外伝 『人』の頂きへ
――『罪の牢獄』 ダンジョンエリア 闘技場
闘技場のど真ん中に大の字で倒れ込んでいる者が1人いる。
『罪の牢獄』にいる猛者たちと日々修行に励んでいるのは、すでに人間界最強の座を手にかけていると思えるような強さの持ち主であるソラだ。
ここ最近までフェンリルとの模擬戦をこなしていたが、本人と俺の考えが一致したので、色んな面々と模擬戦をするようになっている。
本日は五右衛門と模擬戦をしたが、1分ともたずに青天してしまった。
空を見上げる顔には悔しさ満点と言った感じだ。
「……毎度毎度死ぬほど悔しがって、よくメンタル保てるな」
「この悔しさが次に繋がるの……いつか絶対一泡吹かせてやるんだから」
「果てしない差は埋められそうか?」
「……分かんないけど、やらないよりもやってみないとどうなるか分かんないでしょ?」
「前向きで結構」
俺が思うに最強クラスのスキルであるソラの『
本気では無いが、加減しているフェンリルとの戦いで、速さや鋭さに慣れ、『
メルが喰らった者たちとも、分裂体を使って模擬戦をするようになっているので、多種多様なスキルを覚えたはずではあるが、まだまだ遊ばれている感じだ。
「……アタシより負けず嫌いに見えるけど?」
「1度も負けたくないから、絶対に負けないように考えるし、負ける可能性があることは出来れば避けたい性格だな」
「つまり負けず嫌いってことじゃん」
「負けたらメンタル崩壊するかもしれん」
「生きてられるなら、何度だって負けて強くなるしか無いんだから……アタシは今が1番楽しいかも」
「ここに来てから随分変わったように感じるなぁ……大人になったな」
「楽勝じゃん! とか思ってたけど、ここの魔物ヤバすぎて、さすがに大人になっちゃった」
「井の中の蛙を卒業できて良かったな」
「ここ最近、模擬戦を多くやれてるから、経験値モリモリだしね!」
さすがに瞬殺されてはいるが、1分程は遊んでもらっているようなので、その僅かな時間の中でかなりの経験値を獲得していっているんだろう。
まだLv1000組&レーラズとは模擬戦していない……してもスキル発動させてもらえないだろうから意味無いとして、他の面々との戦いで色々な学びがあるはずだ。
先ほどの五右衛門との戦いでは、濃霧を発生させ姿を隠す五右衛門に対して、広範囲スキルと転移の繰り返しで迎撃しようとしていたが、捕らえきれずに背後をとられて一撃だった。
「あの高速戦闘の中でメモするのは難しいよな」
「成功したら、それだけの効果があるんだから仕方ないじゃない」
「おー……なんか現実的な発言だな」
「1番になれるかもしんない力があるんだから、それを目指すのは当然でしょ?」
「『
「確かにねー」
ガラクシアの星魔法・星魔導の波状攻撃の嵐に晒されても、アヴァロンの鉄壁の守りからの剣劇の圧を受けても、メルの『
そして上を目指す向上心、具体的にどうすべきか考え続けられる精神力。これらは素晴らしいものだ。なかなか身に付くものじゃないと思っている。
俺には無いタフネスと才能……これぞ天才って言うんだろうなって感じだ。
「それにしても頑丈だな」
「加減するのが上手すぎる連中って感じ……ギリギリのラインまでボコしてくるから毎回死にそうになるんですけど……」
「元気そうに見えるぞ?」
「現在進行形で回復スキル使ってるからに決まってるじゃん」
「ほぉ……本当にたくさん覚えてるんだな」
「各地を歩き回ってたからね~」
1番になることに貪欲。
ソラを見ていたくなる理由である底知れぬ貪欲さ、刺激をもらえるし、立ち止まってちゃいけないなって思わせてくれるような前向きな姿勢。
これだからソラは面白いと素直に思えるのは、ソラが純粋ってのもあるんだろうな。
目指すものは違うけれど、負けてられないなって思わせてくれるから、俺も悪巧みに一生懸命になることができる。
「さすが人間の頂点だ」
「ん~……まだ1番って感じじゃなくない?」
「カノンとアルバスか?」
「他に数人強い人いるからなぁ~」
「追い越せそうなところまで来てるんじゃないか?」
「ここ最近の感触で言ったら……正直もう少しだと思う」
「自信有りってやつか」
「そんだけ最近の戦いで強くなれてる実感があるんだもーん」
「俺が戦ったら瞬殺されるだろうな。魔王なのに悲しいもんだ」
「闘技場で戦ったらでしょ~? 正面から戦うようなことしそーにないじゃん」
「正面から戦ったら、瞬殺どころか一撃で粉砕されちゃうだろ?」
「襲おうとすると後ろから凄いの出てくるから安心じゃん」
「ありがたいことにねぇ~」
デザイア・ウロボロス・ハク・シンラ・ポラール辺りの誰かしらが常に見ていてくれるから、何かありそうだったらすぐに挨拶してくれるので助かる。
ボロボロにされたばかりなのに、このポジティブさと回復力、そして楽しく話せるだけの切り替え力。
さすが人間界のトップの実力をつける可能性が大な存在なだけある。
「負けてられないな」
「あんま悪巧みばっかしてると嫌われない?」
すでに手遅れだとは決して言えない俺なのであった。
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