外伝 最近の『若者』って奴は!?
――『罪の牢獄』 居住区 コアルーム
「ウチのダンジョンって、なんでこんなに人気なんだろう~?」
「かなり今更な気がするけど…」
美味しい昼食を食べ終わり、ダンジョンの主として、攻略しにくる冒険者をモニターで見張りながらコアを弄って活動中、ガラクシアのとても今更感のある発言を聞いて、少し苦笑いが出てしまう。
確かにウチのダンジョンは難しいと思う。
ダンジョン誕生から1年しか経過していないにも関わらず、難易度はトップクラスと言われても良いようなところまで来ている。
ガラクシア的にはウチのダンジョンが人気になれるような理由が見当たらないんだろうな。
「帝国の端っこだよ~? わざわざこんなところまで来るの面倒そうじゃん♪」
「俺が冒険者なら、こんな帝国の最南端を拠点にしようだなんて思わないからな」
拠点どころか、わざわざ攻略しに行こうとも思わないレベルの場所と言っても過言じゃない立地条件である『罪の牢獄』。
この問題に関しては、レーラズの農産物であったり、鉱山から採れる鉱石を素晴らしい実力をもって装具へと進化させてくれる元『豪炎』のとこの鍛冶師たちを中心に、他の迷宮都市には無い魅力的な面がある。
多種多様な種族を積極的に受け入れると公言しているところも、様々な冒険者パーティーを街に呼び寄せる一員になってくれているはずだ。
「ガラクシアの力で洗脳人間たちに、かなり宣伝の旅に出てもらってるしな」
「確かに~♪ 今はどこらへんで宣伝してるんだろうね?」
「小さいことの積み重ねだよなぁ……もちろんダンジョン構造にだって気合入れてるしな」
正直地下7Fまで突破されて、マスティマたちがやられてしまったら『大罪』の効果でコアからの復活ができないので、なるべく地下6Fまでにしてもらえるような難易度にはしてある。
俺が他の魔王と大きく違うところはDEの貯金量にあると思う。
基本的にGランクの魔物たちと罠の再設置にしかダンジョンでのDE消費は基本的に無いため、毎日恐ろしい勢いでDEが貯まっていくのが現状だ。
そこで他ダンジョンでは最奥でしか設置しないような宝箱を序盤に忍び込ませておくことで、低階層でレアアイテムが手に入るダンジョンという看板を立てることに成功したのだ。
かなりDEの無駄遣いかもしれないが、それほどDEを使わない俺からすれば、その程度の出費で冒険者がたくさん来てくれるなら安い話だ。
「イブリース倒したら凄い物手に入るってアークでは有名な話だもんね♪」
「他ダンジョンでは相当苦労しなきゃ手に入らない物が、割と低階層で手に入るチャンスがあるんだ。若い冒険者パーティーからすれば、一気に飛躍できるチャンスになるからな」
「なんか最近の若いもんは、すぐ楽したがる~♪ とか言いながら設置してたもんね!」
「そんなルンルンで設置してなかった気がするんだが……」
少し頑張れば、他の冒険者が苦労した部分をスキップして何かしら手に入るという誘惑は多くの若者をアークに呼び寄せ、レーラズやルジストルのおかげで冒険者にとっても環境の良いアークを気に入り、拠点にしてくれるという流れが1番多いと思う。
ダンジョンを完全攻略してやろうという冒険者を最近では増えてきたものだが、きっと今いる冒険者たちのレベルでは一生かけても不可能だろうから、その熱を無くさないままどうにか頑張ってほしい。
メルとレーラズのおかげで治安も良く、大抵のことは問題が起きそうになる前に潰せるのも、平和な迷宮都市として磨きを掛けれている要因の1つであろう。
「カノンたちが来てからは……もう凄いことになってるからな」
「さっすが元最強の冒険者パーティー♪」
カノン・アルバス・ソラ、この3人がアークを拠点にしているという話だけで、大量の人がアークに雪崩れ込んできている。
冒険者や商人、3人が拠点にしていることを深読みした様々な人間たちなど溢れ出ている。
3人も冒険者業というよりは、完全な広報担当のような感じで精力的に頑張ってくれている。
特にカノンは、さすがという感じで演奏会をやりますよと宣伝しただけで世界中から人が集まるという少し怖いレベルにまで達している。
「後あれだな……イブリースと海賊スケルトンの経験値がかなり美味しいらしいな」
「経験値ってのはマスターでも弄れないもんね~♪ ラッキーってやつだね!」
「レベル上げで海賊スケルトン狩りってのも行われてるようだしな。冒険者的にはありがたい話なんだろう」
色々調べた結果、最近の冒険者やプレイヤーが求めるのは『レアアイテムドロップの有無』『レベル上げ効率』『迷宮都市の環境』の3要素が良ければ、例え帝国果てにあるようなアークにでも喜んできてくれるということだ。
特にレアアイテムはかなり冒険者界隈では重要なようで、いかに楽してステップアップするかに血眼になっているような気がするな。
特にプレイヤーの多くは病気なんじゃないかってくらい、序盤で他プレイヤーにどうにかして優位になりたいのか、アイテムと経験値効率に拘っている印象がある。
誰かにマウントをとらないと死亡しちゃうんじゃないかなってくらい面白いプレイヤー集団も実際にいたし、色んな方法を試して裏道がないかと探す者も多かった。
「経験値は想定外のことだが、レアアイテム作戦は想像以上の大成功で嬉しいもんだな。レアアイテムって言っても、イブリースを倒せるレベルからしたら破格なだけで、そこまでDE使わなくて良いのがありがたい」
「宝箱の中身はランダムだから、何回も何回も挑んで頑張ってるよね♪ たまにイブリース強くして悪戯しちゃうけど」
「まぁ……100%勝てるって思わせないのも大事かもしれないな」
リトスやガラクシアが気まぐれでイブリースを強化バフして、全滅していった冒険者たちを何度か見てきたが、冒険者たちからしたらたまったもんじゃないだろうな。
多くの冒険者やプレイヤーがダンジョンに来てくれるおかげで、俺はコアを弄るのに忙しいけど、さすがに慣れてきた。
最初は見知らぬスキルなんかは全部メモするのに大変だったけれど、今では見慣れた能力ばかりだから、たまにボーっと観戦してしまっていることもあるほどだ。
「……というかウチのダンジョンが人気の理由……絶対知ってて聞いただろ?」
「ダンジョンのことを楽しそうに話をするマスター大好きなんだもん♪」
「……あざっす」
今日も可愛い配下に弄られながら、魔王として一生懸命に活動する楽しい日々を過ごすのであった。
めでたし、めでたし。
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