外伝 スパルタな『不死』鳥さん
――『罪の牢獄』 エリア闘技場
俺は今、空から降り注ぎ続ける火の粉と氷柱の雨から全力で逃げている最中だ。
『
まずは紙装甲である俺に必要なのは敵の攻撃を受けないために避けることだということになって、シンラに手伝って貰い特訓の最中だ。
普段からある程度アヴァロンやポラールに手伝ってもらって特訓はしてきたが、ステータスが『
――ドドドドドドドドドッ!!
「ヤバい! 熱いし冷たい! 数が多すぎて把握しきれん!」
『
上空から迫りくる2種の攻撃を全然把握しきれないし、いきなりステータスが爆上がりして身体の動きをしっかりと制御できていない。
みんなと同じような敏捷値のステータスを手にしたらどうなってしまうんだろうか?
無言で攻撃し続けるシンラに少しだけ恐怖を感じるが、より戦場に近い雰囲気を感じさせてくれているんだろう。
(目が慣れないようにタイミングや氷柱の大きさを変えてきてるのが腹立つが、誰だってワンパターンな攻撃してるわけじゃないってことだな)
頭で考えながら動く余裕はあるが、ここから攻撃に移れるビジョンは今のところ思い浮かばない。
このままだと消耗していくだけで、いつかぶっ倒れてゲームーオーバーになってしまうだけだ。避けながらもどう次のアクションを起こすか組み立てなきゃいけないのは難しいな…。
5分程避け続けていると休憩時間になったのかシンラからの攻撃が止んで、地上に降り立ってくる。
「いつもは後ろでふんぞり返っているけど、やっぱ実際に戦うのってしんどいな……魔王戦争後に新米勇者3人と地味に侵入していた『空の魔王』に不覚をとったのも納得するよ……30分動いただけで、もう動くのがキツイ」
闘技場でシンラの攻撃を避け続けているだけで、この疲労感。
魔王戦争や勇者と戦うとあれば、どれだけ疲れてしまうんだろうか……俺が前線にでることに意味があるのなら、いつか試したいとは思っているので、どうにか戦える基盤を整えておかなきゃいけない。
いつか魔名ランクがEXになったときに、さらに戦えるスキルを手に入れたときのためにも作っておかないとな。
「それにしてもシンラの『
目の前まできてくれたシンラを撫でながら、シンラの能力構成について考える。
比較的わかりやすく、戦い方だったり敵との相性もハッキリしているタイプではあるが、唯一難しい能力である『
何でもかんでも『低速』にできる『
固定と活動することを強制し続けるというスキルをどうやって使うかはシンラ次第ではあるが、俺的には固定する力の方が使いやすそうだと思っている。
活動を強制させることでゾンビみたいなのを作ることはできるけど、それならイデアかデザイアに死体を好きにさせたほうが良いモノができそうだからな…。
「本当に難しいもんだな……『
そんなことを言っていると、シンラが俺の方を見つめてくる。
心なしか赤く目が光ったと思ったら、クタクタだった身体が急に元気になってきた。
……なるほど。
「なるほど……一時的に疲労すら感じない身体を作り上げることができるのか」
きっと能力切った後に地獄の疲労感が押し寄せてしまうオチがあるんだろうが、味方に使うにしても敵に使うにしても面白い力だな。
なんだかんだシンラも自分の研究をしっかりしてるんだな。俺に試すのは恐ろしいことだが、1つの手段として示してくれたってことにしておこう。
「それにしてもシンラは器用だよなぁ……『天地騒乱』に『時巡りの神鳥』で戦場を荒らしつつ、3種の属性で好き放題できるのが最高に組み立てやすくて好きなんだよなぁ」
『
『天地騒乱』を上手く活かしてくれそうなのがメルと五右衛門だと思っている。2人とも地形・環境恩恵を最大限に受けられるので、シンラが『天地騒乱』で相手に不利な最悪天候にしようとも2人なら好き放題に暴れられるはずだ。
ただ、わざわざ3体で挑むような相手が今のところいないこと、そして3体で戦っていると互いのアビリティが邪魔し合う悲しさがあるということだ。
「あぁ……『大罪』の制限が無ければ、シンラをリーダーとした鳥軍団で、どの戦いでも空中戦を制することができると思うんだけどよな……イデアに創ってもらう以外どうにかならんもんかな?」
シンラは『
3属性は勝手に吸い込んでしまうが、シンラに吸い込まれる3属性をメインで戦う『
本人がエリアを欲しがらないから、自由にしてもらっているが心配性なので色んなエリアに顔を出しまくっているくらいのコミュニケーション能力をもっているので、個人的には空中戦最強軍団を作って1つのエリアを守ってもらいたいとも考えているけれど、本人が今のままで良いと言うなら特に押し付けるつもりは無い。
「無口なのにコミュニケーション上手って凄いな……ウロボロスにも言えることなんだけどさ」
黙って撫でさせてくれているシンラに語り掛け続ける。
反応はあまりしないけど、ずっと聞いてくれているし、必要だと思えば反応してくれるから話し続けられる。
この感じこそが、みんなに頼られる秘訣なのかもしれないな。この感じはデザイアにも共通して言えることだ。
「シンラが居てくれるから、魔王界でも特別視されがちな属性魔名の魔王相手でも、3種に該当してれば怖さを感じずに済むからな。このわかりやすい安心感はなかなか得られないよな……普通だと」
イデアとシンラが属性を完封できるような力を持っていてくれるおかげで、名前をきく多くの魔王に対して心理的な優位にたった気でいれるから、なんだかんだ余裕を持って生きていられる。
『豪炎』と戦ったときに居てくれたら、自分でも驚くほどふんぞり返っていたことだろう。
「自分の能力と鍛えることを考える時間のはずが、気付けばシンラのこと考えてたな……いかんいかん」
――バサッ
特訓再開の合図とばかりにシンラが飛んでいった。
そうだな……まずは自分のことをしっかりと知らないといけない。『
この後無事髪の毛が燃えてしまって大騒動になりかけたのは内緒の話だ。
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