第4話 蠢く『策謀』
――『罪の牢獄』 居住区 コアルーム
地下6Fが突破される瞬間をモニター越しで見届ける。
3人のSSランク冒険者が、デザイアが創り出した魔物をボロボロになりながらも倒し、素材を求めてなのか次の階層に進もうとしている。
兄弟の凄腕冒険者にソロの元王国騎士団……かなり濃い3人だが、戦闘を見ている限り、かなりやり手の冒険者であることがわかった。
タンクやヒーラーというジョブの大事さを、フォルカを通して学んでいたのだが、この3人はタンクやヒーラーを必要とせずに、個人でマルチな役割を無理なくこなしつつ、圧倒的な能力でここまで突破してきている。
身に着けている武具も相当なもののようで、さすがSSランク冒険者といったところだ。
「マスティマとグレモリーの初実戦ということで招いた客だが……少し力不足かもな」
「特訓相手は我々ですからね……SSランク程度の冒険者3名では、すぐに終わってしまうかもしれません」
「やっぱ冒険者は、しっかり7人フルでパーティー組むのが1番だと思うんだよなぁ~」
「『大罪』のような個人特化で味方阻害の力では無い限り、数がモノを言う時もありますからね」
ポラールが冷静にモニターを見ながら感想を述べてくれる。
この3人はカノンたちも知っている顔ぶれのようで、『罪の牢獄』の名を広めるのに大いに貢献してくれそう……というか挑んでくれた時点で名を広めてくれている。
3人が浮かび上がった崩壊台地というのが設定となっている「崩壊した楽園」というエリアに辿り着き、さっそくマスティマに遭遇している。
グレモリーは近くにいるんだろうが、『陽炎の漂い』で姿を晦ましているんだろう。
「グレモリーの敵意を他の魔物へと向けさせる能力セットとマスティマの『
「初手に大技を放つのは人間相手だと特に効果的ですからね。まずは様子を見たいと考える冒険者が多いので、マスティマもやりやすいでしょう……御覧の通りですね」
モニターにはマスティマが『
自身を中心とした闇属性の爆発を巻き起こす広範囲スキル。なんと敵意をむけていなければ爆発に巻き込まれてもダメージが一切ないが、敵意をむけてしまっていると、防御能力を無視して直撃してしまうマスティマの必殺スキル。
マスティマとグレモリーに言ってあるのは様子見なんてせず、とりあえず一発目は仕留めるつもりで、グレモリーの『見破る眼』と『陽炎の漂い』が効いたなら、マスティマの『
「一撃でしたね」
「あぁ……マスティマの『
「2人にはやりごたえの無い実戦になったかもしれませんね」
「実戦を経験したっていう事実が大事な気がするもんだが、あんまり共感してもらえないからな」
SSランク冒険者を3人も同時に仕留めた。
これでダンジョンの知名度はさらに広がるだろう。しかも帝国の僻地にある迷宮都市だ。各国の小競り合いで国境付近の迷宮都市は危険になりつつある今、逃げ先だったり、新たな拠点候補として良い宣伝になってくれると嬉しいもんだ。
『海賊』の力もダンジョンに使ってみたが良い感じだ。
簡単に言えば海賊船上での戦いに必要な力を付与するみたいなもんだが、スケルトンに天候耐性やバランス能力を付与できたおかげで、『銅』の力と合わせて良い感じのエリアを作れたつもりだ。
『異教悪魔』の力は悪魔全般のステータスを上昇させつつ、自身の魔物と敵対した相手の精神耐性を下げられるというガラクシアやグレモリーに合う魔名だ。
「帝国の参謀たちが手を回してくれているが、やっぱり目をつけられるな。戦うにしても帝都かアークのどちらかで戦うのは避けたいところだ……被害を最小限に抑えたい」
「どこかでレーラズに結界を張ってもらって、そこにウロボロスが転移させていくのが効率的かと……」
「そうだな……どこを倒せば崩れるか…やっぱり帝国の長『
「さすが帝国のトップなだけはありますね。暗殺や奇襲対策はバッチリなようです。帝都の民には影響がでないように城に転移して叩くのはどうですか?」
「そーなってしまうのかな~、やっぱ力で示すっていう結論に落ち着いちゃうのは俺らしいのかもな」
「ご主人様がおっしゃっていたように、人間同士の戦争を長引かせることが理想を遠のかせてしまうのならば、一戦で決着をつけるくらいの速さが望まれると思います。殺してしまった重要人物は阿修羅かイデアにどうにかしてもらいましょう」
「やるならアイシャの魔王戦争が無事に終わった後だな。何かあったときにお願いしておきたい」
「そうですね。1カ月後がタイミングでしょうか? 準備と調査をするように伝えてきますね」
「あぁ……ルジストルには俺から言っておくよ」
「わかりました……では」
そう言うとポラールは転移してどこかへと消えてしまった。
ちゃっかりLvが1上がって時空間魔法から時空間魔導へと進化したので、大幅にできることが増えたので跳びまわっていると聞いている。
失ってしまったスキルもあるが、新たに得たスキルを見ると、やっぱりポラールのLv上限をあげて良かったと思う。
勇者に帝国騎士団、それに他魔王……多いもんだ。
EXランクの魔物が他魔王にもいることがわかった今、どんな形で攻められるかわかったもんじゃないのがもどかしい。
歴代最強勇者候補ってのも気になる……歴代勇者を調べたわけじゃないから詳しくは想像つかんが…。
「どう思うかね……ルジストルさんよ」
「どうと言われましても……今来たばかりなのですが……」
「いや~……どいつもこいつも俺の内を読んでくる奴ばかりだからルジストルもやるのかと思ってさ」
「メル様やデザイア様と一緒にされても困りますね。閣下の頭の中を読めてもゴチャゴチャしていて困りそうなので、読めなくて助かっております」
「若干馬鹿にしてるだろ?」
「考えるのを続けるのは大変素晴らしいことです。閣下の良いところですよ」
ルジストルが何やら報告しにきたようなので声をかけたら、何故か弄られているといういつもの流れ、こうやって話をしても良いように丸め込まれるから手っ取り早く要件を聞いた方が傷つかずに済みそうだな。
わざわざリーナに仕事を任せて1人で来るってことは、それなりの要件なんだろうか?
「何か重い話か?」
「勇者が討伐魔王の発表を行いました。……かなり悩ましい話になると思いますので、相談役にと……」
「悩ましいってことは俺じゃなかったのか……やっぱり目立つように動いても足りなかったか……」
「どうやら目立つ云々の話では無かったようですよ」
ルジストルの話し方的に、どうやら俺では無く、俺の知っている魔王のようだ。なんとなくだが嫌な予感がする。
目立つことで女神の目に留まり、討伐魔王に選ばれる作戦だったが、やはり1カ月程度の頑張りでは目立つには及ばなかったということかな?
「勇者が発表した魔王は『焔天の魔王』です」
「そうきたか……選考基準が意味不明だが……俺が知っている魔王が2連続ってのは偶然とは思えんな」
俺はルジストルに会議室に魔物を集めながら、ある程度の話をしておいてほしいと頼み、急いでアイシャに送るメッセージを打ち始めた。
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