時の封印としては良いもんだと思う。

 ②は天使たちのメイン攻撃になりうる部分を強化し、一斉攻撃による数の暴力強化と言ったところだろうか?

 ③はラファエルがリトスに狩られたところから得た学びだろうか? とにかく理不尽死は避けたいという意図が見える。

 ④はどこからか、ウチの面々の力がLv差で発動することを知られてしまったのだろうか? その対策だと思うが、10程度だと変わらない気がする。

 ⑤は完全に天使の強化を狙ってるのだろうが、これは予測できたことなので対策は難しくないし、俺たちを舐めすぎだ。

 ⑥は俺たちのことをしっかりと研究したんだろうなという感じだが、今回の戦場が決まった時から、この対策は考えてきたので大丈夫なはずだ。



「ランダム選択肢なのに、こんな都合よく揃うもんかね?」


「ご主人様が予測された通りではないですか?」


「忖度社会たまんねぇ~な。『七元徳』の豪運の可能性だってあるんだけどな」


「やられて困るところが来ましたが、逆に対策しやすくて助かりましたね」


「もっと性格悪い感じにくるかと思ったけど、ストレートな感じだったな」



 城から城の距離が3㎞ほど離れている特殊戦場、転移などの移動スキルを封じてきたのはさすがだし、空中戦を得意としている天使たちにとって最高の条件なので、決して楽な戦いになることは無いが、こうなるかもと覚悟を決めていたし、対策をしたのでどうにかなりそうだな。


 封印の効果は各城の敷地内と浮いている大地周辺少しなので、完全に転移系統の力が封じられたわけじゃないので、どうにでもなるかな。



「俺もそこまで悪くないピックだと思うんだけど、『七元徳』のピックが良すぎて、こっちが悪く感じるな」



 ①六封城コア1つ以上存在する場合の封印『Cランク以下の魔物のステータスが1.3倍になる』

 ②六封城コア2つ以上存在する場合の封印『敵軍の魔物のスキル発動が1秒遅くなる』

 ③六封城コア3つ以上存在する場合の封印『全ての魔物が受けるデバフの影響が1.5倍になる』

 ④六封城コア4つ以上存在する場合の封印『敵軍の魔物は気配に気づきにくくなる』

 ⑤六封城コア5つ以上存在する場合の封印『自軍魔物の耐久力が1.7倍になる』

 ⑥六封城コア6つ以上存在する場合の封印『戦闘している相手とLv差があればあるほど、自軍魔物が強化される』



 『七元徳』に比べれば貧弱かもしれないが、ランダムでの選択肢の中で良い奴を選んだつもりなので、これ以上は無かったはずだ。

 ステータスやスキル恩恵は少ないが、気配感知を一瞬惑わせたり、スキル発動阻害など厄介なものを揃えることができたのではなかろうか?


 互いに封印の内容は解っているので、これを持ってどう最終対策をたてるかどうかの時間だ。



「後5分程度で開始の合図か……」


「デザイアが仕込んだ天使たちは、無事戦場に出てきているようです」


「初手は安定してかませそうだな」


「その初手で勝負を決めようと考えてらっしゃるのは、相変わらず性格が良いですね」


「魔王戦争は初手の動き合いが一番好きまであるなぁ」



 城の封印で転移系統を封じられてしまい、いきなりこんにちわ作戦ができなくなってしまい、効率的な魔王戦争にはならないことになってしまい残念だが、天使の軍勢と正面から殴り合うことになるので、初手でどれだけ崩せるかが肝心になる気がする。

 大群戦力と単体戦力、それぞれが最高クラスだと思うので激しい戦いになるはずだが、初手に流れをもってきて、勢いのまま押し込んで勝ち切る展開に持って行きたいところだ。


 『大罪』とライバル的能力らしい『美徳』の力は、リトスが持ち帰ってくれたラファエルの欠片をメルが食べたおかげで、ある程度把握することができた。



「誰が守って、誰が攻め込んで来るのかを速く把握できればいいなぁ」


「真名持ちがどう戦い合うかが肝ですね」



 正直、1番困るのは『七元徳』の真名持ちの『美徳』たちが集団で1つの城に突撃してくるのが困るのだが、攻守にバランス良く配置してくるはず…。

 もし集団でいきなり突貫されたら俺の作戦もぶち壊れなんだけど、一応対抗策も用意してあるので、どうなっても冷静にいられるようにしなくちゃな。


 こうやって考えると、守る箇所6つ、攻める箇所6つというのは『七元徳』の天使たち的には厳しいものだったのかもしれないな。


 本当に『大罪』が真名持ち多くできる魔名で助かりました。



「レーラズ・デザイア・バビロン・メルの初手で度肝抜いてやるからな」


「レーラズが前に出るのは初ですからね。みんなワクワクしていますよ」


「ポラールだってウキウキしてるだろ?」


「えぇ……珍しくやる気を出していますからね」



 『罪の牢獄』から出ることが基本的ないレーラズなので、戦場で一緒に戦えることが嬉しいのか、みんなウキウキな感じなので、この良い雰囲気のまま流れを作りたい。そういった意味でもレーラズが前に出てきてくれるのはメリットもあって良い感じかも。


 この魔王戦争でレーラズの凄さの一部がバレてしまうのは残念だが、相手が相手なので出し惜しみをしてる場合じゃないので仕方ない。



「先ほど『七元徳の魔王』と何か話をされたのですか?」


「顔は合わせたけど、特別なことは話してないな。さすがに『七元徳』も集中してて、俺どころじゃなさそうだったしな。みんなは警戒されてるけど、魔王本体は無警戒っぽい……まぁ正解なんだけどな」


「……何やらメラメラされてますね」


「……さすがに悔しいから頑張る」


「また無茶をするフリですか?」


「『七元徳』が発狂するくらい悪さを考えるよ」


「さすがご主人様です」



 最強の魔王の1人である『七元徳』との魔王戦争。


 実況が大盛り上がりになってきたので、そろそろデカい花火が打ちあがるだろう。準備はしっかりやってきたし、コンディションもバッチリだ。


 後は冷静に相手を詰めていくだけだ。天使たちに悪者の恐ろしさを叩き込んでやらないとな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る