外伝 『暴食』は止まらない
『暴食』を司る『罪の牢獄』のアイドル。
本来は自分が気に入った者に加護を与えたり、幸運をもたらすような魔物として知られている存在らしいカーバンクル。
ウチでは、とにかく好奇心旺盛・天真爛漫・酒池肉林……だけど一々可愛いみたいbなキャラクターで可愛がられている存在だ。
とにかくお腹が空いているようで色々なエリアをウロチョロしたり、レーラズのところで1日中果物を頬張っている日もあるくらいだ。
「けどこの力は本当に魅力的だよなぁ……バビロンのスケルトン軍団とは違う攻め方ができる」
俺は今、アイドルことリトスを連れて、とあるダンジョンにカチコミに来ている。
アークにちょっかいをだしてきたので、一度くらい見逃しても良いのではという声もあがっていたが、こういう輩は徹底的に滅ぼしておくに限ると言うルジストル先生のストレートな意見で滅殺することとなった。
王国領土東に存在している、このダンジョンの主は『鋼盾の魔王ガダン』。
見た感じの特徴は『銅の魔王』と同じような系統で、鋼で守りに特化した装備を魔物に纏わせることができるといった感じで、俺より少し先輩魔王でBランクの魔名だそうだ。
リトスがお腹が空いて魔力を求めており、普段は外にそこまで出たがりはしないが、今回は食事をしにいくとのことで頑張ってもらっている。
「『暴食』の蠅で作り出す『
魔力を吸い尽くす蠅の集合体である『
人間の騎士のように形作られており、分裂しないと動きは遅いのだが、物理攻撃はそこまで効かない上に、近づけば魔力を吸いあげるという恐ろしい性能をした軍団だ。
――ドガァァンッ!
しかも魔力をある程度吸った後、衝撃を与えれば『
スケルトンと違って機動力は無いが、空を飛べるし、消し炭にされても蠅自体はリトスがほぼ無限に製造できるので絶え間なく攻め込むことができる。
「立派な鉄のお城が真っ黒で埋め尽くされて……少し気持ち悪いな」
「きゅっきゅ~♪」
大将のリトスは『
多種多様な魔物に鋼の武装を纏わせ、俺たちを迎え撃ってくれた『鋼盾の魔王』も今頃絶望しているだろう。
「やろうと思えば瞬殺コースも行けたんだろうけど……綺麗に吸い尽くしてからトドメを刺すつもりだな」
「きゅっきゅ~~♪」
全てのDEを魔物に使わせた上で、出てき全ての魔物の魔力を吸い尽くしてから魔王にトドメを刺すという残酷なプランを楽しそうに実行しようとする『罪の牢獄』のアイドル。
『暴食』は本当に他魔物と連携しづらい『大罪』だけど、狩れる相手から吸えるだけ魔力を吸い尽くしてから、リトスの能力で回復アイテムに変えられるから、とても器用な『大罪』でもあるんだよな…。
しかも、蠅の無限製造以外にも『四凶』っていうステータスに秀でたフィジカルな召喚獣たちもいる。
「『四凶』の4体もどこかでしっかりと能力把握しておかないとな」
リトスは模擬戦などといったものには参加しないタイプなので、コアで見れる分には知っているんだけど、詳しい技だったり、能力の応用幅はまだまだ分からないことが多いのが事実だ。
できれば『極回復魔導』というリトスのスキル内では目立たないけど、とんでもなく燃費は悪いけど、便利な能力があるんだから色々試させてほしいんだが…。
「常に満腹でいたいから魔力を使いたくないという考え方も分からんでもないけどな」
俺もDEはどんなときでも節約を心掛けているし、DEの消費を抑えるために罠を手作りするくらいなので、なんとなくではあるが使いたくない症候群は分かっているつもりだ。
まぁリトス的には本番以外で浪費するつもりが無いってのもあるんだろうけど…。
「物理攻撃が効きにくく……近づけば魔力吸収+大爆発、距離をとればバラバラになって魔力を吸いに飛んでくる。……リスクのない数の暴力、やっぱり戦争は数だよ。DEで『
過去の魔王戦争で『皇龍』の映像を観たことがあるが、実況無しであっても圧巻の魔王戦争だった。
大量の龍の大群が空から敵を圧倒する姿は今でも鮮明に覚えている。
俺の見立てでは、龍を無尽蔵に生み出せるような魔物がいるんじゃないかと踏んでいる。
圧倒的な力と数の暴力……これが今の魔王界の頂点。
「スケルトンにスライムや蠅……世間じゃ馬鹿にされた存在かもしれんが、俺はこの魔物たちで魔王界を登らせてもらうさ」
「きゅ~~♪」
「おっと」
考え事をしながら、蠅の軍団がダンジョンを貪り尽くす様を観戦していたら、リトスが跳びこんで来る。
この可愛さに騙されてしまいそうになるが、なんとも惨たらしい攻め方を実行している張本人である。
魔力を吸われることで『鋼盾』の魔物たちは干からびているのがなんともエグイ光景だ。
魔力量が少ない魔物ならば一瞬で塵になってしまうが、何かしらの術で魔力吸収を防ぐことができれば、爆発するだけの蠅の塊なので対処は難しくない。
「騎士の形じゃなくても、小さい球体くらいで影に潜んで……一斉に爆発してもらうってのも面白い戦術だよなぁ」
どうにも爆発に対して思い入れが強すぎるかもしれないが、不意打ち+広範囲+威力が高いってのはロマンだと思うんだよな。
刺激を与えられないように配置さえできれば、自在に移動させられる地雷の完成だ。
「最悪リトスには『
「きゅ~~♪」
ポラールやシャンカラもヤバい認定をしているリトスの最終兵器。
俺も詳しいことはまだ把握できていないが、あの2人がヤバいっていうんだから相当の召喚獣なんだろう。
ちなみに五右衛門が実験体になった結果死にかけたらしく、そこからは禁じ手のようになっているようだ。
いつか奥の手として『
「せっかくいるのに、まったく使われないのはあれだから、どこかしらで俺も直接見ておきたいところではあるがな」
「きゅ~」
リトスが眠そうな声を出したので、蠅軍団の動きを見てみると、そろそろダンジョンの全てを貪り尽くしてしまいそうだ。
『鋼盾』の魔王と顔を合わせず、言葉も交わせないのはもったいない気もするが、これも運命ということで俺の糧になってもらうとしよう。
――ゴゴゴゴゴゴゴッ
立派なお城だったものが大きく揺れる。
『
なかなかリトスと2人で何かをすることって滅多にないから良い時間になったな。
「『鋼盾』……また1つ学ばせてもらった。ありがとう」
また魔王を1体倒すことができた。
数年先輩の魔王を倒したことで、また1つ俺の中の疑惑を確かなものにしてくれた。
それと『銅』の武装に関して、『鋼盾』が使用していた武装を真似させてもらうとしよう。
「ご苦労様リトス……帰るとするか」
「きゅっきゅ~~♪」
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