外伝 ウキウキな『考え事』
――『罪の牢獄』 居住区 コアルーム
「……いくつか『魔名』を魔王から奪っているけど、あんまり使おうと思わないんだよなぁ」
コアを弄りながら、自分が使用できる『魔名』を確認しながら、戦力強化をしようか悩む今日この頃。
もし『大罪』の力で復活制限が無ければ、すぐにでも様々なランクの魔物を配合で生み出していただろうけど、制限が重すぎてイマイチ配合にやる気が出ない。
真名付与回数も上限まできたので、とりあえずは現状維持できればいいのかなって思ってしまう俺は臆病なんだろうな。
「失うのが怖すぎて震える」
EXランクの魔物だけじゃなく、コアから蘇生できない全ての魔物を失うのを恐れている俺からすれば、次々と魔物を配合で誕生させていくのは怖いポイントを増やしているようなものだ。
使える『聖魔物』が無いので、現状ある『魔名』だけでEXランクは望めないだろうから、今は一先ず保留ということにしておこう。
「『銅の魔王』と戦った時にマスティマが居たら心強かったよな」
今ではEXランクたちに埋もれてしまっているが、マスティマやアセナも十分と言えるほど力を有していると思う。
『銅』や『豪炎』と戦ったときに戦力としていてくれていたら英雄になれるくらいの力は確実にあると言えるだろう。
特に『銅の魔王』との初めての魔王戦争。
あの戦いは『個』の強さと、単純な力を押し付けることがどれだけ恐ろしいことか身に刻まれるような戦いだった。
「都合よく配合可能にならなかったら、あのオーガー1体に壊滅させられて終わってたもんな。手も足もでなかった」
ランクと性能の暴力を初戦で学べたのは、『大罪の魔王』として1番ありがたかったことかもしれない。
必死に考えた策略をパワーで粉砕されるという絶望感。
俺の智慧が足らなかったと言えばそこまでではあるが、力と速さを兼ね備えたゴリ押しがどれだけ有効なのかを知れたのは、本当に『銅の魔王』には感謝しかない。
「アイシャの戦いを何度か間近で観れたのも良かったな」
自身の能力を最大限に活かし、戦場を支配しながら、自分も前線に出れるような戦い方をするアイシャ。
四大元素に関連する『魔名』は応用幅が広く、先人たちがやってきた戦略から多くを学べるから、相手に読まれないような戦略を組めるメリットはあるのかもしれないが、それにしてもアイシャは凄いと思う。
『焔』の全体蘇生は初見で見た時、驚愕のあまり腰を抜かしそうになったほどだ。
「羨ましすぎる……俺にも全体蘇生をくれ!」
火系統の力に偏っているという戦力的なデメリットはあるけれど、全体蘇生はそれを覆せるほどの反則技だと思っている。
『焔天』へと『魔名』ランクを上げた後は、アイシャ本体の戦闘力が驚くほど上昇した。
確実に俺よりも『
「俺だってそうだけど……アイシャは次の『魔名』ランク上昇でとんでもないことになりそうだな。俺もあんな風になれるもんかな?」
ウチの戦力的に俺が前に出なきゃいけないようなことは、俺の好奇心が爆発しない限り無さそうだが、俺が戦える力があることに越したことはないからな。
いざ自分が最前線で単独で戦うってなったら足震えて戦え無さそうではあるけど…。
「俺が今アイシャと戦うことになったら……アイシャはどんな対策をしてくるんだろうな?」
ウチの戦力を一番よく知っているのはアイシャだ。
自信をもって負けないと言えるけれど、どんな対策を練ってくるか素直に気になるところだ。
俺に限った話じゃないけど、1番簡単に魔王戦争を終わらせる方法は『魔王の首』か『ダンジョンコア』を潰すこと。他のことは最悪相手にしなくて良くて、そこさえやってしまえば、いくら配下の魔物が強くても関係ないのだ。
もちろん俺は自分とコアがやられないように色々考えているつもりだけれど、何事も抜け道があるもんだから怖い話だ。
「ウロボロス&デザイアのコンビみたいなのが相手にもいたら、最悪どうとでもなっちまうからな」
自分がよく使っている戦略は相手側にもあるかもしれないって考えておくのが1番。
『異教悪魔』との戦いで1番気にしたことは『時空間系統』の能力を使って一気に勝負を決められてしまうことだった。
こういうことを考えるのも魔王戦争の醍醐味の1つなんだろうな。
「こんなことを考えてると……やっぱ俺も魔王なんだなーって思うよなぁ」
気付けば頭の中は戦いのことばかり、立派な魔王様思考ができあがってしまっている。
平和な街づくりやら、商売のことばかり考えられるような平和的な思考であってほしかったが仕方ない。
勝たなきゃお終い……残酷な魔王界だなってつくづく思わされる。
「ますたーって本当に独り言凄いよね」
「……気を付けるよ」
「楽しそーだから気にしなくて良いよ」
「……楽しそうか?」
「まるで誰かに語り掛けてるみたいにウキウキだから、見てて面白い」
「あぁ……死にたい」
「ますたー死んだら、みんな死んじゃうからダメだよ」
「……すいません」
今度からは、しっかりメルとハクが寝ていることを確認してから考え事をするように心がけよう。
どんどん主である俺に対しての対応や言葉の選び方が雑になってきているような気がするけれど、そのうち立場が逆になってしまうんじゃないかなって心配になる1日であった。
とりあえず『罪の牢獄』は今日も平和だ。
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