外伝 『お昼寝』タイム
――『罪の牢獄』 ダンジョンエリア 『星屑の祭壇』
「デザイアって不思議な魔物だよなぁ」
「妾の昼寝を邪魔したあげく、今更な質問をする主は頭でも打ったのか?」
デザイアとニャルラトホテプが静かにお昼寝する『星屑の祭壇』にやってきて、とりあえず挨拶かのように質問をして見たら、さすがに呆れられてしまったようで、ニャルラトホテプの上についている玉座で悩ましい顔をしているデザイア。
相変わらずの棒付き飴に猫耳フード、そして全身真っ黒ファッションで個性の強い外見をしているが、なんとも眠そうな雰囲気を出しているデザイア。
実は大きさ自由自在の寡黙な巨大蜘蛛のニャルラトホテプ。
特に大事な要件があるわけじゃないんだが、なんとなく話がしたくなったので会いにきてみたということだ。
「みんなのことはコアに登録されてるんだけどさ、アザトースとニャルラトホテプだけ詳しい種族説明が少ないもんでさ」
「妾に聞かれて困るもんじゃが……妾は妾じゃからのぉ」
「凄い魔物だってのは知ってるんだけどな。気になって夜も眠れないんだ」
「……そんな目で見るでない」
とにかく真剣な眼差しをデザイアに送って見ると、顔を赤くしながら横をむかれてしまった。
いつも同じ方法になってしまうのだが、デザイアにお願いするときは、とにかく目を見て真剣にお願いするのが一番効果的であることは経験済み、最終的には嫌々ながらも応えてくれるのがデザイアの素晴らしいところだ。
あんまりやりすぎると愛想つかされそうではあるが…。
「自分のことを話すのは嫌じゃ~……恥ずかしいではないか」
「気になって夜も眠れないんだ」
「言葉にするのは恥ずかしいから嫌じゃ、これで勘弁じゃ」
デザイアが目を瞑ると、俺の正面にコアのモニターのようなものが表示される。
デザイアとニャルラトホテプに関する、能力値以外の情報を映し出してくれるようだ。
こんな感じで使えるんだから、デザイアたちの『思想具現化』がどれだけ幅の広いスキルかよく解る。本当に何でも出来てしまうから恐ろしい。
これができるなら後でコアルームでやってもらって、そのままコアに書き写したほうが良さそうだな。
「アザトースは魔王の括りなのか」
「そうらしいのぉ」
Lv1000組の中でも異質なのがデザイア&ニャルラトホテプだと思っている。
戦闘することに命かけてますと言わんばかりの能力構成をした他3体のLv1000組と違って、デザイアは『
リトスとデザイア、バビロンの3人は本当に特殊なので、模擬戦だけだと力を把握しきれていないのが現状だ。
EXランクの魔物も種族ごとで、細かいところが違うし、考え方や戦いの組み立て方が違ってくるから、そういったところも覚えておきたいもんだ。
「なんじゃ? もうええのかの?」
「後でコアルームでやってくれれば、すぐに記録に残せるから頼んだ」
「……ニャル、頼んじゃぞ」
「改めてデザイアの能力を思い返してみると極悪だよなぁ」
「褒めとるのか?」
「デザイア居ないと成り立たないのが『罪の牢獄』くらいには褒めてるぞ!」
「う、う~む」
ストレートな誉め言葉にたじろいでくれるデザイアが普通に可愛い。
Lv1000が4人になって、誰が戦ったらどうなるかっていう論争が少しだけ沸きだっている。
個人的に気になるのはタイマンしたときにハクとポラールが1番強くて、次いでシャンカラ、そして最後にデザイアという評価がされがちなことだ。
「本気出したことないだろ? 俺だってどんなものか気になるぞ」
「……話題が変わりすぎじゃろ」
「最近けっこう話題になるじゃないか」
「妾が1番弱くてかまわんのじゃが」
「みんなニャルの存在を無視しすぎなんだよなぁ、2人揃ってたら無敵だろ?」
デザイアとニャルラトホテプのペアが本気で戦うってなれば、とんでもなく面倒な相手になる事は確実だろう。
いくらぶっ壊れた攻撃性能を誇るハクだろうが、相手の弱点を的確につける地獄を展開できるポラールでも、対応力が満点のシャンカラでも厳しいのは確実だ。
最強のデバフばら撒きと、眷属を産み落とせる力、『思考具現化』の万能さ、そしてどこにだって現れる神出鬼没なスキル。本気を出せばこれが2人バラバラに使用していけるという摩訶不思議。
「個人的にはデザイアの隠し玉が1番怖いんだよな」
「妾の切り札は、主が好きそうなタイプじゃからな」
「真正面から戦うことに美学を感じないからな。とことん優位を取ってから潰すのが美学よ」
「出来れば全力を出すことが今後無いことが1番じゃがな」
「1番周りに被害が大きくなりそうなんだっけ?」
「帝国の広さくらいはやってしまうかもしれんのぉ」
「ポラールとハクよりも範囲広いのは凄いな、俺たち全力で逃げないと」
「誰も妾を認知できんし、破壊されることにも気付けんから安心してええぞ」
「最高だな」
褒めれば褒めるほどデザイアの口が軽くなってくれる。
なんだかんだ普段は昼寝してるけど、誰かと話をするのは嫌いじゃないんだろうし、頼れば何でもやってくれるから本当は姉御肌なところがある。ニャルが影で支えているのは言わずもがなではあるがな。
デザイアが言った通り、認知されないことがどれだけ凄く、理不尽なことか。
「主も妾らの力が上手くやり返される展開のことを想定してみてもええかもしれんのぉ」
「ピンチを経験しておけってやつか、なんとも難しいやつだな」
「世の中相性というものは存在しとるから、妾らがピンチになる事もあるじゃろうからな」
「そうならないように気を付けないといけないし、時間があるうちに考えておかなきゃな」
「……まぁ今は昼寝の時間じゃ。主も一緒にどうじゃ?」
「結局寝るのかよ」
盛り上がるかと思いきや、デザイアはお眠なようなので、少しだけ一緒にお昼寝をすることにした。
短い会話時間だったけれど、改めてデザイアの付き合いの良さと可愛さを感じることの出来た楽しい時間であった。
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