外伝 『王魔骨』との激突
「視界に骨しか映らな過ぎて気分悪くなってきた」
「仕掛けられる前に潰すとおっしゃったのは、ご主人様です。バビロンに任せて勉強させてもらうと作戦を計画されたのもご主人様です」
「我らが王に、最強のアンデット族の力を見せる時である!」
――ドドドドドドドドドッ!!
スケルトン達が勢いよく敵陣へと掛かっていく。
その先には、見るからに強固な陣を敷いている『王魔骨』軍の魔物たち。
『王魔骨』の能力なのだろうか、骨の柵を張り、左右に遠距離武装をさせたスケルトンを配置し射線を広げた威容は、攻略の難しさを容易に想像させるほどだ。
『異教悪魔』との魔王戦争で活躍したバビロンの力を見て、『大罪』の魔名を堂々と頂く宣言してきた上級魔王『王魔骨の魔王スケイル』。
俺と似たような戦法で夜中に攻めるのがお得意らしく、スケイル本体が使用できる特殊結界の中で、大軍を駆使して戦うのがお決まりらしく、アークに来られると面倒なので、こちらから出向いて戦うことにしたということだ。
スケイルが使用した結界は完全な荒れ地であり、見晴らしがよく、正面から戦いましょうという意思が見える場所になっていた。
「戦場を創りだし、知れた戦場で戦う有利、地形の掌握と有効な活用法。俺の好きな戦い方だな」
「ご主人様が情報戦を仕掛ける前に、堂々と仕掛けてきましたから、研究されているようですね」
「破天荒って噂だったけど、戦に対しては真面目で堅実みたいだな。この結界の広さだけで強さが伝わってくる」
その魔名の通りスケルトン系統の魔物を中心とした軍勢。
圧巻の数と多種多様な骨で創られた様々な魔物たち。まさしく『軍』と呼べるような動きの機敏さと規律を感じる陣構え、さすが上級魔王だなって感じだ。
今回の戦、先陣を切るというか、有無を言わさずに前にでているのはバビロンだ。同じスケルトンというところにシナジーを感じたのと、スケルトンを使った戦い方を学ぶ気でいるんだろう。
バビロンの強化スケルトンたちが敵陣に向かって走っていく。
『王魔骨』の力で、強化スケルトンと似たような状態になっている相手だが、単純な機動力なら、バビロンの強化スケルトンのほうが上のようだな。
――パオォォォォォォォンッ!!
「何と!?」
意気揚々だったバビロンが、突如響く鳴き声に、思わずどよめく。
荒れ地の奥から走ってくるのは巨大な『魔骨象』というSランクの巨体アンデットである。
基本的に真っ直ぐしか進むことができないが、アンデットとは思えない耐久性と前進力を持っており、驚異的な魔物である。
敵陣に突っ込んでいたバビロンの強化スケルトンたちが魔象隊に粉砕されて、飲み込まれていく。
何度も蘇れる強化スケルトンだが、さすがにバラバラになったり、砕かれてしまったりすると、蘇生するまでに少し時間が必要なため、数で飲み込んでしまい、復活するたびに瞬殺していくという作戦なのだろう。
「中央は占拠されそうだな」
「お互い凄い数ですね」
『魔骨象』に続き、色んな骨が『王魔骨』の陣地から溢れ出てくる。
『魔骨虎』『魔骨鳥』『魔骨竜』『魔骨蛇』、とにかく骨の集合体なんだけど、この広い結界内を埋め尽くすような勢いで戦場に出てきている。
バビロンも数と勢いで負ける経験はしてこなかったので、少し悩んでいるようだ。
強化スケルトンの戦闘力のおかげで、中央である程度の拮抗状態を作り出せているけれど、さすがに強化スケルトンだけでは長くは持たないだろう。
スケルトンのような感情の無い魔物には、バビロンの『
「ポラールやメルに頼らない感じ、まだまだ余裕そうだな」
「ますたー、煩くなってきた」
「一応戦場だから、そりゃ煩くなるだろうよ」
相手側は戦における重要点を、本当よく把握した戦い方をしているなと戦場を見て素直に感じる。
小規模な相手に大規模な自軍を確実に戦闘させるような誘導、俺たちから見て脆そうな箇所への素早い援護意識で戦の分岐点を作らせない動き、それぞれの魔物が活躍できる部隊の攻め方と、さすが上級魔王だ。
同じように数だけで攻めてきた『異教悪魔』とは大違いだ。この結界を創り出せるだけで、本体のスケイルもかなりの実力者だろうし、あの戦争を魔王界に見せつけた上で、喧嘩を売ってくるだけある。
「ふむ……ここは『
――ゴウッ!!
赤黒い魔力がバビロンから溢れ出す。
凄まじい勢いで、暴風の如く巻き起こる魔力の渦が戦場を襲う。
『王魔骨』の魔物たちも、さすがの圧に進行速度を遅らせ、逆にバビロンの強化スケルトンたちは蘇ったかのように纏う魔力を大きくし、動きも活発化している。
戦場を創り出していた『王魔骨』の結果に罅が入り、徐々に内側から世界を塗り替えるようにバビロンの魔力が侵食している。
「全部の優位を力づくで返しにいったな」
「私から見ても、本当に反則的な能力です」
一瞬にして『王魔骨』の荒れ地結界はバビロンの『
足場が不安定な骨で埋め尽くされ、段差も遮蔽も何もなく、赤黒い魔力の霧で薄く覆われた不気味な結界になり、せっかく『王魔骨』軍が固めていた陣も無駄になってしまった。
バビロンの魔力で覆い尽くされた『
「一気に『王魔骨』軍の動きが崩れたな」
「バビロンにとって不都合なことは、相手にとって最重要なことでしょうから、そこを問答無用で逆転されるのは誰だろうと厳しいものです」
「……相変わらず無理矢理」
『自分に不都合なことを塗り替える』
確実にバビロンにとって良い事なんだが、ランダム的でもあり、敵も味方も予想できないところが、俺的には苦手ではあるんだが、ポラールやメルが呆れるレベルで理不尽な力ではある。
『
「さぁ! 我らが攻勢の流れである! 矮小な骨など打ち砕いて進むのだァ!」
戦術もクソもない、なんと無理矢理な方法で『王魔骨』を崩したバビロン。あのままであれば『王魔骨』の上手さにボコボコにされる感じだったが、能力の極悪さだけで相手を粉砕するのは、いかにも『
戦場を自分が優位になるように変え、相手が不利になるようなデバフを押し付け、逃げ場のない広範囲スキルで追い詰める。
高レベルの結界を塗り替えるのは、本来なら難しいことだそうなんだが、『
「戦術を無視した強引な力技、結局のところ俺たちはそこに行きつくんだよな」
様々な方法で戦の分岐点を作ろうと、様々な魔物を送りこむ『王魔骨』であったが、どの魔物も良いところをバビロンに塗り替えられてしまい、活躍できぬまま強化スケルトンに飲み込まれてしまう。
最終的にはバビロン本体が『黙示録の獣』を召喚し、とんでもない数の魔物を葬り、『
それから1時間ほど、相手の湧き出てくる骨と凄まじい戦いを続け、似た者同士の戦いはバビロンに軍配があり、これでまた1人、敵対する魔王が減ったのであった。
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