第3話 聖都『聖戦』の開幕
想定通りの展開になった。
聖国を拠点としている何体かの魔王たちが、勇者3人と多くの聖国騎士団員を失った聖都に対して襲撃を仕掛けている。
どれだけの魔王が襲撃に加担しているのか、まだ把握しきれていないが、魔物の数が圧巻といえるほどなので、相当な魔王が協力しているんだろう。
聖都からも公国に引きこもっている勇者以外の4人、聖国騎士団、聖国各地を拠点としている冒険者たちが様々なところで迎撃しているが、魔物の数が多すぎて苦戦しているようだ。
これ以上勇者を失う訳にはいかないだろう聖国的には冒険者を前線にだして戦うかと思ったが、予想を裏切るように最前線で暴れ回る1人の勇者がいた。
暁蓮の記憶で名前は知っていた東雲拓真とかいう異世界から来た勇者。
「マジもんの化け物だな……理解不能だ」
動きは今まで見てきたどの勇者よりもレベルが低いんだけど、何故か攻撃は当たらないし、東雲拓真の攻撃は直撃し、ほとんどの魔物が一撃で沈んでいく。
何故か魔物の大群が東雲拓真に引き込まれるような進路をとっており、聖都へ向かうはずだったのが、気付けば東雲拓真を討ち取るためにどの魔王も動いてしまっているような感じになってしまっている。
勇者にとって圧倒的なご都合の良い展開。最強勇者に引き寄せられ、次々と魔物が掃除されていく圧巻の光景。
「デザイアと一緒にイデアが覗いても、能力名は分かったけど詳しいことが解析できなかったって言ってたからな……」
あれを観たら歴代最強勇者と言われているのも納得できる。
強いというより理不尽の塊みたいなもんだが、勇者を崇める者たちからしたら神様みたいな存在だろう。
だけど、あの最強勇者さんに用があるんだよなぁ…。
まだ少ししか様子見できていないけど、色々この世界について気付いていることがありそうな感じの独り言をブツブツと言っていた気がするので、俺の予想が正しければお手紙を読んでくれているだろう。
「あの勇者は今まで見てきたどの存在よりも異質ですね」
「ポラールにそう言わせるんだから、東雲拓真ってのは確実にヤバいんだろう……俺の予想だと女神の首輪からも外れているような存在だろうな」
『原初の魔王』の思惑に沿っているかと思いきやぶっ飛んだことばかりやっているどっかの魔王様と同じような括りの臭いがする。
さすがに戦闘経験が少なそうなので、ポラールやシャンカラ、ハクあたりが戦えば問題無さそうだけど、あの規格外さは、まさしく勇者で魔王界が恐れるべき存在と言ってもいいもんだと思う。
今までの勇者が世界から期待されるほど強くなかったってこともあるけど…。
「新米勇者残りの2人はそこまで気にしなくて良さげだな……そこまで聖都から離れたところには来ないだろうし」
確認しているだけで2体の魔王を身体1つで粉砕している東雲拓真が異常なだけで、さすがの『七元徳』や女神様とやらも新米勇者に魔物の大群のど真ん中に放り投げるような真似はしないだろう。
軍の考えで言ったら、単独で突っ走り続けてる東雲拓真の行動は異常だし、基本的に許されるようなもんじゃないだろうから、あれは単独行動だと思いたい。
「このペースで行くと『樹竜の魔王』と遭遇するだろう……そんでもって東雲拓真が勝つだろうな。さすがにここらで一旦聖都に帰還するだろうから、東雲拓真が退いて魔物たちが体制を整えて聖都へ再度進撃したタイミングで聖都付近に行くとしようか」
「坂神雫にも会われるのですよね?」
「できればな……メインは東雲拓真かな」
聖都に一緒に行くメンバーは、今偵察に出てくれているウロボロス・デザイア・イデアにポラールとシャンカラを含んだ5人で行くことにした。
この隙をついて『星魔元素』やら何やらがアークやダンジョンに攻め込んで来る可能性を考慮して、ダンジョンとアークを守ってもらうメンバーはかなり分厚くした。
もし『星魔元素』が聖都まで来たら面白いを通り越してカオスな状況になりそうだが、可能性が0とは言えないので聖都へ行くメンバーも戦力的には充実させてい
る。
「楽しみだなぁ……俺の考えについての答え合わせができると思うんだよなぁ」
「あの勇者に会ってですか?」
「あぁ……今まで集め続けた様々な情報が実を結ぶ可能性がある。みんなが苦労して収集してくれたものがな」
「それで楽しそうな顔をしているのですね。ですが戦地へ赴くので覚悟をしてくださらないと困ります」
「…そうだな。こんなところで死ぬわけにはいかないからな……ありがとうポラール」
「私たちが付いて、ご主人様にケガをさせるような事を起こさせるつもりもありませんが、急に何をしでかすか解りませんので」
「ちゃんと言ってから動くようにするって……」
日頃の行いがよろしくないせいで大事な仲間に疑われてしまっている。
危険な目に合いそうな要素は、しっかりと想定して計画を立ててきたつもりで、基本的に安全なとこからワチャワチャしているのが好きなので、前線に出ても安全になるように頑張っているんだけどなぁ…。
今回も『七元徳』と『星魔元素』の途中介入や東雲拓真と話す前に戦う流れになったときのことも考えて安全メンバーを必死に考えたつもりだが、それでも心配をかけてしまっているようだ。
「……前失敗してるからな。油断せずになってことだな」
「ご主人様は口に出しても忘れることが多いので心配ですね」
「………」
これは何を言っても言い訳にしかならないタイプの問答になりそうだから、ここらへんで折れておこう。
とりあえず東雲拓真に会う前に能力名と、魔王たちとの戦闘からどんな力を持っているのか考えるとしよう。
デザイアとイデアが視てくれたおかげで、コアの画面に文字にして東雲拓真の能力名を表示する。
「『
よく人間たちが読んでいる本にある物語の一番メインをやっているキャラクターを主人公なんて呼んだりするのは知っている。
しかし、主人公補正って言葉は聞いたこと無いので、言葉から想像するしかない。
「つっても俺が知る『主人公』って奴の共通点は最後には勝ってるってこと……何事も都合良く進むことくらいだな」
「当てはまっているように感じます。魔物の大群に突っ込むという無謀な行動を成立させており、戦闘経験が少ない動きにも関わらず擦り傷程度の負傷で魔王を倒しているところが、まさしく当てはまるかと……」
「確かに……つもり能力名通り、主人公って存在に当てはまりそうなことが起こるってことだな」
「これらが本当に主人公とやらに当てはまることかは解りませんが、ハクの『
「化け物じゃん……どうやったらそんな生まれるんだよ」
とにかく東雲拓真に有利な現象が起こり続けて、全ての都合は東雲拓真に傾くって思っておこう。
でもデザイアとイデアの能力が少し通じているところを見ると、しっかり無敵じゃないってことも判明しているので恐れすぎることも無い。
もう片方の『
勇者様がそんなヤバい能力持っていいのかどうかは置いといて、東雲拓真しか持っていないと言うヒーロースキルなるものがヤバいのはしっかり認識しておかなきゃ不味いってことはよく分かった。
「……と話をしている間にも『樹竜の魔王』は見事討伐されてしまったようです」
「Sランク魔王だったんだけどなぁ……」
「事前に身を引き締めることができたのは良いことでしたね」
「それは間違えないな……さぁ! 準備するか!」
激熱の大舞台へ飛び込ませていただくとしようか。
最強の勇者に会うために…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます