外伝 『欲夢』は見ている
――『罪の牢獄』 居住区 ソウイチの部屋
今日も1日平和なダンジョン運営を無事に終えて就寝の時間だ。
誰かしらとお休みすることが多いが、今日は1人でのんびりと寝る日なので、軽く人間の歴史書を読んでから寝ることにする。
魔王界に歴史については魔王として生きているだけで自然と知ることになるのだが、人間や亜人、様々な種族についての知識は自ら学びに行かなければ知ることができない。
なので毎日30分以上は本を読むことを心掛けている。おかげさまで色んなことを知ることができている。
まぁルジストルのほうが物知りだから役立ったことはあまり無いんだけどな…。
帝国の歴史についての本を軽く読んだ後、目が疲れたので寝ようとするとベッドに1つの気配を感じて驚く。
「……いつからいたんだ……デザイア」
「主が本を読み始めたくらいかのぉ~、早く寝るのじゃ」
「今日は1人でのんびり寝る予定だったんだけどな」
「覗いておったから分かっておるぞ」
しれっと覗いていたことをカミングアウトしつつ堂々とベッドのど真ん中で横になっているデザイアに特に何か言う元気も無く、とりあえずベッドに入ることにする。
基本的に寝ている癖に、まだ眠いというのはどういう構造をしているのだろうか? 寝ている中でも意識があるらしいが、デザイアの生態は本当に謎だらけだ。
「どうじゃ……妾の寝間着姿じゃぞ」
「寝間着も真っ黒だし、パーカー付きだし……パーカー付きって寝にくくないのか?」
「わかっとらんのぉ」
「デザインは可愛いと思うけどな」
「じゃろ?」
1人でのんびりと休みたいときがある俺のことは特にスルーしているようなので、諦めてデザイアと話でもしながら寝ることにしよう。
本当に気分屋なので、何か無い限りは基本姿を見せてくれないので、こうやって2人で話ができるのは貴重なのかもしれない。
エリアを訪ねても寝ていることが多いので、ニャルが対応してくれることが多いから良い機会だと思っておこう。
デザイアがど真ん中を占領しているので、ベッドの端で落ち着くことにする。
「主の周りは、どんどん騒がしくなっていくもんじゃなぁ」
「『大罪の魔王』としての周りってことか?」
「そうじゃ……ここまで順調ということでええんかのう?」
「どうだろうな……ルーキー期間が終わる頃に色々仕込んだ結果がわかると思うから、それ次第かもしれない」
「まぁ聞かずとも知っておるじゃがの……主の夢を覗き見するのは、よくやっとるからの」
「道理で何も聞かずに動いてくれると思ってたよ」
肝心なところで絶対に上手く立ち回ってくれるデザイアだと思っていたら、しっかりと頭の中を覗かれていたようだ。
一応みんなの主人のはずなんだが、各々俺に対して好き放題やりすぎじゃないだろうか? 困っている訳じゃないからいいんだけど…。
メルとイデア以外にも明確に俺の内側を覗いてくる者がいるのは驚きだが、知られるだけならば困ることは無いので良しとしておこう。
「主は少しせっかちじゃからの……今のところは順調かもしれんが、あんまり焦りすぎても良いことはないかもしれんぞ」
「覗き見しているなら急ぐ理由もなんとなく分かってるだろ?」
「面白みがないのぉ……言葉遊びと言う奴じゃ」
「こんだけ解りやすく可笑しい世界だ……少しぐらい速足で進んでやるくらいが良いのさ」
「口に出さず、頭で考えることもできるだけしない……よくもまぁ頑張るもんじゃ。話を変えるんじゃが、新しい能力とやらはどうなんじゃ?」
「あぁ……まぁ特訓中だよ。紙装甲なのは変わらないけど、攻め手としては強いから、まずは生き残れるように動く練習中ってとこだな」
「主も大変じゃなぁ~」
こんなぐーたらしているデザイアだが、ステータスは化け物なので、実はとんでもなく動けるという衝撃の事実があるのだ。
こんな寝てばかりのデザイアに軽くステータスで越される魔王ってのも悲しいもんよ……まぁLv1000の魔物に張り合おうなんて思っても無いけど…。
『
「主が戦わんでも、妾らがおるから出番は無さそうじゃけどもな」
「俺が前線にでると釣れる奴ってのは今多そうだからな……戦いってのは手早く終わらせるに限るだろ?」
「体を張るのぉ……まぁ手早く終わらせるのが良いことは賛同するんじゃが…」
「みんなの強さの全貌がバレたら、誰も出てこなくなるかもしれないだろ? 知られる前に叩ける存在は叩いておきたいんだよ」
「忙しいもんじゃな」
「早くのんびり過ごせる世界にしたいもんだ」
「謙虚さを残しながらも、しっかり自分が特別と思っとることはええことじゃな」
「まるで特別だと思えと言わんばかりの道のりだったからな……魔王として生まれたその時からさ」
「そんな忙しい魔王の元に誕生してしまった妾も大変じゃ」
「ハッハッハ……確かに災難かもな。でもデザイアが居てくれて本当に助かってるよ。俺のとこに来てくれてよかったよ……もし敵に居たらと思うと絶望だな」
「妾の力は今のところ、ハクとシャンカラ以外止められんからのぉ……まぁ2人も止めれるもんがおるのも、おかしな話なんじゃが……」
共にLv1000であり、デバフと能力無効を絶対に受け付けないシャンカラと、そもそも本気出したら能力発動を封じてくるハクの2人は規格外なので仕方ない。
基本的にLvが1001以上じゃなければデザイアの能力からは基本的には逃れることができないので、こちらとして安心して何事も任せられる。
デザイアはメルと似て、前線で戦うようなタイプじゃなくて裏方に徹してもらうことで真価を発揮できるタイプだと思っているから、思わずたくさん頼みごとをしてしまう。
働いた分ご褒美をたくさん求められるのは困った話だが、飴で許して貰えることもあるので安いもんだ。
「さぁ……話してたら眠くなってきたな」
「妾も眠くなってきたぞ」
「1日中寝てるじゃないか……」
「どれだけ寝ても寝足りないってことじゃ」
「そういうもんかね……」
「寝れている内が幸せと思って、寝ることを大事にするもんじゃぞ?」
「なんかそれっぽい言葉だな。それなら感謝して寝ないとな」
「ほれほれ……妾のために腕枕とやらを準備するのじゃ」
「突然上がり込んでおいて注文の多いもんだな」
「上質な睡眠のためには妥協したらダメなのじゃ」
なんでもそれっぽく言ってくるので反論するのも疲れてしまうので、素直に従って寝ることにする。
腕枕用枕とかいう便利なもんがイデア制作で作られたので、使っているがこれができてから腕枕をやれと言われることが多くなったので、結果的に良かったのだろうか?
デザイアは普段椅子に座りながら寝ているので、たまには横になって寝るのも気分転換になるらしいのだが、デザイアの睡眠論は難しいので着いて行けない。
「とにかく寝れば同じだな……お休みデザイア」
「お休みなのじゃ……主」
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