第17話 『皇帝』の狙い
クピドゥース帝国皇帝、『
その名は『クピドゥース・ガイストス』。
皇帝んさんのことは帝国の関係者をメルが喰らうことで、様々な情報を得てきたが、なんとも謎の多い人物だということばかりでソウイチをも困惑させた人物。
『武器を持たずして決定的な戦果をあげる』『気付けば相手の流れを崩す一手を打っている』『好き勝手動いているのに死なない』など皇帝なのに自由に動き回り、魔物や他国の騎士団相手に戦果をあげているという変わった王様。
「気付いていると思うが、君たちから上手く隠れることができたのは『
「余程隠れることにでも特化しなくちゃ見つけれる自信はあったんだけどな」
「別に特化しているわけじゃないさ」
ガイストスは絶体絶命な状況にも関わらず、楽し気に自身の能力である『
『
そして、しばらくの間ではあるが、ソウイチ達から隠れることができたのは『
その効力は、自身が勝利することができるように勝手に様々な力が働くというもので、この力は阻害されないという恐ろしい力。
「君に勝てるように『
「随分都合の良い能力なんだな」
「勝つよいうより、負けずに勝ちに近づける能力だからね。導きだされた答えは、魔王を城まで誘き寄せて、認識される前に暗殺するってことだったんだけどさ」
「ガイストス様の力は、良いところでアッサリと打ち破られてしまいましたが……」
自身が勝利を掴み取るまで様々力を働かせるスキル。
顔には出さなかったが、ソウイチは心底驚いていた。最強勇者である東雲拓真の力を知ったときと同じような衝撃を受けながらも、ソウイチは冷静にガイストスの力を噛み砕いて整理していく。
守りよりの力ではあるが、勝つまで勝手に色々作用してしまう運命操作のような力、この状況も『
「俺の動きまで強制できたのか」
「魔王を城に来させるまでに、帝都を壊滅させてしまったけれどね。君はここまでの状況にならなければ自分の足を動かしてくれなかったということだね」
「流れを自身の勝利へと傾ける力か……色々曖昧だけど凄いもんだな」
「君の魔物が張った、この帝都を覆う結界に砕かれてしまったけれどね」
「……凄い落ち着いてるんだな」
「正直、さっきまで暗殺できる直前だったから油断してたのもあるよ」
デザイアが『
『
帝国騎士団の半壊滅、帝都を制圧される、ソウイチの危険な好奇心の3つが合わさらなければ、ガイストスの勝利目前まで辿り着けなかったといえば、ソウイチと帝国の戦力差がいかに凄いものだったか解るが、それすらも覆す可能性があったことに、ソウイチの後ろで話を聞いていたポラールたちも驚いていた。
敵を視認してから能力を使うので、完全に油断してしまっていたと引き締めるポラールたちと違い、ガイストスの話を聞けば聞くほど、楽しくなってきてしまうソウイチ。
「能力が効かない奴はスルーして、効く奴の行動から変えていく。その結果味方が壊滅してでも勝ちを手繰り寄せる……か」
「君の配下には、認識から外れるって部分しか辛うじて聞いていなかったからね。行動を変えるまでいかなかったから仕方ない。これも帝国のためさ」
「『
「……この極悪結界を解除してくれれば、『
「そんな万に一つの可能性をあげるような真似するわけないだろう」
「帝国最強のフェルナンドと戦いたいっていう輩は、この世界に腐るほどいるのに、魔王は堅実だったようだ」
この戦いに置いて、わざわざ帝国最強の力を発揮させることに意味は無いと感じているソウイチ。
話に聞く分には面白いから良いと感じているようだが、わざわざデザイアが作り出してくれた状況を変えようとするほど、行き過ぎた好奇心では無かったようで、後ろに控えるポラール達は軽く安心する。
ソウイチは、ガイストスが話を続けながら、ここからでも逆転しよと必死に頭を働かせているのを感じていた。
もう少し話を聞きたいところだが、何があるか分からないので、そろそろメルにトドメを刺してもらおうかと思った時、ガイストスの傍にいるフェルナンドから、強く重々しい気配がソウイチ達を襲う。
「……なるほど、まだ勝ちの筋は残ってるってやつか」
「ご主人様」
「他の団長格が、女神の力とやらを貰ってわりに、そこまでだったってのはこれが原因だったなんてな」
ソウイチ達は、フェルナンドから溢れ出る女神の気配を感じ取る。
他の帝国騎士団団長格たちとは比べ物にはならない女神の気配に、警戒を強くし、デザイアに『
フェルナンドは、ソウイチたちと似たような感じで驚いている自分の主君である、ガイストスにむけて言葉を投げかける。
「ガイストス様……帝国の勝利のためであれば、何をしても構わないでしょうか?」
「愚問だね。この状況で策を選んでいる余裕は無いさ」
「……かしこまりました」
――バシュッ
「なっ?」
「どういう流れだよ」
「ますたーへの殺意じゃなかったから反応できなかった」
フェルナンドは手にしていた剣でガイストスを貫く。
まったく予想だにしない展開に、思わずツッコミを入れてしまうソウイチと、何かが起こりうると警戒し、ソウイチの前に出るポラールたち。
自身の配下に貫かれたガイストスは、驚きながらも、フェルナンドの顔を覗くと、何かを決心したような表情をし、フェルナンドにだけ聞こえるような声で何かを囁いた後、静かに瞳を閉じていった。
「……女神の玩具になるの屈辱ではあるが、貴様らを葬れるのなら仕方あるまい」
「王様殺すし、キャラ変わるし、血を舐めて嬉しそうにするしで忙しいな」
「……これが『
「殺した皇帝の力を得たようですね」
「……いきなり凄いな」
剣に付いたガイストスの血を舐めながら、狂気じみた笑みを浮かべながら、ソウイチ達に尋常ならぬ殺気を飛ばすフェルナンド。
女神の支援の大半は、実はフェルナンド1人に注がれており、ガイストスの『
自らの『
「……僕がやってもいいかな?」
「1人で大丈夫か?」
「誰かしら本気出すなら、一番僕が周囲への被害が少ないと思うけど?」
「何かあれば無理にでも介入しますね」
「……よろしく」
「そうか……デザイア! 悪いが『
ソウイチに剣先をむけるフェルナンドへと歩を進めたのはシャンカラ。
シャンカラは加減して挑むには危険だと判断し、この場ですぐ対応できるポラールとデザイアと自身の中で、一番周囲への被害が少なく、何かあれば助太刀できるような戦闘スタイルなのも含めて立候補する。
メルもポラールも、シャンカラが言うのであればと、特に文句を言うことも無く、邪魔にならぬようにと退く準備を始める。
「魔物に用は無い。狙うは魔王の首だけだ」
「これが女神さんと天使さんの情報戦の内に入るのなら、手札の多い僕なら大丈夫ってこと……でいいかな?」
――ゴウッ!
シャンカラは、帝都を覆うデザイアの『
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