第4話 『戦車』は前進するのみ
「総員突っ込むなァ! 3人1組を崩さずに迎撃の構えを!!」
「『
呑気に煙管を吹かせる五右衛門を見た瞬間。
感じたことの無い悪寒が走ったフェガリとシャールは素早く行動に移す。
フェガリは『
オーロラを感じさせるような、幻想的な魔力のカーテンが団員たちを包み込む。
シャールは五右衛門が団員たちよりも遥かに強い魔物だということを一早く察知し、攻勢に出ても悪い結果になるだろうと感じ、素早く迎撃の姿勢を徹底させる。
そんな素早い連携を感心しながら五右衛門は第10師団の動きを観察する。
「ふむ……バビロンに来させたほうが盛り上がったかもしれんのぉ。とりあえず付与能力で前線維持は素晴らしいが、儂相手には悪手じゃったな」
――シュンッ!
五右衛門が左手を前に出した瞬間、第10師団の団員たちを纏っていた『
先ほどまで団員たちを守っていた強靭な『
「『
「私の能力が吸収されました! 各員戦線を下げるのです! 私たちが前に出ます!」
五右衛門を纏う魔力を、フェガリは瞬時に自身の『
ただでさえ強大で威圧感の凄かった五右衛門が、さらに恐ろしい魔物に感じてしまい退きそうになるが、第10師団のトップとしての意地を見せ、シャールとともに前に出るフェガリ。
フェガリは気付いていないが、五右衛門がわざわざスキル名を口に出した影響で『
「我が能力は『
――ヒヒィィィィィンッ!!!
ゴゴゴゴッという轟音で大地を鳴らしながら、7つの車輪のついた大型戦車を引く2頭の馬が雄叫びを上げながら召喚される。
紅い馬に蒼い馬、2頭の馬が闘気を撒き散らしながら叫びをあげ、戦車に取り付けられた玉座に堂々と座したシャールが剣を五右衛門へと向ける。
「我止まらずッ! 進め『
――ドドドドドッ!!
シャールの号令を受け、2頭の馬が勢いよく進撃する。
フェガリが掛けた2種のバフスキルが奪われてしまい、圧倒的なまでのステータス差が予測できる中で強気の前進、何故ここまで強気に前へと出れるかと言えば、それはシャールの持つ『
『
しかし、そんな『
「地上を走る戦車……これならどうじゃ? 『
――ガシャァァァァン!!
「グウゥゥゥゥ!?」
シャールにかかったバフを一瞬で奪いつつ、『
地面の摩擦を奪われてしまった結果、2頭の馬は勢いよく転倒し、シャールは『
正面で投げ出されてしまったシャールを、五右衛門が見逃すはずもなく、腰に携えた『
「総員ッ! シャールをカバーします! 『
「「「「「オォォォォォォォォッ!!」」」」」
「ほぉ! 手早いもんじゃな!」
――ドンッ!
フェガリから放たれた大量の魔力弾を素早く跳んで回避する五右衛門。
団員たちもフェガリに続き、シャールを囲むようにして陣形を整える。
『罪の牢獄』では中々見られないカバー意識の高さに称賛を送りながら、木の上に跳び乗って様子を伺う。
再び態勢を整えた『
「付与能力は全て奪われるッ! 相手が強化される一方だ! 今のところ敵は1体! 遠距離と手数で押し切るんだ!」
「武装した魔物です! 接近に注意し、相手の足場を潰すのです! 『
――ドドドドドドッ!
フェガリの『
大量の遠距離スキルの中を駆け抜けていくのは『
「『
――ドシャァァァァンッ!
紅い闘気を纏った『
足場を失った五右衛門に向かって、大量の遠距離スキルの嵐が襲い掛かる。
火球や闘気を纏った矢、フェガリの『
空中でスキル受け続け、完全に体勢を崩している五右衛門をシャールは見逃さず、自身のもてる最大のスキルをぶつけるべく、闘気を最大限放出する。
「『
――ドシャァァァァンッ!
後方からのスキルを一部受けながらも、蒼い闘気を纏わせた『
直撃の瞬間に爆発を起こしながら、五右衛門を跳ね飛ばす。
「まだです! 消滅の瞬間まで手を緩めてはいけません!!」
「『
――グシャッ!!
相手の防御スキルを貫通してダメージを与えることのできるシャールの『
さらにズタボロになり、空中に投げ飛ばされた五右衛門に団員たちの遠距離スキルの嵐が襲い掛かる。
五右衛門の体力が底を尽きかけていると判断したフェガリは一気に前に出る。
「封印します! 『星聖降臨ノ儀』」
――ババババッ!
フェガリが五右衛門の周囲に数本のナイフを投げる。
智慧があり、会話の出来る魔物を封印・捕縛することで魔王の情報を引き出そうというフェガリなりの作戦である。
地面に突き刺したナイフが光輝き、星の形をした魔法陣が出来上がる。
ボロボロになりながらも、フェガリが封印に時間をあけている間、団員たちに号令をかけるシャール。
「よし! 周囲を警戒しろ! 他にも潜んでいるかもしれん!」
「後ろ注意をもっと早く言っておくべきじゃったな」
「「なっ!?」」
――ドシャッ!
シャールとフェガリは団員たちのいた後方から聞こえてきた五右衛門の声に混乱しながらも反応する。
振り向いた先に映っていた光景は、配下である団員たちは全員地面に伏しており、自分の刀を撫でている五右衛門の姿であった。
一瞬の内にして『
「やはり2体目が潜んでいたのか!?」
「いえ……2体目ではないようです」
封印していたはずだった五右衛門にフェガリが視線を向ける。
『星聖降臨ノ儀』で封印中であった五右衛門が横たわっていた場所には、綺麗に作られた藁人形が置いてあるだけであった。
自分たちは気付かぬ間に藁人形と戦っていた事実、そして指示を出す間もなく200人は居たであろう団員たちをやられてしまったという2つの衝撃にシャールは言葉が出ない。
「儂らの王様も満足したじゃろ。そろそろ始めようかのぉ」
――ゴウッ!!
五右衛門から今まで感じたことの無い威圧感を浴びる2人。
身の毛もよだつ闘気と邪気を感じながら、第10師団団長格の2人は再度武器を構えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます