外伝 やる時はやるって『本当』?
「これだけあると逆に目が疲れる気がするけど……」
「そうですか~? とっても綺麗ですよ♪」
王国領地にある有名らしき巨大な花畑。
魔物も多く生息しており、とても希少な花から、よくみる花まで様々な花が咲いている場所。
ウチのレーラズに強請られて2人で来てみたものの、想像以上のカラフルさに少し引いてしまっている自分がいた。
花の種類は詳しくないし、色んな色の花が咲いているせいか視覚的情報が多すぎて疲れてきそうだ。
「王国の隅にこんな面白い場所があるなんてな……希少な花を求めて冒険者が来そうだが、生息する魔物が面倒なのが多すぎて寄り付かない感じだな」
「どの子も毒持ちだったり、状態異常スキルを主とした子たちばかりですもんね」
「……そんな中を堂々と歩いているのに1匹も近寄ってこないのを見ると、レーラズの圧の強さを感じるぞ」
「せっかくのデートを邪魔されるのは嫌ですからね~♪」
圧をかけているのを否定しないってことは、この花畑に細工を仕掛けているってことなんだろう……普段は引きこもってるけど、やはり『
わざわざこんなところまで来た理由は教えてもらってないけど、見た感じ楽しそうだから良いってことにしておこう。
「アーク近辺から出るの初じゃないか?」
「……そうですねぇ~……今回は特別でしたけど、普段は出たいなんて思いませんから」
「まぁレーラズがどっしりと守ってくれてるから、好き放題できてて助かってるから良いんだけどな」
「まぁ果樹園まで来られたら本来はダメなんですけどねぇ♪」
「普通に正論で返されるとは……」
「アークが落ちて、ダンジョンも9割落ちた時は、あらゆる壁や地面から致死毒が噴き出るようにしてあるので安心して大丈夫ですよ~♪」
「………初耳だし、安心できる要素無いけど大丈夫なのか?」
「ちゃんとウロボロスに協力してもらってイデアでも嫌がるような毒だから安心ですよ♪」
「………いつの間に?」
「冗談です♪」
レーラズには言わないけど、めっちゃ内心震えたのは内緒だ。
最近かどうかは、なんとも言えないけど『
メルやシャンカラですから平気で肝が冷える冗談を飛ばしてくるから、そろそろ何も信用の出来ない身体にされてしまいそうで恐ろしい。
でも土から致死量の毒を噴き出して殺すっていうのは、なかなか面白い発想だ。ウロボロスとレーラズが時間をかければできるはずなので、機会があればというか今後レーラズがやる気になったら試してみることにしよう。
「……気配がするな」
「冒険者が1人でお花を採取しに来ているようですね」
「……なんか雰囲気違うな」
「ルジストルの情報によると、『チート』っていう凄い能力を持ったプレイヤーさんらしいですよ」
「……大丈夫なのか?」
「何やら私たちよりも凄い自然回復力を持ったプレイヤーみたいで、不死身なんて言われてるようなこと言ってましたね~♪」
「実は今回の目的はそのプレイヤーだったりするのか?」
「目的の1つですね……えいっ♪」
――ゴゴゴゴゴゴゴッ!
レーラズが片足で地面を大きく踏み鳴らす。
花畑が大きく揺れる。立っていられないほどではないが、かなり動きが制限されるレベルの振動が発生している。
何やら不死身の能力を持ったプレイヤーがいるらしき場所から、微かな悲鳴と巨大な植物の蔦が天に昇るように生えてきているのが見える。
「私たちよりも回復力がある存在と言うのは珍しいと思ったので、見たことの無いお花を採って帰るついでに、1つ実験していきますね~♪」
「……可愛らしい笑顔から、とんでもなくヤバそうな雰囲気が漂ってるぞ」
巨大な蔦が生えてきていた場所まで行くと、そこには何かを封じ込めるかのように複雑に絡み合った蔦の集合地があった。
きっとこの場所に不死身のプレイヤーとやらが捕獲されているんだろう。
そして何やら紫色の煙が出てきているが、一体何の実験をしてるんだろうか?
「やる気を出して、このチャンスに色んな毒の効力を試してます♪ せっかく不死身って言うので試すチャンスだと思ったんですよねぇ~♪」
「……やる気をだすスイッチが毒実験というところに狂気を感じるんだが……」
「私が一々反応しなくても、アークの作物たちを守ってくれて、手をだしたおバカさんをギリギリまで苦しませてから殺せるような毒を作ろうかなと♪」
(……『
お昼寝の時間が削られるのは嫌だと言っていたのは知っているが、悪さする者をギリギリまで苦しませてから殺すという発想が出てくるあたり、容赦の無い『
戦う機会が少ないレーラズだけれど、こういった形でアークと『罪の牢獄』を守ることをしっかり考えてくれているところに少し感動する。
どういった原理で不死身とやらが産まれたかは知らんけど、今回は運が悪かったということでレーラズの実験台になってもらうことにしよう。
きっと死ぬわけじゃなくて、永遠と色んな毒の実験台になるだけだから、レーラズが飽きたときには解放されると思うので、そのときには無事元の世界に帰れるように少しくらい選別をあげてもいいのかもしれないな。
「肌と骨が溶けかけても再生する、脳の機能が停止しても復活する……これは面白そうですね♪」
「ちなみにこの花畑で試し続けるのか?」
「はい♪ ちゃんと結界も張っておきますし、果樹園からでも毒の種類を変えて結果が解るようにしておきますよ♪」
「最近誰がどこまでやってるか全然把握できてないんだよなぁ~」
「何から何まで把握しようとすると疲れちゃいますよ♪ みんなマスターのためだけにやってることなので心配無しですよ~!」
「ありがたいもんだな。次はお花の採取か?」
「ゆっくりお散歩しながら♪」
果樹園では一緒にお昼寝していることが多いから、こうやって活動的なレーラズはなかなかに新鮮さがある。
プレイヤーを毒実験のために捕獲するってとこは、なかなかにヤバいことではあるが、わざわざ果樹園から出るほどに必要なことだったと考えると、アークを想ってくれているところに感動してしまう。
プレイヤー側からしたら、突然現れて実験体として攫って行くという、とんでもない魔王になってしまうが、そこは互いに生きるために必死と言うことで仕方ないってことにしといてほしいもんだ。
「ちなみに『チート』ってどういう意味なんだろうか?」
「私たちが知らない言葉をたくさん知っているマスターでも、知らない言葉があるんですね」
「なんか聞いたことがあるような気がするんだが……パッと出てこないな」
「じゃ~そのうち思い出せますね♪」
「そうだな……せっかくに日の光だし、存分に浴びてから帰るとするか」
「は~い♪」
レーラズが楽しそうに様々な花を観賞するのを眺めながら、まだまだ知らないことがたくさんあるもんだな~と感じる今日この頃だった。
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