第10話 強固な『橋』を渡るには
聖国を震撼させた魔王連合軍の侵攻はシャンカラによって大半が焼き尽くされ、参加していた11体の魔王のうち、4体が東雲拓真、5体をシャンカラが討伐したことにより騒動は治まった。
聖国各地は甚大な被害が出たのは言うまでも無く、勇者坂神雫が命を落とし、さらに状況は悪くなってしまい、いつ崩れてもおかしくないという状況になってしまっている。
歴代最強勇者と呼ばれた東雲拓真は行方不明となっており、勇者が3人だけになってしまうという前代未聞の状態に陥ってしまった聖国。
今回の件で各国の魔王が活発的になったおかげで手薄になった聖国は攻め込まれずにいるので、とりあえず人間同士の争いは先の話になりそうだな。
「イデアが視てくれた東雲拓真の新能力『
能力の詳しい内容までは視れなかったみたいだが、能力名から察するに何か不都合な展開になっても東雲拓真が行きたいと思う方向へ強制的に修正させるみたいな感じの能力だろう。
『
俺の半分くらい出まかせな語りを上手く解釈してくれたようで、完全にその気になってくれた。
俺が元人間だなんて確証は無いのに、とりあえず信用はしてもらえた。
「俺と東雲拓真がこのゲームを終わらせるチャンスを得ることができた」
女神と爺さんは干渉はできないけれど、元々設定してあったものが存在しているので、そこは突破しないと2人に大きなダメージを与えることができないというのは東雲拓真とウチのポラールたちが証明してくれた。
俺は30日後に『七元徳』と魔王戦争を行って、『七元徳』の魔名を手に入れなくちゃならない。
「もう片方の『星魔元素』は正義のヒーローに任せておいて、隙があれば助っ人として乱入すればいいか……今までは適当なことばっか言って来たから癖になってそうだな」
『原初』の爺さんが良からぬことをして『星魔元素』や『皇龍』が先に動いてくる可能性もしっかり考慮しなくちゃいけないし、最悪俺以外の全ての魔王が操られて敵対してしまうような可能性もある。
だけど、そこまでの干渉能力だったり、自分たちのゲームに途中で手を加えることは嫌がると言うか、女神と爺さんの間で少なくしなくちゃいけないみたいな取り決めがあるように感じた。
俺たち2人が鍵を手にしたところで、女神と爺さんに勝てる確証なんて無いけれど、もうやるしか無いところまで来ちゃったんだな。
多くのモノを背負うってのはなかなか嫌なもんだな……坂神雫も嫌がってたけど。
「女神と爺さんは……互いの呼び出した存在が『鍵』を手に入れた状態なら倒せるとかいう設定になっている。そして女神は勇者組がいた世界線、そして爺さんはプレイヤーや予測だと記憶消された人間である同期魔王たちがいた世界線に本体か何かがいるんじゃないかと予測できるんだよな……本当に推測だけど」
この世界の2人と同じ設定で生きているのなら、元世界線の2人は、その世界線の人間だと確実に倒せないような存在になるってことだ。
こんな世界を遊び感覚で創り出すような存在だ……元世界線でも余程のヤバい奴らなんだろう。
そして今までの推測が正しければ、この世界が創られた理由が何となくだけど見えてくる。
「この世界で倒す資格を獲得させ……本体のいる世界線に送り込んで仕留める……そんな殺し合いをしている可能性まで膨らんじゃうよな」
互いには手出しができないようになっていて、互いにルールを決めた世界を創り出し、互いの世界から代表者やその他を送り込んで、『鍵』を手に入れられるように分かりやすいルートを敷いてやる。
そしてどっちかが『鍵』を持った代表者がどちらかを殺したら、世界はリセットされ、代表者は殺した存在の本体らしきもんがいる世界線に行き、本体との挑戦権を得るみたいな…。
「まぁ所詮妄想だな……全然断言できる要素が揃っていない」
もちろんこの考えを簡単に切り捨てるとは思って無いし、こういった考えで2人が動いているかもしれないって思いながら計画を立てていく。
結局ゲームって言ってたんだから、どっちかが勝つまでやるはずだから、とりあえずは行く末を見守るのかもしれない。
今回はどっちかの勝ちにしてやろうと片方にだけ肩入れするように周囲の環境を作り変えるのかもしれない。
幸い俺と東雲拓真の力が加わった存在は2人の干渉を受けないようなので、そこは安心できる。
「おかげさまでアークも無事みたいだ。ついでにリーナにも特に変化が無かった」
正直リーナがとんでもない化け物になって暴れる可能性を考慮してハクを残したのだが、さすがに考えすぎだったようだ。
今のところ各国の魔王と魔物がとっても好戦的に暴れていること以外は変わったことは無い。
『七元徳』との魔王戦争まで1カ月、同じ時期に東雲拓真が『星魔元素』を叩きに行くと言っていたので、助っ人に行くとするなら準備を同時進行で行わなきゃならない。
まず『七元徳』に勝てるかどうかが心配なんだけどな……。
「真名持ちは少ないがEXランクの数が多く、バフを多用してステータスで殴ってくる分、相手のバフを無効化したり吸収したりして戦う『
ほとんど手の内を見せていないんじゃないかと思っているので、ミカエル級の化け物が他にも潜んでいると考えよう。
最悪、真名は無いけれどミカエル自体をDEを使って大量生産している可能性も考えられる。
聖国騎士団で聖国の治安を守っている以上、魔王戦争に参加させられない戦力もいるんだろうけど、主力は全部戦争にでてくると考えたほうが良いだろう。
「そういえば3つの目の欠片を手に入れたんだっけな」
坂神雫のおかげで勇者討伐数が5人になったことで、3つ目の記憶の欠片を入手することができた。
たかが記憶の欠片如きで一人の命を奪うのはどうかと思うって人間に言われそうなもんだけど、わざわざ揃えろと言わんばかりのもんだから、この欠片ももしかしたら女神討伐の『鍵』になってるかもしれないからな。
3つ目の欠片は『この世界で方法を見つければ、俺たちにも橋を作れる』という謎めいたものだ。
何を思ってこの発言を過去の俺らしき存在がしたか分からないが、『この世界』ってのは今の俺がいる世界と考えるのが妥当だろう。
『橋』を作るというのが問題で、一体何に架ける橋かどうかってとこだが、この世界という発言と橋を合わせるならば、爺さんや女神が自由に世界を行き来していることや、プレイヤーや勇者が世界を渡っている部分を言っているんだろう。
「橋って言うんだから、プレイヤーや勇者側も一方通行じゃなくて、女神や爺さんがやっていることを言ってるんだと思うけどな」
もしそうなら、この世界で扱える力で元の世界に行けるということだ。
完全な推測ではあるが、今のところ他に浮かばないので頭の片隅に置いておくことにしよう。
残り3つ欠片が残っている。ここまで来たら『七元徳』との魔王戦争前に揃えるの方向性で動こうか。
「この世界には悪いが……俺の勝手な都合で少し荒らさせてもらう。女神と爺さんを倒しても世界が残っているなら、しっかり平和な世界にするから我慢してくれ……とりあえず帝国の魔王たちは抑えるか」
俺は残り3つの欠片を揃えるための計画を立てるため、何人かをコアで呼び出してから会議室へと向かった。
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