第12章 集え、『烈火の帝都』へ
プロローグ Gランクの『脅威』
「どうなっている!? 気付けば囲まれておるぞ!」
「夜間の警備はどうなっておったのだ!?」
「各団の団長・副団長は動いております。住民の避難、冒険者への依頼は8割ほど済んでおります。突如時空間能力での転移で現れたとのこと」
帝国が誇る参謀2人が焦りとイライラを隠し切れないような動きと言動で、報告に来た一般騎士団員に声を荒げる。
朝起きたら、帝都周辺を『スケルトン』『スライム』『蠅』の大群が囲んでいるのだから、声を荒げてしまうのも無理ないのかもしれない。
最初はGランクと言われている、魔物の中でも最底辺の大群に囲まれているので、安心して一蹴できると大半の人間が踏んでいたが、なんと一般騎士団員では歯が立たず、時間が経過するにつれて数が増え続けるという悪夢のような状況。
気付けば、帝都を完全に囲まれてしまうという最悪の状況になってしまっているのだ。
「アルカナ騎士団幹部格でも数を減らせない……本当にスケルトンやスライムなのだろうな!?」
「はい……通常個体よりも強力かつ、次々と再生していくので手を焼いているところであります。ですが一定ラインから侵攻せず、こちらの動きを見ている様子」
「報告に聞いていた魔王が仕掛けてきおったな! 第7師団はやられたとの話も聞いた……皇帝は何をお考えなのか」
帝国皇帝クピィトゥス・ガイストスと第1師団副団長である『
皇帝は騎士団員たちに、「幹部格は要注意せよ」という言葉を残して、姿を晦ませてしまっている。
『帝国』と『大罪の魔王ソウイチ』。
どのような結果になっても、歴史に大きく名を残すことが確実視されるような、国と魔王の大戦争が……今、始まる。
◇
――『罪の牢獄』 居住区 コアルーム
帝都周辺の様子をスケルトンやスライムの視線をコアに映しながら確認する。
最初の内は帝国騎士団の皆様が必死に頑張っていてくれたが、こちらが一定ラインから帝都に近づかないと見切られてから、戦いに激しさが無くなってしまった。
相手は消耗が激しいのに対して、こっちはメルとバビロンが永遠と復活させ続けているから、強化スケルトンと分裂スライムの数が減らないという無限耐久モードに入っていることも、ある程度把握されてしまったかもしれないな。
「乱入者と油断しなければ勝てる相手だとは思うけど、すんなり行かない世の中だからな」
「準備は完了じゃ。今のところ乱入者らしき気配も感じんのぉ」
「さすがデザイア、ウロボロスと一緒に頑張ってもらうことになるけど、頼んだ」
「妾はウロボロスのサポートをするだけじゃ。主の好きな転移奇襲作戦はウロボロスが要じゃからの」
「『異教悪魔』ほどじゃないけど、集団戦になると思うし、アルカナ騎士団幹部格の能力は厄介だから用心しなきゃな」
「そのセイフ聞き過ぎて、耳にタコができてしまうんじゃが……」
「ビビりなんだから許してくれ。皆を信じてないわけじゃなくて、乱入者が誰かしら来るっていう見通し不安でビビってるだけだ」
「阿修羅や五右衛門は、乱入者がおったほうが本気でやれて面白いと言っておった気がするのぉ。妾が生まれて本気を出したことなんて、未だに無いから疼いとるようじゃが……」
「どう転んでも『七元徳』との魔王戦争では全力全開になる可能性があるから、そんな手の内を見せるようなことは勘弁してほしいもんだ」
ウチのEXたちは未だに本気で戦ったことが本人たち曰く無いようだ。
俺の好奇心に付き合ってしまわせているっうてのも理由だろうが、ダンジョン内か魔王戦争でないと、誰かしらが本気をだしてしまうと、周囲への被害がとんでもないことになってしまうという理由らしい。
俺が思い描く将来のため、より多くの生物が暮らしていけるように環境への配慮までしてくれる優秀な面子が揃っているのには感動を隠せない。
懸念があるとすれば本気……周囲を本気で気にせず大暴れをするってなったときにどうなるか未知であることだけだな。
特に戦闘スタイルが広範囲攻撃や結界能力が多めのポラールやガラクシアあたりが枷を外して好き勝手やると考えると、戦う時の配置に、さらに気を付けなきゃいけなくなってしまうからな。
「今回は帝都に送り込む面子は、そんなド派手なタイプじゃないから、城の面影くらいは残りそうだけど……」
「不意打ちで首を掻っ切られるのだけは相手側も用心しとるようじゃが……妾とウロボロスが人間程度の結界を突破できんわけなかろうて」
「本当……2人がいてくれるおかげで、何でも出来るんじゃないかって勘違いしそうになるよ」
「17もEXが揃っとるんじゃから、もっと頭ハッピーになってええもんじゃが、本当主は面白味がないのぉ~」
「頭ハッピーになりたいけど、もし同等戦力の相手と戦うときが来る日がきたら、ボコボコにされたくないからさ」
「魔王界とやらで不評な戦い方ばかりしとるから、今回も乱入者に怯えるようなことになるのではないかのぉ?」
「少しは盛り上がるようにしたんだけどなぁ……『異教悪魔』だって初手でデザイアとウロボロスが協力して、ハク・ポラール・シャンカラを送りだしたら良かった話だけど、しっかり戦争っぽくやっただろ?」
「皆のストレス発散と主の魔物能力研究のために全員で働いた結果じゃな」
デザイアと何気ない会話を続けながら、帝都でのアルカナ騎士団の動きを大まかに把握するように頭を回す。
こういったときは住民を安心させるために、高らかに安全宣言のようなものを、騎士団の幹部格の誰かしらがるってのが帝国の歴史書に記してあったので、今回もしっかりやってくれるんだろうと予測している。
そのための帝都包囲網だし、騎士団幹部格の多くが表に出てきてくれないと、次の作戦を手早く実行できないので困ってしまう。
「おぉ……予定通り、たくさんの騎士団が住民を集めて頑張っておるぞ」
「お偉いさんたちが出てきたら作戦開始だな」
「妾も働くとしようかのぉ……行ってくるのじゃ」
「頼りにしてるよデザイア」
次元の裂け目へとデザイアが消えていった。
帝都に住む多くの者、帝国を守るたくさんの騎士団員の皆様には大変申し訳ないが、俺の欲のために今回は嫌な思いをしてもらう。
魔王のくせに一々そんなことを気にすることもないと言われるが、何故だかどうしても、そう思ってしまう。
帝国騎士団幹部格の皆には悪いが勝たせてもらうし、皇帝の首を獲らせてもらう。
「さぁ……勝負だ帝国」
帝都に潜んでいるリトスが生み出した蠅の視点からガヤガヤしている帝都を観察している。
たくさんの帝国騎士団員の中に目立つ鎧をきた連中を、しっかり視認できたので、そろそろ作戦が開始される頃合いだろう。
――ピカッ!!
思わず目を背けたくなるような眩い光がモニターから溢れ出す。
ウロボロスとデザイアが、しっかりやってくれたんだなと思いながら、チカチカする目を再びモニターに向けることにした。
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