第14話 『女神』の謎


 ルジストルの手伝いもあって、暁蓮から回収した情報をコアにまとめることができた。

 次はメルとイデアが視てきてくれた坂神雫についてだ。

 暁蓮と同じ日本から来た勇者ではあるが、過去の境遇や呼び出された経緯がまったく違う。



「異世界で死んでしまってから召喚された暁蓮と退魔師として活動している中で力を求めて女神の交渉の結果やってきた坂神雫か……」


「日本に存在している敵対生物を滅ぼして平和にするのが望みみたいだったね」


「妹も頑張ってるから私も……ってことばっかで面倒な感情してた」



 メルとイデアには難しい頼みをしたけど、無事こなしてきてくれた。

 坂神雫の勇者として見てきた情報、抱いている感情、女神が勇者に何を求めているのか等々の情報が欲しいという無理難題をクリアするのと同時に、今後の仕込みのために仕えそうだったらお手紙渡してほしいとも頼んであったが、無事お手紙は渡ったようで、その時の反応まで報告を頂いた。


 坂神雫の反応で俺という存在についても1つ可能性が高まってきたので、これもまた収穫としておこう。



「女神は原初の魔王を倒したいみたいだな……でも原初の魔王から女神を倒せなんて聞いたことなんてあったかな?」


「自然とそういう流れになっていることはマスターが一番わかってるでしょ?」


「……まぁ…そうなんだけどな」



 『大罪』とかいうデメリットが凄いように見せかけたぶっ壊れ魔名。

 何故か俺にだけに着いている説明役や師匠の存在。わざわざDE獲得最下位ですよという目立ちイベント、都合よく強くなれるように配られる報酬の数々。


 さすがに過去の記憶がなかろうと、ルーキーだろうがここまでされたら自分が何かしら特別なレールの上を走らされてると気付く。


 もし俺の考えていることが正しいのならば、何故俺が選ばれたのか? 何故女神を倒したがるのか? この世界は何なのか? 魔王・勇者・プレイヤーの3つの存在についてなど大量の疑問が出てくるが、わざわざ返答してくれるわけでもないので、考えすぎても意味が無い。



「こうやってコソコソやってるのも見てるだろうからな、本当……もう少し自由にノビノビとやりたいもんだ」


「って言いながらますたーは悪巧みしてるから忙しい」


「今日もメルは可愛いなー」


「わーい♪」



 スライム形態になっているメルを膝上に乗せながら、2人が収穫してきてくれた情報を整理しながらコアの記録部分に落とし込んでいく。

 プレイヤーと勇者が元いた世界は同じ名前だけど、何やら年代やら色々違うようで本当に訳が分からない。

 何故ここが違うのかも理由があってのことだろうから調べておきたい。勇者とプレイヤーは女神の管轄だと思うから、わざわざ世界線を変えたのには理由があるはずなんだ。


 『七元徳』と『星魔元素』はさすがにルーキー明けの魔王に怒って魔王戦争を仕掛けてくるようなプライドの無いタイプじゃないはずなので、少しの間はゆっくりできるはずだ。

 俺のことばかり考えているほど暇でもないだろうから、今のうちにできることを色々やっておかないといけない。



「2人が手を組んで仕掛けてくるのが一番厄介だな。たぶんそこまで仲良くないし……むしろ仲悪いように思えるから、2人が潰し合う展開にもっていけるのが一番だったんだけどな」



 『星魔元素の魔王』は何かしらの形で公国にいる勇者に関連しており、魔王本体が勇者という線で俺は見ているが、もしそれが正解ならば女神と『七元徳』が放っておくとも思えないんだよな…。

 女神側の魔王ってことで納得しているけど、女神が生み出した魔王なのか、女神側に寝返った魔王なのかでも解釈が違ってくるし、そうなってくるとクラウスさんたちと争わずにやっているのも謎な点になってくる。



「ふむ……わからん」


「ますたーが諦めた」


「とりあえず敵は決まった。魔王としての王道はアイシャに進んでもらって、俺は魔王界の異端児としてハチャメチャやってくさ」


「ますたーはコソコソ役が似合うもんね」


「ウチの配下たちは俺のことをおちょくるのが好きだな……まったく」


「それだけますたーのことが大好きだからだよ♪」


「可愛い奴め!」


「きゃっ♪」



 メルとの微笑ましいやり取りをしながら勇者2人から得た情報をまとめ終わり、お次は『七元徳』の天使たちから得た情報だ。

 メルとイデア、それにポラールが敵の死体の一部を確保していてくれたおかげで情報がテンコ盛りだ。


 『七元徳』の魔名は想像通り、俺の『大罪』の真逆ともいえるような効果があるようだ。

 魔物召喚のDEは通常より半減させることができ、配合した魔物は集団で戦うことで強さを発揮しやすい魔物になりやすく、単純にステータスが高い魔物が誕生しやすい。

 デメリットとしては真名付与回数が少ないこと、Lvを上げるのが大変な状態で生まれる魔物が多いってことか…。



「互いに違って互いに良いって感じだよな……まぁ『大罪』で良かったけど」



 大量にEXランクを召喚できるのは凄いところではあるが、Lv上げるのが大変ってことはすぐに戦力にはしにくいってことだ。

 ウチの『枢要悪の祭典クライム・アルマ』の皆様は生まれた時からLv固定なので楽ったらありゃしない。


 しかも単体で強いのが『大罪』だからDEを他のことに全力で使えるのもありがたいところだ。



「『星魔元素』のほうが阿修羅が真名持ちをやってくれたおかげで情報がお祭り騒ぎだからな」



 ダンジョンに襲撃してきた3体の魔物はアヴァロンの怒りで塵一つ残らず消し飛んでしまったので、阿修羅が倒したエンシェントエルフの死体を回収してきてくれた。

 まさか真名持ちを偵察にだしてきているとは思わなかったので思わぬ収穫だ。戦う上で阿修羅が近づければ完封できる相手だったから良かった。


 改めてメル・イデア・デザイアの3人の力には助けてもらってばかりだ。拷問とかせずとも情報を得ることができるってのは相手からすれば反則技に近い能力だろうし、この力は知られていないと思うから、常にアドバンテージを得ることができるかもしれないってことだからな。



「さすがに真名持ちでも偵察型で……戦闘向きの魔物じゃなかったみたいだな」



 偵察型の魔物を削れたことはかなり大きいんだけどな。

 もしウチからウロボロスがいなくなったと考えたら絶望して1万年くらい立ち直れないかもしれない。

 ウロボロス・メル・イデア・デザイア・シンラ・レーラズあたりが居てくれるだけで情報収集がトントン進んでいくから本当に感謝感激だ。


 『星魔元素』は公国が王国とそれなりにバチバチやり合っている影響もあってか急がしいはずだから、先に仕掛けてくるなら『七元徳』な気もするけど、勇者の補充の関係で忙しくなるのだろうか?

 魔王討伐失敗になれば人間たちは大騒ぎになってしまうだろう。良くも悪くも勇者という存在は影響力が絶大だからな。



「俺の予測が外れて無ければ、女神側の原初の魔王を倒すために特別なレールが敷かれた存在が……噂の歴史上最強と名高い勇者なんだよな」



 過去にどんな勇者がいたかなんて調べてないから、まったく想像がつかない話だけれど、そんだけ騒がれるってことは本当に規格外なんだろう。

 いずれ出会うことになりそうだから挨拶の言葉くらい考えておこう。



「ますたー疲れて考えてることが適当になってきてるよ」


「……仮眠でもとるか……メルも一緒に行くか?」


「うん♪」


 

 メルの指摘に素直に従っておくことにしよう。

 2時間程休むためにメルと一緒に自室に行って寝ることにした。リフレッシュしたらまた情報整理しなきゃな。

 

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