第3話 心の『軌道』
ガラクシアの魔力と邪気の強大さで、崩壊するのでは無いかと思うほどに酷い有様であった『
そんな結界内が一瞬にして桃色世界へ塗り替わる。
ガラクシアの『
「皆起きて~! 殺し合いのお時間ですよ~♪」
「「「「「「グオォォォォォォォォ」」」」」」
ガラクシアの掛け声に合わせて、気絶していた騎士団員たちが立ち上がり、気の狂ったような雄叫びを上げる。
正気は完全に失い、すでにガラクシアの洗脳下におかれている騎士団員たち。
その恐ろしいまでの影響は女神の力を得ているイプシロンも例外では無い。
――パリンッ!
「グゥ……ウゥゥゥ………こんな…ことが…」
「幻が全部消えちゃったよ? 本体丸見え♪」
『
不思議そうな顔をしながら、洗脳直前まで『
「女神さんの力……確かに頑丈になってるっぽいけど、能力は強くなって無さそうだし、『
顔を歪ませ、呻き声をあげながら頭を押さえるイプシロンを見ながら、自身の力がどれほど通っているかを考察するガラクシア。
誰かしらの乱入があるとソウイチが予想した段階から、最初に隊長格を倒したり、捕縛した者は報告をしなくちゃいけないので、ガラクシアは必死に報告内容を考えているのだ。
ステータスが大幅に上がり、半端なデバフや状態異常を無効化するようになっただけで、攻撃性能はそこまで上がっていない。
ガラクシアの評価は、しぶとくなっただけに納まった。
「おっけ~♪ じゃぁ……殺し合いに行ってきていいよ!」
「アァァァァァァ!!」
顔を歪ませ、狂気に満ちた叫びをあげながら、第6師団団長のイプシロンは配下であった騎士団員たちの斬り合いの中へと走り込んでいく。
『
『
女神の力を得たイプシロンも、周囲に遠慮せずに『
「最後に団長格の身体の一部を回収して、お~~しまい♪ ちょっとだけ楽しかったかも♪」
自身の禁忌魔導を前に、逃げ切れず身体の大半が消滅し、気配が完全に消えかけているランドルフを忘れないようにと頭の片隅に置きながら、ガラクシアはイプシロンが使用していた『
「マスターならメルちゃんで真似っ子分裂作らせて悪い事しそだな~♪ たくさん褒めてもらうぞ~!」
身体の一部を回収するということは、メルが吸収することで能力の再現が一部可能になると言うことである。
『
◇
「団長……不味い状況になったな」
「えぇ……皆! 魔王の仕業だと思われる転移魔法を受けました! 陣形を整えるのです!」
――ガシャガシャガシャ!
大量の魔物に囲まれてしまった帝都の住民を安心させるために居住区へと動いていた帝国騎士団第10師団の騎士団員たちは見知らぬ森の中へと跳ばされてしまっていた。
霧が濃い中、最前線に出て指示を出しているのは2人の隊長格。
黄金の冠を堂々と被り、それに劣らずの非常に目立つ黄金の鎧を纏った、髭が少し目立つ茶髪の青年。
真っ赤な剣を右手に持ち、若さを感じさせない陣形指示をだしている彼は第10師団副団長『
「全員が跳ばされているわけではない! いる人員で3人1組を確実に組んで警戒だ!」
第10師団も帝都を囲んでいる異様に強いスケルトンやスライム、蠅の存在を共有できている。
Gランクの魔物だと思って油断していると、呆気なく返り討ちにされることになるのをシャールも理解しているので、最低でも3人1組で連携が取れるような陣形を構えるように指示を飛ばしていく。
その横で白銀色の魔力を放出しているのは第10師団の団長『
騎士甲冑では無く、魔導士が好んで纏うローブを装備しており、赤茶色のボブヘア、銀が使われた星型の耳飾りをした、キリっとした顔立ちが目立つ女性団員。
「『
「女神の力ってのは、能力強化にはなってない感じか」
フェガリは団員全員に自身の『
効果はステータスを増加させるバフ、そして精神を落ち着かせるというメンタル維持にもなる便利な力。しかも能力の継続時間が普通の付与魔法とは違って、1度使用すれば3時間は平気で持続するという恐ろしい継続力を持っているのだ。
フェガリのバフを受けた団員たちの身体を白銀色の魔力が包み込む。
突然の転移を受け、視界の悪い森に跳ばされてから、瞬時のバフと精神安定の能力使用の判断、シャールの陣形指示、他の団と違い連携戦闘を重視している第10師団らしい動きである。
「『
「帝都の周囲にいたような魔物は潜伏してないと思いたいが……団長の能力を以てしても通じない猛者の可能性も高い」
「第7師団団長格2人がやられてしまった可能性が高いという話ですから油断はできません」
「総員距離を離すな! 各個転移される可能性がある! 距離感を意識し、周囲の警戒を続けるぞ!」
「「「「「ハッ!!!」」」」」
シャールの号令に団員たちが応える。
フェガリの『
濃霧の森という魔物と戦うには最悪すぎるような戦場ではあるが、各員が最悪の状況を想定し、各個撃破だけは避け、すぐにでも報告し合える位置関係を保ちながら、少しずつ森の中を進んでいく。
「なるほど……ここは結界内のようです」
「さすが団長……もう全域を感知できたのか?」
「濃霧のせいか、結界の大きさしか判明できませんでしたが、半径15㎞といったところですね」
「随分広い……ピンポイントかつ、素早い転移魔法に巨大な結界となると、魔王本体が陣取っている可能性も考えられるか?」
「そこまでは解りませんが、わざわざ帝都から転移させたということは、我々第10師団を有利盤面で撃破したいということなのでしょう」
「総員引き締めろッ! 相手は奇襲を得意としている魔物だと考えられる! 不意をとられなければ後れをとることはないぞ!」
「「「「「オォォォォ!!」」」」」
「なかなか連携というものをやりゃーせんからのぉ。良い勉強になるもんじゃ」
――ガシャッ!!
鳴り響く声に素早く構える第10師団の団員たち。
声のする方向には、のんびりと煙管を吹かせる巨大な蛙、『大罪の魔王ソウイチ』の配下で『
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