外伝 『虚飾』の喜び
――帝国領土南東 とある山
アークも大きくなってきて、帝国内でもそれなりに名前が有名な迷宮都市の1つとして数えられるようになってきた。
レーラズが日々力を注ぎ込んでくれている農作物を中心に、他の街には無い特産品を数多く生みだすことができていることがアークが大きくなっている1番のポイントとも言えるだろう。
アークに観光に来た人、ダンジョン目当てで来た冒険者がアーク産のものに触れてくれることで各地に広め、そして各地から欲しいと言う声をもらう。
まだ1年も経過していない迷宮都市にしては都合が良すぎるほどトントン拍子に事が進んでいると自分でも感じる。
しかし、出過ぎた釘は打ちたくなる性分の奴が世の中には多いようで、数々の邪魔者たちはアークの行く手を阻もうとしてくる。
「王国へのルートで待ち構えて襲う山賊らしき集団ね……被害が大きくなってくれば帝国騎士が動くんだろうが、1回やるだけで滅ぼされるってことを、こういう輩たちには広めておくに限ると思わんもんかな?」
「一度甘い蜜を吸ってしまえば戻れぬ愚かな者どもが集まった結果でしょう! 我が無敵の軍勢の餌にしてくれましょうぞ!」
少し時間ができたのでアークから王国に行くルートに現れたという山賊をウロボロスに探ってもらい、そのままバビロンを引き連れて滅ぼしておこうという流れである。
バビロンには『罪の牢獄』名物である、『強化蘇生』によって超強化された銅の軽装備を着用したスケルトン軍団を連れてきて貰っている。
Sランクの魔物と渡り合えるステータス、バビロンにより統制された圧巻の連携力、そして『強化蘇生』で消し炭にでもされない限り永遠に蘇り続ける持久力! これだけの性能しながらDE消費が10とかいう最小値。
Gランクしかコアから召喚できない俺ができる最強物量戦術。
このスケルトンにデザイアかニャルが爆発機能をつけた作戦も行うことができるので、正直俺の中の基本戦術の1つになっている感はある。
「まぁ……朝のおはようってことでウチのスケルトンに叩き起こしてもらうとしようか」
「そのまま永久の眠りというわけですな! さすが我が王!」
「ウロボロスッ! 頼んだ!」
――ゴゴゴゴゴゴゴッ!
朝焼けが見え始めた静かな山に不自然な地鳴り音が鳴り響く。
ウロボロスが山に空いている巨大な洞窟付近に3つの裂け目を作り出し、そこから強化スケルトンの群れが勢いよく突っ込んでいく。
見張りをしていた数人の山賊らしき人間たちは休んでいる仲間に知らせる鐘を鳴らす間もなく、恐怖と同時にスケルトンの群れに轢き殺されていった。
そして聞こえてくる怒号と悲鳴の数々。自分たちは奇襲で襲って成果をあげている立場なのに、奇襲に対する耐性が弱すぎるだろと心の中で思わず思ってしまうが、あまりにも哀れなので口に出すのはやめておいてやろう。
「良い武具がありましたら持ち帰らせるとしましょう! 我が軍の戦力強化の礎となるが良い!」
「やっぱ自分が敵前に行ってるときより……後方で騒いでたほうが絵になるな、バビロンは」
「我はスケルトンの王ですからな! 我が背中を見せるため前線にでることもありますが、やはり我が後方で指揮をとるほうが士気もあがるものでしょうぞ!」
ただ全速前進させているだけではあるが、スケルトンが少しでも減った気配がすれば『強化蘇生』をすぐさまかけるので注意は払っているんだろう。
俺が自在に扱えるなら個人的に1番面白そうな大罪である『
バビロンは『
竜の形をした魔力を作り出し『
「我が王よ……敵の頭らしき者を討ち取りましたぞ? 殺し損ねがいないか探索中なのでしばしお待ち頂きたい」
「時間は別に気にしてないさ……なんか面白そうな物あったか?」
「捕えられておりました人間やら亜人……そこそこの武具と言ったところになりますな」
「……捕えられた者たちはアークに運ぶか……ウロボロス頼んだ!」
最高の運び屋ウロボロス様に今日もたくさん働いていただく。
本当に何でもやってくれるので足向けて寝れないおころか貢物を大量に用意しないといけないくらい働いてもらっている。
山賊連中の捕虜になっていた者たちはアークで一旦休んでもらい、今後どうしていくか選択してもらうことにしよう。
故郷に帰りたい者もいるだろうから、できるだけ自己選択できる状態まで回復してもらわないとな。こういった経験するとトラウマになって精神壊れる者もいるって聞くし…。
「バビロンもありがとな……わざわざこんなことに付き合わせて」
「これも我らには必要なことでしょう! 国は民の安全無くして成り立たぬもの!」
「さすが……俺がのんびりしててもバビロンがいればアークは良い感じになりそうだな」
「何を言われるやら、我らは王のために働くことが喜びであるからゆえ、王無くして動くことなどありませぬな」
「ひたすら長生きしないとな」
「満足の行くような道を歩まれれば年数など微々たるもの!」
「なるほど……勉強になるよ」
いつでもハイテンションで色々避けられそうなキャラだけど、実は常識的なところもあるので話をしているとためになることが多い。
アヴァロンとも同じスケルトンの進化型なだけあって、意思疎通しているようで面白い会話をしているようだし、コミュ力ってのが高いとルジストルが言っていた気がする。
アークの名が広まればそれだけ、何かしらの理由で狙ってくる輩が増えるだろう。
それが今回の山賊のような連中ならば問題はあまり無いのだが、魔王関係だったり国からの雇われ者だとしたら面倒な話になってしまう。
「魔王からの手先ってパターンが一番面倒だよな……ただの偵察なら良いんだけど」
「出る杭を打とうとする者はおるでしょうな! しかし、真なる高みに昇れば打とうとする者も現れぬものでしょう!」
「なるほどな……クラウスさんたちみたいなことか」
「有無を言わさぬ力……隙の無い統治、堂々とした姿勢……我が王がこれらを得るのも時間の問題でしょう!」
「堂々した姿勢でバビロンに勝る王はいないかもしれんな」
「我はスケルトンを束ねる王ッ! 配下に誇れるような王でなくては示しがつきませぬのでな」
出る言葉が全部カッコいいのは、さすがバビロンと言ったところだ。
ウロボロスが捕虜となっていた者たちを一斉にアークへと転移させてくれている。
バビロンとの会話を続けながら流れを見守る。強化スケルトンたちもウロボロスの力で『罪の牢獄』へと戻っていき、最後に俺とバビロンも転移してもらった。
やっぱ戦争は数こそが正義なんだよなァ! DE10で持続力と地上機動力が高いとか……スケルトン最高ッ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます