第5話 狙われた『焔』
――『焔輪城ホムラ』 居住区 会議室
つい最近訪れた気がするが、勇者に討伐対象として何故か選ばれてしまったということでアイシャと話し合いをさせてもらっている。
不自然なところが多すぎるので、まとめているところだ。
「まずは1年しか経過していないアイシャが何故目をつけられたか……」
「一応SSランク魔名の魔王ですが……確かに可笑しいですね。他に人間からして脅威な魔王はたくさん存在していますしね」
「しかも……勇者が来るタイミングが2週間後の魔王戦争当日ってのも、どっからどう考えても不自然だ」
「ソウイチも前に言っていましたが、勇者側と魔王の誰かが繋がっているのは確実なようですね」
アイシャはもちろん、魔王戦争・勇者たちを相手して、しっかり勝つつもりだ。
魔王戦争は消耗はするだろうが問題ないだろう。だが勇者4人相手に魔王戦争の直後に迎え撃つのは厳しいとしか言えない。
いくら『焔天』となって強さが跳ね上がったアイシャでも4人の勇者を相手にするのは不安要素が多すぎる。
俺が戦った新米勇者ならまだしも、ラムザさんを倒した4人組だから危険すぎる。
まぁ……そのうちの2人を前に言った通り横取りしたいから交渉に来たんだが…。
「来るものは仕方ありません。ソウイチは前言っていた通り、2人の勇者をやりたいのですよね?」
「あぁ……坂神雫と暁蓮は俺にやらせてほしい。迷惑がかからんように、ここから離れた場所で戦うよ」
「私も師の仇ですのであれですが……半々ということでいいでしょう」
アイシャは自分の迷宮都市もDEになることしか考えていないくらい、人間に対して想いが何もない、というよりも人間という種族が嫌いだから迷宮都市近くで戦われることも何とも思わないんだろう。
ダンジョンで迎え撃つのもいいし、もちろん勇者が向かってくる道中で拉致して戦うのもありだ。
「黒幕探しは生き残った後だな。俺たちに見えていない敵が来る可能性だってあるけどな」
「私としては手を貸して頂く立場なのでなんとも言えませんが……後ろに誰がいるか予想できているのでしょう?」
「……確証はない。けどなんとなくの候補はいるよ」
「なるほど……その名を聞くと集中できなくなる可能性があるのなら聞かないほうが良いということですね」
「ん……確証がないのに名前をだして疑うことで敵に回すとヤバそうってとこなんだよなぁ……」
「なるほど……私は魔王戦争の準備と……勇者を迎え撃つためにダンジョンを強化しないといけませんね」
聖都からここまで近いから、勇者がくるまで2週間しかないというのは厳しい話だ。アイシャはそこまで動揺していないように見えるのが凄いなぁ…。
俺だったらアークをどう落ち着かせるかでわちゃわちゃしちゃいそうだけども…。
暁蓮の力のほどは前会った時に阿修羅を通して知ることができている。ただ勇者の恐ろしいとことは『成長速度』にあるというので油断はしない。
取り巻きの冒険者もある出来る限り処理するとして、注意するのは坂神雫だ。
「暁蓮に蒔いておいた芽の収穫を忘れないようにしておかないと……」
殺せる絶好の機会だったが、それを見逃してでも勇者に巻いておきたかった種。
阿修羅が暁蓮に戦闘中にもかかわらず仕込んでくれた努力がようやく実る時がきそうだ。
今回はラムザさんの時ほど、護衛の騎士や冒険者はいないという話だ。前回俺が好き放題やったのに影響でも受けているんだろうか?
聖都からこのダンジョンまでは比較的、村や街が少ないそうなので寄り道する回数が少ないとみての判断なのかもしれないな。
「残り2人の勇者……なかなか面倒そうな組み合わせだが大丈夫か?」
「ええ……もちろん私もソウイチが知り得ない手がいくつかありますから心配には及びません」
「さすが……じゃ~また何かあれば次はメッセージで送っておくよ」
「はい……ありがとうございます」
勇者2人と取り巻き一部を頂くのは無事に許可をもらえたし、やることは確実に芽を摘む方法を考えることだけだな。
それとどれだけの俺が知らない情報を引きだせるかどうか……特に勇者からみた女神の印象なんかは聞いておきたいところだ。
アイシャとの話し合いも無事終わり、俺は『罪の牢獄』へと帰還した。
◇
――『罪の牢獄』 居住区 コアルーム
聖都を出発した勇者御一行様についてのデータをコアを使ってまとめている。
勇者4名はラムザさんの時と同じ4人で『神速刃・暁蓮』『救世の賢者・坂神雫』『聖天對星・エルフリッド・テスタロッサ』『グリーンコメット・大神源輔』だ。
公国にいるって噂のもう一人の勇者がまったく出てこないのは何か理由でもあるのだろうか? 色々調べても全然情報がでてこない。
勇者と認定されてから表舞台に全然出てきていないらしいので、かなり怪しい存在であることは確かだ。
「強いのは暁蓮と坂神雫って話だが、1番厄介なのは大神源輔って奴な気がするんだが……」
「俺が戦った剣士は速さに対処できれば誰でも戦える程度ではあったな」
「ますたー……誰が戦うの?」
「暁蓮は阿修羅に任せようかと思ったんだが、珍しく燃えてるのが1人いてくれてるからな」
俺が暁蓮に対してどうしても戦いたいと言っている存在がいるというと、コアルームに集まっている阿修羅・メル・イデア・五右衛門の4人が隅のほうで瞑想しているシャンカラに視線をむける。
シャンカラは暁蓮の名前がでてから、少し肌に刺さるような闘志を漲らせて、静かに集中している。
「そういえば1度斬られておるからのぉ~、勇者剣士は可哀想じゃ……ただでさえ強いシャンカラを気張らせてしまうとは悲劇じゃな」
「剣士の方はシャンカラに任せるとして、賢者様のほうは誰にするか決めたの?」
「イデアとメルに任せるよ……心の内まで暴いてきてくれ。出来る限り全ての女神と勇者という存在に関する情報が欲しい」
「任せてますたー」
「儂らは前回のように取り巻きをやっておくということじゃな」
「あぁ……今回は冒険者は少ないが、聖国騎士団ってのが分厚く手配されている。頼んだ」
「合点承知じゃ」
俺も少しだけ坂神雫本人に聞きたいことがあるからイデアとメルと一緒に動くことにする。
2人に任せておけば万事解決な気もするが、記憶と能力だけじゃなく、勇者の口から直接聞いておきたいこともいくつかあるからな。
ここの守りはアヴァロンとレーラズを中心とした何度も留守を任せてきた絶対的な2人を中心とした布陣で行くから安心だ。
問題は、俺の予想が正しければだが、俺が出ること誰かしらが邪魔に入ってくるんじゃないかと予想している。
「勇者と魔王の繋がり……それとも女神と魔王の繋がり、見させてもらわないとな。気になって夜も眠れないからな」
「ますたーはいつもぐっすり寝てるよ?」
「私たちと小話する前に寝ちゃうじゃない」
「……かなり気になるって意味だよ」
「若の部屋には誰かしら一緒にいるし、アヴァロンたアマツは寝るって概念が存在していないから24時間警戒しているから、若もぐっすり寝れるだろうさ」
「儂はすぐ寝てしまうからのぉ~、朝は早いんじゃが……」
「俺以外は寝なくても支障でないだろ?」
「睡眠は大事って言ってたのは、ますたーだったと思う」
「そう思ってた時期もありました……」
なんでこんなに弄られている流れか分からないが、とりあえず士気は高そうなので問題なし! シャンカラがあそこまで集中するような相手じゃないんだけど、シャンカラの恐ろしさを勇者には申し訳ないが身をもって味わってもらおう。
ウロボロスに転移拉致の準備をデザイアとしてもらって、バレないように勇者御一行様を追い詰めるとしよう。
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