外伝 異常な『師』
『沈黙の魔王』との魔王戦争に無事勝利し、ルーキー魔王に課せられていた試練である『魔王戦争しなくちゃ死ぬ』という謎の条件をクリアしたラプラス。
ラプラスは初魔王戦争の勝利に浸かることもなく、一度魔王戦争を経験し、新たな考え方や経験を得た上で、魔王界で一番ヤバいとされている魔王戦争を観ようと、コアルームで準備をしている最中だ。
「兄様と『異教悪魔』様との魔王戦争。ここから『
ソウイチから得た『大罪』の魔名により、異常なほど強くなった、ラプラス軍のエースである『
ラプラスから見ても、ルーキーが持ってはいけない強さを持つ『大罪』の魔物、魔王界のバランスを壊すまで最近言われているようで、『異教悪魔』と『大罪』の魔王戦争は、僅か1年しか生きていない魔王が最強候補の1体として認められた一戦。
ラプラスは、『大罪』というデメリットとメリットが尖りすぎている力を使いこなし、1年で最強の1体として数えられるソウイチを超えるためにも、少しでも研究していこうの精神である。
「『海賊』との一戦も見ましたが、基本的なスペックに差がありすぎて戦争になっていませんね。この初撃を耐えられる魔物がどれだけいるんでしょうか?」
モニターに映し出されるのは、ポラールとガラクシアが開幕で放った極闇魔導の『
一撃で観戦していた全ての魔王の度肝を抜いたであろう超範囲魔導は、30秒足らずで『異教悪魔』軍の魔物7割を消し飛ばした。
能力や戦略、魔物の相性といったことをすっ飛ばした。開幕超広範囲かつ超火力の1撃、詠唱の邪魔すらさせずに『異教悪魔』を崩した手法に、さすがに呆れてしまうラプラス。
「もしかしたら流行る可能性もあるので、開幕火力を押し付けてくる対策は考えなければなりませんね」
ラプラスの配下には単純な火力として計算できる魔物が少ない。『誓約』の力も『大罪』と似て、ややこしい部分があり、ノーリスクでガンガン使っていける能力では無い。
『沈黙』との魔王戦争もレクエルドの基礎能力に助けられた部分があり、戦争の決め手になる力をラプラスは欲していた。
ラプラスから見たソウイチの配下の魔物たちは、それぞれが戦闘に必要とされている要素を全て持っている者たちばかり、単体で完結することが前提とされているかのように…。
「Lv固定化に助けられました。兄様の配下はレクエルドが見た限り、同じ『大罪』の力を持っていても遥か上の力を持っている」
『大罪』の力を得て、恐ろしく強くなったレクエルドが一目見ただけで、絶対に敵わないと思ってしまったポラール。
モニターにもタイミングよく、ポラールが『異教悪魔』の魔物たちを蹂躙する姿が映し出される。
味方が巻き込まれないことを把握した上で使用されているのは、回避不能の地獄の数々。
ラプラスが感じたのは、環境を変えただけで『異教悪魔』側は崩れてしまっているが、使用したポラールからすれば攻撃スキルを使用する前段階でしかないということである。
ラプラスはソウイチが言っていた戦いの心得を思い出す。
「環境を変え、環境を活かし、エリアを制することができれば勝てる……ですか」
エリアを制する戦い方というよりは、単純なスペック差で殴り勝っているような感想が出てくる『異教悪魔』と『大罪』の魔王戦争。
ラプラスの配下には環境を活かして戦うことで強さを発揮できそうな魔物が多い訳ではないが、言われてみれば、ソウイチの配下たちがエリアを破壊するか、制するような戦い方でスキルを使用しているのが解った。
広範囲スキルで足場を崩壊させたり、凍結させたり、嵐を呼んだりと結界を創り出したりと、確かに敵を薙ぎ倒しながら環境を制している。
「事前にエリアごとに2体でペアを組み、メイン火力で残滅するのが1体、別エリアに入り込まないようにサポートするのが1体。僅か2体の魔物でここまで抑えられてしまったら、どうしようもないですね」
2体の魔物ペアで大半のエリアを抑えきる強さ、そしてソウイチのダンジョンまでの道のりを絶望へと変える、それぞれのエリア制圧スキル。
Lv差からでるステータス差に、普通の魔物には無いような特殊能力の数々、その能力は戦闘に特化したものばかりなのだから酷いものである。
ラプラスがソウイチの魔王戦争を観て、もう1つ気になる点があった。
「転移系の能力が豊富なのと、対策がしっかりされていますね」
人間界で時空間魔法は極めて珍しいとされている。それは魔王界でも同じであり、高ランクの時空間魔法を習得できる魔物は多くなく、普通の配合では生まれにくいため、ガチャのピックアップに来るのを待つしかないと言われているくらいには珍しい。
ラプラスが判った中では2体以上は転移を自由自在に扱い、そして相手の時空間魔法系統の力に対策できる魔物がいると見ていた。
自分たちだけ至る所に転移して、相手にはさせないという意地悪な戦法である。
「魔力の流れや、魔法陣が出現するから気を付けていれば大丈夫という話を聞きましたが、兄様の魔物はどうやら違うようですね」
ウロボロスの極時空間魔導とデザイアの『囚われぬ神』は、気配も何も感じさせぬ神出鬼没の転移スキルであり、ソウイチが戦う上で1番の核にしているものだ。
相手の土俵で戦わず、自分たちの能力を知られる前に殺しきる。
ラプラスはソウイチから、魔王戦争は始まる前から戦いが開幕しており、どれだけ情報戦を制することができるかで勝敗を分けるとも教えられており、この魔王戦争ではどのようにして情報戦を活かしたかどうかも考える。
「この戦力をどのようにして1年で揃えたのでしょうか? いくら『大罪』があれど、配合するには他の魔名や聖魔物が必要になるのに…」
考えれば考えるほど、ソウイチが率いる魔物たちが、異常なほどに強く、1年で揃えられることがおかしく感じるような数がいることに気付く。
想像よりも遥か高みにいることを改めて感じ、どうしようもない脱力感に襲われるラプラスであったが、そこで諦めては終わりだと、もう1度『異教悪魔』と『大罪』の魔王戦争を観返すことにする。
今では大半の魔王が求めている魔名『大罪』。
ラプラスは師匠から授かった『大罪』の魔名がこの先、数々の魔王から執着されるほど狙われることは、この時点では知る由も無かったのである。
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