第11話 始まりの『狼煙』
『さぁ! いよいよ始まりました! 1年前に生まれたばかりのルーキーだった期待の超新星である『大罪の魔王ソウイチ』ッ! 魔王界でも初であるルーキーにして上級魔王に挑むという無謀とも思える戦争を仕掛けた若者の運命はどうなる!? ゲストには『
『つい先日ルーキー期間が終了したとは言え、まだまだ若い。噂を肯定してしまうようだが、『
『大罪』と『異教悪魔』の魔王戦争は、ほぼ全てともいえる魔王がモニターで観戦するほどの注目度を誇っていた。
称号を得た魔王の中では1番弱いとはいえ『
そんなルーキーが挑むのは上級魔王の一角。
闇の力に精通し、相手の認知を崩壊させ、自身の配下にしてしまうなどといった洗脳能力にも長けた『異教悪魔の魔王バフォメット』。
保有DEの差は果てしなく、戦場でもある『古き街シバルバー』には地上・空中どちらにも大量の悪魔系統の魔物で埋め尽くされている。
『なんとルーキーでもある『大罪』ですが、同盟からの協力は一切なく、自分1人だけで戦うと宣言しております! 対する『異教悪魔』側には『
『さすがに数の差が果てしない気もするが、『海賊』との魔王戦争では、数の差を一瞬にして覆している。そのことは『異教悪魔』も考慮しているのか前線に配置されている魔物は守護型の魔物が多いみたいだな』
『対する『大罪』陣営ですが魔物の配置が確認できませんッ! Gランクの魔物しか召喚できないというハンデは有名ですが、単体で強大な力を有した魔物で勝利してきた歴史の通りに、今回の戦争でも3~4匹の魔物で数の差を覆してくるのか!?』
誰が見ても圧倒的戦力差。
見るまでも無い数の違い。互いに迷宮都市のほうは同盟相手に守りを任せているようだが、同盟相手のレベルも大差が出てしまっている。
『風蝗悪魔』という配下の魔物はランクが高くはないが、魔王本体の強さは『
他にも名のある魔王が参加しており、戦場に配置された大量の魔物の平均ランクはAという高ランク。
誰もが『異教悪魔』による調子に乗っているルーキーへの虐殺劇が行われるのを心待ちにしている状況である。
『間もなく開戦! 魔王界初のルーキーvs上級魔王という無謀とも思える戦争ッ! さぁ『大罪』よ、『海賊』戦で魅せた輝きを再び放ってくれッ!』
魔王戦争開始5分前。
最古の魔王ですら色んな意味で注目せざる終えない魔王戦争が幕を開けようとしていた。
◇
――『古き街シバルバー』 南側 『大罪』陣営
相変わらずモニターから聞こえてくる実況は白熱している。
ゲストは魔王単体で最強と言われているアザゼルさんだ。あの人もEXランクの魔物についての真実を知ってそうな気がするから、この魔王戦争に勝ったら聞いてみることにしよう。
モニターを見るのが嫌になってくるような『異教悪魔』軍の魔物たち、種類も豊富だし、とにかく色んなのがいて勉強になりそうだけど、数多すぎて目が痛くなってくる。
アイシャとピケルさんには心配をかけてしまっているだろうが、俺の我儘に付き合ってもらってアークの守りを任せてある。
カノンたちはアマツがどうにかしてくれるはずだし、もしかしたら魔王戦争中に仮面集団が襲撃してこない可能性もあるから戦力は多く割くことはできない。
「さぁ……狙いはダンジョンコアってより、観ている魔王たちの前で俺の首を掲げることだろう。『異教悪魔』の思い通りになんかさせたくないし、観戦している魔王たちの度肝を抜いてやらないとな」
「リトスが着いてるからいいが……若も前の方へ向かうのは変わらずということでいいのか?」
「まぁ……囮みたいなもんさ、ダンジョンの守りは薄いからな。レーラズも働きたくないって言ってたから、俺に注目を集めさせたほうが、相手の大群を動かしやすいだろ? リトスもお腹空いてるらしいしな」
「我らは各自指定されたポイントを地上・空中と制圧して参ります。リトス、ご主人様のことは任せましたよ」
「きゅ~~♪」
俺の頭に乗っかりながら返事をするリトス。
こんな調子だが、やるときは容赦なくやってくれるので安心して護衛を任せられる。
もちろん俺だって『
開幕から暴れてもらえるので、日頃の鬱憤を晴らしてもらえるいい機会だ。
ある程度は味方同士が近いので全力を出せないっていうクレームもあったが、それは次の機会に期待して、今回は自分が思いつく限り、ベストの布陣を敷けたはずだ。
「マスター♪ 最初の一発でどれだけ減らしたらご褒美もらえるのー?」
「戦争に勝てば、この前のアピール大会の我儘を順番通りに聞いていく約束だけど……」
「僕参加してないから、しっかり大将首をとって……マ、マスターとデートしてもらう!」
「私も参加できていないから……とにかく主命を果たすことに集中しよう」
「妾も参加しておらぬのじゃ……でも頑張るという行為は面倒じゃのぉ」
ハク・シャンカラ・デザイアのとんでも三人衆が同じ戦場にいるというのは壮観だ。
本当はマスティマたちも含くめて、全魔物を同じ戦場で暴れさせてみたいものだが、今回は各々に大変な役割をこなしてもらうので、結果的にアピール大会は士気をあげる良い機会になっているので結果オーライだ。
ガラクシアとポラールには開幕の一撃をかましてもらう予定だ。
どんなスキルで行くかは2人の内緒らしいので、ここで見守ることに決めている。2人の攻撃が炸裂次第、各自決めてある作戦に沿いながら臨機応変に各ポイントを制圧してもらうように動いてもらう。
「さぁ……『異教悪魔』に地獄を見せてやろう!」
――ブワッ!
俺の掛け声を各々の返事で反応してもらうのと同時にガラクシアとポラールが飛んでいく。
空中から大技をかましてくれるようなので、とりあえず巻き添えを喰らわないようにしておかないといけない。
爆音と爆風でとんでもないことになる可能性があるからな……サソリ大砂漠のときのガラクシアのハチャメチャな一発を聞いているので、味方である俺ですら少し身構えてしまう。
モニターで確認すると2人はシバルバー中央へと高速で飛行していき、敵軍が確認できる地点までいって開始の合図を待つようだ。
2人の身体を漆黒の魔力が漲っているのを感じる。盛大にやりそうだから爆風に備えておこう……。
――バァンッ! バァンッ!
盛大な花火が遥かに高い天井付近で咲き誇る。
相変わらずの魔王戦争開始の合図だ。とりあえず、ここからでも感じる闇魔力の集まりをモニターで見守る。
闇系統の悪魔が多い相手に対して闇魔導でいく、2人とも完全におちょくるというか見せつけてやる気満々のようだ。
シバルバー南側から広がるように巨大な白と黒の魔法陣が地面に描かれる。完全に広範囲を超えて超範囲の域にまで辿り着いている連携に、敵軍の魔物も地面を見つめて動けていない。
魔王戦争では自身の魔物の様子がわかるモニターが5カ所まで自在に外でも出せるのは魔王の特権らしいが、音声まで聞けるので2人の会話が聞こえてくる。
「「世に終局を齎す破断の天輝よ、全ての魂を大いなる悲劇と苦獄へと誘いたまえ。極闇魔導! 星空を覆えッ! 『
――キィィィィィィィンッ!!!
2人が『極闇魔導』を放った瞬間。
一瞬の不快音が耳を通り過ぎると、モニターから白黒の光が溢れだす。
戦場のほうを向けばシバルバー南側以外の大半を全て飲み込んでいるような白黒の光が天へと伸びており、魔物の悲鳴1つも無く、2人の度肝を抜かれるような先制パンチは成功したみたいだ。
俺の目と耳も軽くやられたけど…。
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