エピローグ 面白い『噂』
『水の魔王』にアイシャが勝利してから1カ月。
俺の方はプレイヤーの動向をしっかり見張ることや、日に日に平均ランクが少しずつ上がってきているダンジョン攻略者の対応をするくらいの平和な日々を送っている。
ピケルさんからはフォルカの貸し出し期間を追加で2カ月とお願いされたので、相当研究をしているんだろう。
アイシャの方は、予想はしていたけれど仕掛けられているようで、冒険者だったりスパイ魔物だったりと忙しいが、遥かに高まったアイシャ本体のスペックもあって退けている。
ドラコーンも戦う機会が多くなって、どんどんLvが上がっているようだ。
「マスター、僕暇してるよ?」
「……ミネルヴァたちが来るまで、一緒に誰かの魔王戦争みるか?」
「魔王戦争観ても面白くないから、僕と散歩に行こっ」
コアルームの番人で『罪の牢獄』最後の砦でもあるハクによる暇攻撃。
まぁコアルームまで辿り着ける奴なんていないだろうという、他の『
一応吸血鬼ってのもあって昼間お昼寝するのが好きなハクだけど、散歩に行くのも好きなようで、特にウロボロスのいる階層やシャンカラのいる自然溢れる心地の良い階層へと散歩へ行くことが多い。
この後ミネルヴァ・カノン・アルバスの3人から面白い情報を掴んだとのことで話を聞く予定なんだけど、少しくらいならハクに付き合っても良いか。
「じゃ~、ウロボロスのとこ行くか」
「うん♪」
ハクを連れてウロボロスのいる『永久天地』へとお散歩しにいくことにした。
◇
――『罪の牢獄』 居住区 会議室
ハクとの楽しい散歩を終えると、ハクはご機嫌でお昼寝を始めたので、当初から予定してあった3人の話を聞くために、会議室へと来てもらっている。
ちなみにウロボロス大先生のおかげで、どこの街にいようと迎えに行けるので、まさしくやりたい放題できるから楽だ。
3人とも同じ情報らしく、それなりに俺が興味を持ちそうな話だそうなので、少し楽しみにしている。
「アークに若者が見学に来るみたいだよ」
「もっと分かりやすく言ってくれ、ミネルヴァ」
「魔王さんが気になっている学園から、超有望株たちがアークを見に来るんだって」
「学園のカリキュラムの一環だ。人材募集をかけている街の中から生徒が興味を持ったところに見学に行くというものだ」
確かに興味深い話だ。
ルジストルとリーナ、そして稀にミネルヴァがアークを回してくれているけれど、将来を担える人間側の若い人材が欲しかった俺からすれば、逃したくないチャンスだ。
しかも超有望株と言うくらいだから、それなりに名のある若者がアークに来てくれると言うことなんだろう。
「1人は私たちの元同僚なんだけどね! 誘ったら私たちに会いに来るんだって!」
「そういえば『
「学園の2年生で、2年で1番優秀と呼べるようなパーティーで見学に来るそうだ」
『
「そのグループと一緒に、『追放』された勇者の1人もくるよ」
「……そんな奴がいるのか?」
そういえば1人だけ追い出された勇者がいるとか何とか聞いたことあるような気がする。
もしそいつが勇者としての役割を果たそうとするならば覚悟を決めなければいけない。
「残念ながら勇者としての役割を捨てて、世界を巡っている男のようだ」
「本当にそうならば良いけどな……でも追放されたってのが気になるな」
「もし興味があるなら本人に接触してみればいい」
元『
俺はアークにいるのならば、どの種族も楽しく暮らしてほしいからな。もしアークに来てくれるならば大歓迎だし、そう思ってもらえるように作戦を練らなきゃいけないな。
「魔王はなかなか忙しいもんだからな」
「私とアルバスに任せておいてよ! これでも有名人なんだからっ!」
「私は行方不明者だから、また諜報活動に戻ろうかな」
若者たちがアークを見学しに来てくれる期間はカノンとアルバスが対応してくれるようだ。知名度も実力も人間界ではトップクラスと言える2人が勧誘してくれるならば、俺がやるよりも上手く行くだろう。
学園からアークに来てくれるまでの2カ月間、俺も出来るだけアーク発展のために動いて行かなきゃな。
ウロボロスのおかげで各地に自由に動けるようになったので、色んな所を周って見て、差別や迫害に苦しんでいるような者達に声をかけに行ってみる計画を本格的に考えてみようとも思っている。
「強くもなりたいし、アークを大きくもしたいし、やりたいことは山積みだな」
「新たに聖国で生まれた3人の勇者の情報は出回らないね」
「歴代最強候補という話は聞いたがな」
「へぇ~……」
歴代最強クラスってことは、今いる『神速刃・暁蓮』『救世の賢者・坂神雫』たちよりも強いってことか。
能力が規格外なのか、元から何か違うものを持っていたかは分からないけど、今まで以上に警戒しなくちゃいけないってことだな。
ルーキー期間が終わるまでは、先輩魔王から挑まれることは無いから、色々調べるなら今しかないから、どうにか動き出さないといけない。
「3人とも大丈夫だと思うけど、ヤバそうな魔王に目を付けられるかもしれないから、何かあったら教えてくれ」
「ヤバそうな魔王相手に逆に大丈夫なのか?」
「誰だろうと身内に手を出す奴には容赦しない」
ここにいない「紅蓮の蝶々」にビエルサ、そして3人は、アークのために頑張ってくれている人は俺の大事な仲間だ。どの魔王が挑んでこようが、失うわけにはいかないし、舐められているようじゃ魔王としてもまだまだって思われてるから、見せつけてやらないといけない。
「じゃぁ学園から来る若者たちを調べながら、2カ月間しっかり準備をしよう」
「頑張るぞー!」
カノンだけノリ良く返事をしてくれる。
アークの将来のためにも、2カ月後は何があるか分からないけど、アークの魅力を上手く伝えていけるよう頑張るようにしないとな。
マスティマたちが産まれてきてくれたおかげで判明したこともある。
俺に配合に関することで嘘知識を教え込んできた訳を含めて色々調べなきゃいけないこともあるから忙しくなりそうだ。
「まさかコアをあんな形で弄れるなんてな……あの配置は正解だったみたいだ」
次から次へと判明する問題に上手く対処するために頑張って悪巧みをしていかないとな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます