外伝 『何』がしたいの?
「ますたー」
「どうした?」
今日も元気に悪巧みに精を出していた平和な1日。
ちょっと気晴らしにウロボロスの上で休憩しようと遊びにいったら、メルも居たので一緒に休んでいる最中。
空気の美味しいエリア、そしてウロボロスがのんびり漂ってくれているのもあり、けっこうなリラックス効果を生んでくれている気がする。
不意にスライム形態でまったりしているメルが声をかけてくる。
「ますたーは、今やりたいことが終わったら何するの?」
「…難しい質問だな」
「……ごめんなさい」
「いやいや、謝るようなことじゃないって、悩ましいな」
今ですらやりたいことはたくさんある。
それが終わっても、俺の予想だと次から次へと、やらなきゃいけないようなことが降りかかってくる予想だから、それの対処に永遠と追われそうな感じがする。
この世界以外にも、プレイヤーが元々過ごしていた地球やら、勇者が居た世界だって存在しており、きっとその世界に行く方法だってあるんだと思う。
もしかしたら、どっちかの世界に、みんなを連れて色々やりに行くのも面白そうではある。
「ずっと、ますたーと一緒に居れるなら何でも良い」
「メルとの会話は、一々口に出さなくても伝わるから楽だな」
「ますたーは自分だけで完結しちゃうから面白い」
「メル以外からは苦情きてるけどな」
「……しょうがない」
個人的には勇者が元々暮らしていた世界が気にはなる。
坂神雫は元の世界でも『退魔師』っていう魔法使いみたいなことをやっていたようだし、この世界では味わえないような敵や、知らない能力を視れることができるんじゃないかなって思っている。
もちろん、この世界でのんびりするのも良いんだけど、平和な感じの国を築きあげることができたならば、色んなものを見に行きたいもんだ。
「好奇心の塊」
「生きてる間に、気になる事は全部やりたいじゃないか」
「まるで早死にするような言い方だよ?」
「絶対に長生きするって強い決意はあるけどな」
「みんないるから長生きできる」
「メルも頑張ってくれてるからな」
「……眠いけど」
スライム形態のメルがプルプル震えている。きっと照れているんだろう、とっても可愛い。
別世界では、俺たちが想像もできないような力を持った者たちが存在しているのだろうか? ウチの面々は摩訶不思議のぶっ飛び能力持ちばかりだが、それすらも凌駕してくるようなのが居るんだろうか?
考え始めたら終わらないので、あまりよろしくはないのだが、どうしても自分の中の好奇心を抑えきれない時もある。
「ますたーは考えてる時が楽しそうだから良いんじゃない?」
「メルが良い子すぎて泣きそう」
「ますたーが泣きそうとか言う時は泣かないから大丈夫」
「……最近、俺の扱いが皆酷くないか?」
「慣れてきた証拠?」
思えばメルも昔と比べれば、よく話すようになった気がする。
『罪の牢獄』の中でも、あんまり話をするようなタイプじゃないのは変わって無いけれど、面子によっては鋭いツッコミをいれてくれたり、捕捉をくれたりするので、変わったなと思う。
五右衛門やバビロン、ガラクシアにリトスと元気な面々が居るおかげで、あんまり目立たないかもしれないが、メルやシャンカラも慣れたことで、色々変化が見られてきてるのも、考えてみれば面白い変化だな。
そろそろシンラが面白くなるところも見たいんだけどな…。
「シンラとウロボロスは、声出さないけど、いつも皆のことを心配してるよ」
「その2人とニャル辺りは、語らないけ働き者だからな。何も言わずともテキパキやってくれるから助かるもんだ」
「みんな頑張り屋さん」
「レーラズだって、なんだかんだ凄いからな」
「戦いには出ないから目立たないけど、凄いもんね」
『罪の牢獄』は、どこを見渡しても戦うことに特化した能力持ちが多い中、レーラズとルジストルには申し訳ないくらい裏方での仕事をしてもらっている。
メルとイデアも、前に出て戦うよりは裏方で作業してもらうことが多いのだが、よくこんなにも戦闘集団で、アークを上手く治めることができているもんだ。
こう考えれば、この世界とは違う世界に行ったとしても、なんだかんだスムーズにやっていけどうな気がするな。
「ますたー気が早いよ?」
「そうだな……まずは目の前のことに真剣にならなきゃ」
メルも最近、情報を得るために、たくさん食べてもらってるから早く終わらせてあげないと疲れるから頑張らなきゃな。
『異教悪魔』には無事勝つことができた。
上級魔王に勝ちきる実力があることが判ったし、『七元徳』の配下天使たちにどんな奴らがいるかも把握できた。
帝国にいる強そうな奴も大体調べ尽くした、『異教悪魔』から繋がっている敵になりそうな奴らも、たぶん把握できている。
できれば最強の勇者様のことを完璧に調べ尽くせれば、情報戦では誰相手でも有利に立てていると言えるんじゃないだろうか?
「ますたーが好きな情報戦?」
「まずは敵を知ることから始めないと怖くて進めないもんでな」
「良い事だと思う」
「メルは凄まじく忙しくなるけどな」
「やっぱ良くないかも」
ウロボロスに揺られながら、メルと心温まる会話をして、良い感じにリラックスをすることができたのだった。
今日も『罪の牢獄』は平和である。
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