外伝 便利すぎる『回帰』
『回帰』の大罪を司る神蛇ヨルムンガンド。
授けた真名はウロボロスといい、『罪の牢獄』においての超重要な働き手として過労死してしまうんではないかと思うくらい頑張ってくれている魔物だ。
『永遠の牢獄』のおかげで阻害されることが基本的にない、唯一無二の極時空間魔導でどこでも行かせてくれるスーパーマンのようなことをしてもらっている。
まだウロボロスのスキル1つ1つがどれだけのことができるか把握し切れていないのに、この働きようなので本当に助かりまくっている。
『罪の牢獄』の魔物だけではなく、ビエルサやカノンたちの運び屋にもなってくれているウロボロスだが、今日は緊急時以外はダンジョンでお休みしてもらおうと言う日で、俺と一緒にエリア『永久天地』で優雅にくつろいでいる最中だ。
「本当に大きいよな……いつもは裂け目からしか会わないから、こうして全身をまじまじと見ると規格外ってのがよく解るよ」
とにかく長く大きい身体をしているウロボロス。
これで小回りが効かないと思いきや、どこでも行けてしまう極時空間魔導を使用できてしまうので、デザイアと同じく神出鬼没なのが面白い。
『海賊』との魔王戦争でも見せてくれたように、再生封じの強力な毒ブレスを中心とした他の面子に無い攻撃ができるのも強みだ。
「たださすが『
『天地を壊す者』が一癖強すぎるもので、環境恩恵を自身以外に受けられなくし、『支配者』『使い手』『加護』の力を消し去ってしまうというなかなかに影響力の大きいデメリット効果だ。
しかも自分のLv以下にステータス減少効果までついている。
環境恩恵を大いに利用する五右衛門やメル、支配者効果のあるシンラなんかも相性が良くない。
ステータスデバフは各自何かしら無効にできそうな力はあるけど、この世界はLvで能力の優先順位も変わってくるからウロボロスのデバフを無効化できないのもいるから難しいところだ。
「戦闘でも偵察でも……どんな役割でも最高レベルの活躍をしてくれるからデメリット効果なんて気にならないんだけどな……さすがウロボロスだ」
俺の言葉に反応するわけじゃないけれど、シンラと同じで話はしっかり聞いていてくれているだろうから、日頃の感謝をこめて巨大な頭を撫でておく。
俺が好き放題やれているのはウロボロスとデザイアが時間や場所に、ほとんど関係なく移動することができ、事前に知られること無く奇襲することが可能になったことが大半を占めているといっても過言ではない。
もちろん、少ない人数で奇襲を成功できるだけの単体戦闘力が高すぎる面子が居ての話ではあるんだけどな。
「もし俺が残虐非道な魔王だったら、落としたい街の水源にウロボロスの毒流しとく作戦をやりまくってそうだな」
接種するあらゆる物にウロボロスの毒を怪しまれない程度に量を忍び込ませて毒殺するという作戦を最初に思い浮かんだのだが、被害が大きすぎるので、さすがにやめておいた。
ウロボロスの毒を摂取してしまえば基本的に死亡確定みたいなものなので、住民全員全滅することになってしまったり、動物たちも死んでいってしまう可能性が大きい。この作戦をやっていけば廃街を作り続けることになりそうだ。
「巻き戻りの大罪『
ウロボロスは闘技場が小さい関係上、基本的に『罪の牢獄』内模擬戦には参戦しないので、能力を使用する機会が少ない。
極時空間魔導は常日頃使っていただいているのだが、『
指定した何かの時を巻き戻す能力。
この言葉だけで強力なのがわかる。生物に全力でかければどんどん若返っていくことだろう。もちろん記憶等も巻き戻るので、不老不死みたいなことはできない。
基本的には敵の攻撃を巻き戻して消滅させたり、敵に壊された物を元通りに戻したりすることを俺は想定している。
「錬金術も見ることないよなぁ……アークに監視用ゴーレムを配置してくれた時くらいから見ていないな」
まず錬金術ってのを理解出来ていないってのが大きいんだが、ウロボロスの錬金術スキルも有効活用させてあげられていない。
イデアやデザイアに頼まれて色々作っているらしいが、あんまり報告を受けていないので何をやっているか知らないのだ。
ただピケルさんを上回るようなゴーレムだったり人造の何かを、素材が集まれてば創ることができるってことだけは忘れないでおこう。
「可能性の塊すぎるだろ……バビロン・メル・イデア・デザイア・リトス・ウロボロス・ポラールがそれぞれ戦力を生み出せるから物量作戦が多面的に展開できるのは大きいよなぁ」
それぞれ単体で相手を完封できるような能力を持っているから、バビロンとリトス以外はやらないけれど、魔力の限り戦力を生み出せるのは俺としては本当にありがたい話だ。
強化スケルトン軍団で戦えるバビロン。
分裂する上に姿形を自在に変形させることができるスライム軍団のメル。
オリジナルよりも劣ってしまうが多種多様な偽魔物を創り出せるイデア。
一度に出せる数に限りはあるが、やる気と想像力次第で何だって生み出せるデザイア。
無限に湧き出る蠅、そして戦闘力の高い四凶で軍を構成できるリトス。
素材が揃っていれば、いくらでも錬金術で戦力を製造できるウロボロス。
実は様々な悪魔を呼ぶことができちゃったり、地獄によっては魔物がでてくるポラール。
こうして考えると、かなり多面作戦を実行できるだけの戦力が揃っている。
各々の悪影響アビリティに目を瞑れば、ここまで充実してい魔王は実は少ないんじゃないか?
「そして……この軍団を自在に配置できるのはウロボロスのおかげ……本当頼りになるよ、いつもありがとな」
――ゴゴゴゴッ
いつもフワフワと漂ってくれているウロボロスが少しだけ揺れてくれる。
きっとウロボロスなりの感情表現なんだろう。シンラといいウロボロスといい、このあまり語らない感じがなかなか可愛い。
『
こうやって触れ合っていると新しい発見が次々とでてくるから、やっぱりこういった時間はどんどんとっていくべきだなと改めて思う。
まぁ……俺よりウロボロスのが忙しいから、そこまで会えない可能性があるのだが…。
「一般市民にどうにか危害を加えないことを前提に、各魔物をそれぞれに指揮してもらって、帝都を大群で取り囲めば、戦わずして降参してくれたりしないものだろうか?」
ウロボロス・デザイア・ポラールが協力して転移能力をフル活動すればやれるだろうか?
さすがに帝国騎士団と冒険者が抵抗してくるよな……そうなれば帝都はボロボロになりかねないし、多くの命が失われ、終わる頃には帝都に暮らす人口が減ってましたってことになりかねないもんな。
「力があっても扱う者が悪ければ……ただの飾りにしかならんな……精進しなきゃな」
俺はゆったりと宙を漂うウロボロスに寝っ転がりながら、気が済むまで悪巧みをすることにした。
みんなの力を最大限に活かせるような最高の悪巧みを…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます