第8話 盛り上がる『アピール』
――ギャォォォォォッ!
咆哮を上げながら闘技場に入場してきた色違いの七匹のドラゴン。
あれはドラコーン模して創り上げた偽ドラゴンたちだ。その内の一匹に乗って11人目は姿を現した。
「エントリーNo.11! 『罪の牢獄』の大参謀かつ後衛隊長ッ! 偽りの烙印を押し付ける恐ろしい『
「なかなか恥ずかしいものがあるね……こうやって披露すること」
冷静冷徹だけど、少しだけお茶目なところもある優しき姉御のイデア。
偽ドラゴンに乗りながら、様々な魔物を創りだしては姿形を自在に変えていく、周囲に浮かんでいる様々な色をした正面体も相まって演出が芸術的だ。
ガラクシアの禁忌魔導と並んで唯一無二の『根源魔導』の使い手。破壊力は禁忌魔導に劣るけど圧倒的な応用力があるし、龍や神の基本スキルを使用できるのもあってどんな相手にも的確に対応していけるのがイデアの凄いところだ。
阿修羅みたいなガンガン接近戦タイプも偽神龍の姿になればパワーと機動力で相手をすることができるので死角は俺が考えるには無い気がする。
『構築解析』や『偽生命創造』で常日頃から働いてもらっているが、次の魔王戦争でも相手の魔法や魔導を正面から打ち破る後衛隊長として大活躍してほしい存在だ。
「相手の能力や戦闘スタイルを瞬時に解析して確実に詰ませていく姿はまるで軍師! 本人はそこまで考えるのが好きではないと言っているが、王に頼まれればどんな軍をも崩す方法を導き出すであろう!」
バビロンからの紹介を終えて、イデアは少し照れたのか素早く闘技場から去って行ってしまった。
――ザァァァァッ!
「エントリーNo.12! 『罪の牢獄』の戦闘隊長ッ! 力と技を兼ね備えし圧倒的な鬼の力、そして相手が弱るほどに力を増す『
「……激しい雨風」
闘技場が急に激しい雨風へと天候を変える。
それと同時に阿修羅が中央に現れ、3体の分身とともに美しい演武を始める。あまりに流麗で力強い動作に言葉を失ってしまう。
使用しているのを初めてみるが、この雨風は『天下風雷ノ陣』だ。環境変化をすることができてステータスを上げれるのは、どの戦場でも使える1つの方法になる。
それに同じ能力を持つ3体の分身、『四天阿修羅王』もよく考えれば引くほど強いスキルだ。単純に4人の阿修羅で戦えるなんて反則じゃないか…。
「互いに近接戦闘を強制するかのような制限アビリティ! 反則的に上昇する自身のステータス、天下無双の武技スキルの前には逃げ出したくなること間違いなし!」
阿修羅にはフェンリルやアマツの鍛錬、俺の能力練習にも付き合って貰ったりしているので動きを見る機会は多いが、阿修羅自身も1度大暴れしてみたいと言っていたので、『異教悪魔』との魔王戦争では前線で大暴れしてもらおう。
他の仲間を近くにおけないのは危険だが、阿修羅も自身以外に縛りを敵味方関係なくつけてしまうので考えなくちゃいけないな。
まさしく豪華絢爛ともいえるような阿修羅4人の演武があっという間に終わって行く。
『天下風雷ノ陣』も同時に切ったようで凄まじい3分間だった。
「言い忘れておりましたが、シャンカラとハクは闘技場とイデアの修復が不可能な状態になることから、デザイアは昼寝したいという理由で不参加になっておりますぞ」
「バビロンのスケルトンと『黙示録の獣』も消滅しちゃうだろう仕方ない」
あの2人のアピールが見れないのは残念なのと同時にフォローするイデアやレーラズが大変だろうから少し安心した。
あの2人は『罪の牢獄』における最強の2人としてアピールせずとも理解はしているつもりだ。連携をとれるような能力じゃないけど単体で誰も寄せ付けない圧倒的な力を有しているので『異教悪魔』との魔王戦争では大暴れしてもらいたい。
デザイアはらしい感じもするが、よくニャルに怒られなかったな。日頃働いてもらっているから追加の労力を使いたくなかったんだろうな。
――ヒャォォォォォォッ!
「エントリーNo.12! 『罪の牢獄』の旅人! 止まることなく動き続け、如何なる機能と器官を不滅の存在へと変える『
「久々に鳴き声聞いたぞ」
自由に見えて心配性なシンラ。
リスク管理がとても上手で、相性という概念をすごく敏感に察知することができる頭の良い魔物だ。
空中戦をメインに三種の属性を操作しつつ、周囲の天候を変化させながら制圧し、活動を停止できなくするという変わった力の『
「まさしく神出鬼没ッ! 大空を支配し、天空より『大罪』の恐ろしさを世界に轟かせる姿はまさしく凶鳥! 本人は攻守のバランスが良いと自負しております!」
「確かにバランスタイプって感じする」
闘技場を飛び回りながら3属性を綺麗に放っていくシンラ。
次の魔王戦争でも確実に空を制するためにも頑張ってもらう存在になるだろう。天候操作でいきなり環境を崩壊させてから怒涛の攻めに期待しないとな。
シンラは3分経過する前に時空間を渡ってどこかへと消えてしまった。
大トリがくるからお膳立てってことか?
――ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
震えるような威圧感・闘気・魔力の3種が闘技場入り口から溢れ出ている。
黒と基調とした赤と金のドレスに美しい翼に象徴でもある地獄の輪、都合よく大トリを引いた者が入場してきた。
「最終演技者ッ! 我らが『罪の牢獄』の絶対的リーダーッ! 我らが王への敬愛、そして寛大なリーダーシップからは想像をできないような恐怖の破壊神ッ! 至高にして最強の魔神、全てを破壊することに特化した『
「最後の恥じぬアピールを心掛けます」
『罪の牢獄』の絶対的支柱にして象徴。
個人的に思っているのは、ポラールの『
ポラールはみんなのまとめ役として毎日『罪の牢獄』を仕切ってくれている。おかげで俺が自由に色々やれるほどに助かっている存在だ。
他の面子と変わらず単独戦闘が基本だが、桁違いに上昇するステータスと最強攻撃能力『
「普段は使用する機会は少ないが、『星天魔導』・『極闇魔導』をガラクシアと同レベルで使用でき! そして唯一無二の『獄炎氷魔導』を使用して闘技場を地獄絵図へと変えております!」
「『
俺も言われるまで忘れかけていたが、スキルが豊富で本来は接近戦が得意な魔物なのだ。ただただ『
『
「さぁ! 我らが王よ! 皆のアピールが終わりますが、優勝はどの魔物をお選びになるのでしょう!?」
「これに優劣はつけれんな……皆優勝で今回のエントリー順に我儘を聞いていく……これじゃダメか?」
バビロンに判定を求められたので、少し逃げるように全員優勝の決断を伝えてみる。
「さすが我らが王ッ! なんとも我らの予想通り全員優勝を選択なさったッ! これで皆の願いが叶い戦争への士気も最高潮といえるでしょう!」
「狙ってやがったのか……」
こうして大事な魔王戦争前ではあるが、戦争前の能力把握と同時に楽しい時間を過ごすことが出来た。
全員の我儘を叶えるのは大変だろうが、普段から頑張ってくれているので致し方ないな。
こんな感じで大盛り上がりのアピール大会は終了した。
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