第10話 怒るときこそ『冷静』に
『原初の魔王』と『異教悪魔』、そして俺による3人での楽しい時間は終わってコアルームへと帰還した。
性格と言うか雰囲気は想像通りだった。
俺よりも頭が回る感じだったし、完全に場慣れしていて余裕があった。対戦相手の長所をしっかり認められる器量といい、さすが上級魔王っていう貫録だった。
そしてアークを的確に攻めて嫌がらせしてくる性格の悪さと、やっぱり見下しているような雰囲気、この魔王戦争を『原初の魔王』を楽しませるための劇としか思って無さそうなところは……俺としては気に入らない。
「戦場がとにかく広いってのは俺たちからすれば好条件だ」
きっと戦場は『異教悪魔』の魔物や相手同盟の魔物で埋め尽くされそうだが、戦場が広ければ『
広範囲を攻撃する術は『
「カノンたちの助っ人にはアマツ……コアルームにはレーラズに戦場からダンジョンへの入り口はアヴァロンで変わりなしでいいな」
魔王戦争本番の各魔物配置を決める。
今のところ襲撃を受けておらず、ずっと警戒するが今のところ音沙汰なしの仮面集団、ここまで来たら魔王戦争当日にカノンたちを襲撃しにくるだろうから、その相手はアマツにお願いすることにした。
ウロボロスとレーラズによる戦闘場所の確保は終了しているので、ソラが使用できる転移技で行けるようにしてある。
コアルームはレーラズ、そしてシンラも何かあれば跳んでくる手筈になっている。魔王戦争の戦場からダンジョンに入る入り口にはアヴァロンにお願いした。
侵入された後の罠を万全に整えてある。個人的には時間をかけたので自信がある。できれば罠のところまで進まれたくないけども、念には念を入れるのは当たり前だ。
「アークはメルやガラクシア、ルジストルにリーナが頑張ってくれているおかげで『異教魔王』のちょっかいを防げている」
これも魔王戦争の1つなんだろうけど、ダンジョンに攻め込まれるのが嫌で魔王戦争を頼み込んできた癖に仕掛けてくる方法が汚いのは正直頭にきている。
だけど、ここで乱れては『異教悪魔』の思うつぼだと思って我慢しなくてはいけない。
怒りは秘めて、頭を冷やす。
「こんなのを何百年も続けていたらストレスでおかしくなりそうだ」
最初の数年は仕方ないかもしれないが、俺はこんなの続けていられない。
この魔王戦争で上級悪魔にも劣らず、該当魔王がいなかったから選ばれたという風潮のある『
「ご主人様……戦場のご視察に行かれますか?」
「あぁ……何人かで視察に行こうか」
ポラールがわざわざ声をかけてくれたので、戦場の雰囲気や形状をしっかりと確認しに行くとしよう。
視察することで浮かぶ策ってのもあるかもしれない。
俺はコアを使用して何人かに声をかけて、『異教悪魔』との魔王戦争戦場である『古き街シバルバー』の視察に行くことにした。
◇
――『古き街シバルバー』
広大な大地にある都市みたいな形なのかと思っていたが、地下帝国のような感じで薄暗い地下空間に広がるとんでもなく広い街のようだ。
闇系統の力が少しだけあがるっていうのも雰囲気で少し納得できる。
コアの説明では天井が崩れることは絶対に無いとのことなので圧し潰されることはないので安心して暴れさせられる。
「若……考えていたよりも広いぞ」
「南北東西…それに中央で大きく分かれた区画になってる。この5つをどう制圧してからダンジョンを落とすかが鍵になりそうなシンプルな戦場だ」
「各区画で2人は行けそうですね」
阿修羅とポラールがモニターを見渡す。
5つのポイントに2人ずつで10体、アマツ・レーラズ・アヴァロンは配置場所を確定させているから遊撃は4体……悪くない配置ができそうだ。
マスティマたちはダンジョン内で待機して、もしアヴァロンがやられてしまった場合に迎撃してもらうことになる。
「『異教悪魔』のダンジョン入口が配置される北側には3体でもええと思うぞい?」
「そこらへんは追い詰めた後でいいんじゃないかな? さすがに戦力を分厚くしてくると思うし、ダンジョン前に辿り着くにも大変だろうから、その都度対応していこう」
「きゅっきゅ~♪」
五右衛門の頭の上でリトスがピョンピョンとジャンプしている。
広いし建物が多い戦場は2人としてもやりやすいだろう。忍者である五右衛門からしたらやりたい放題仕掛けられるような戦場になっている。
リトスは俺と一緒に行動してもらうかと思っているので、戦場視察に連れてきたけど遊び場だと思って楽しんでいる。
緊張しているのは俺だけっぽいな。
「みんなとは1年一緒にいるけど、本領を発揮できるのは初めてじゃないか?」
「俺や五右衛門からすればいい戦場かもしれんが、ポラールやガラクシアからすれば、まだまだ窮屈だろう」
「やっぱ個人で自由にやれるのが1番か……各ポイントの地上空中でわけても狭かったか」
「全員が広範囲を常にカバーできるわけではありませんので、ご主人様の選択は間違っていません。フェンリルなんかはカバーできる範囲が狭いので、今回の戦場で数を勝る相手を迎え撃つに適した作戦だと思います」
倒しても無限に湧き出てきそうな気がするから、各ポイントを全力で死守しつつ、道が開けたら遊撃魔物がダンジョンへとコアを破壊しに行く。
『異教悪魔』の同盟相手を上手く捌いてもらいながらダンジョンまで行くのは大変だろうが、それが出来るだろう面子にしてある。
リトスとシンラは守り側で動き回ってもらう遊撃部隊だから実質2体の魔物に任せてある。
「儂とハクで『異教悪魔』の首かダンジョンコアを破壊してくればえんじゃな」
「あぁ……最初は魔物の数を減らして貰いながら、ランクの高そうな魔物を撃退して、守りが盤石になったと思ったら各自のタイミングでコア目掛けて自由に進んでいって欲しい」
「ハクがぶっちぎるじゃろうから、儂はハクの影響受けん距離でサポートに回るとしようかの」
「頼むぞ……わざわざ相手の強さを測ろうとしなくても良い。ハクが容赦なく破壊していくサポートをしてやってくれ」
最強の単体戦力であるハクに『異教悪魔』討伐は任せた。サポートに五右衛門が回ってくれるのでスムーズに『異教悪魔』のところまで辿り着くことができるはずだ。
こういったときに裏方に回ってくれるところが五右衛門のしっかりしたところで、目立ちたがりに見えるけど、やっぱり役割理解が速いので頼りになる。
「若を怒らせた罪を……しっかり償ってもらわないといかんな」
「えぇ……ご主人様を敵に回したことを地獄で後悔してもらいます」
「そんな怒った感じ出してないはずなんだけどな~」
「メルが大慌てでしたからね……さすがに全員気付いていますよ」
「一切隠し事できないってのも困ったもんだな……」
「私たちはご主人様が決めてくださった戦地で戦果をあげるべく戦うのみです」
「若はどっしりと構えてくれていればいい……俺たちの強さを存分に味わってもらわないといけないからな」
これほどまでに頼りがいのある魔物たちが、どうして俺みたいなルーキーの下に来てくれたかは分からないけど、運だろうが何だろうが俺の実力の1つとして魔王界に見せつけてやらないとな。
『大罪』の名に恥じないような魔王戦争……魔物たちの大暴れの時間を『異教悪魔』には楽しんでもらうとしよう。
『異教悪魔』の魔物がどれだけ強いとか、魔名の力がどんなもんかなんて見る必要は無い。
俺たちがやるのは、相手に1度も流れを渡すことなく、初見殺しを押し付け続けるだけで良い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます