第6話 『3分間』の戦い
「エントリーNo.2! 『罪の牢獄』の新参! 古代のロマンが詰まった最強ゴーレムッ! 呪われし言霊を聴き者は破滅の未来を約束されてしまうことだろう! 登場するのだ! 天津甕星ッ!」
「レーラズの後にインパクトを出すのは大変だぞ……」
――ヒュ~~ンッ ズゴゴゴッ!
レーラズのインパクトをアマツが超えてくるのは難しいだろうなと思いながら、闘技場入り口から飛んできたアマツを見守ろうと思ったら、いきなり大量の追尾式ミサイルと一緒に降り立って爆風を撒き散らしたので驚いてしまう。
俺もどれだけの武装がアマツに存在しているのか把握しきれていない。魔力ビーム兵器やら実弾式だったり飛び回る追尾式兵器やら魔力シールドと多すぎて指示をするにも混乱してしまうのが現実だ。
アマツは自分の意志でも自在に動いてくれるので助かるのだが、いざというときに俺が把握しておくことで適切な指示をだせることを考えると、すぐにでも覚えたいのだが……。
「5つの呪詛を言霊に乗せて放つ恐ろしいスキルッ! そのどれもが戦局を大きく引っ繰り返す可能性を秘めており、高速で空を飛び回るその姿は敵軍を恐怖へと陥れることだろう!」
「バビロンの口調が本当に実況者になってるのが1番のインパクトかもしれないな……所々崩壊してるけど」
堅苦しくテンションの高いバビロンが分かりやすいように、普段と話し方を少し変えて叫んでいるのを見て、実は司会実況をやってみたかったからアピール大会を開いたんじゃないかという疑念が浮かんでしまうが、楽しそうだから放っておこう。
アマツの『
『銅』との魔王戦争で俺が一手目で使用した作戦を、さらに強化した形で遂行できるのがアマツだ。
個人的に気に入っているのは、魔王の命と反対の行動を起こす『
この2つだけで一気に大群を崩せると考えているので、『異教悪魔』との魔王戦争でも、けっこう期待している能力だ。
アマツの武装をたくさん使用しての3分間は無事終了し、3人目の時間になる。
――ゴゴゴゴゴッ!
地面に突如現れた巨大な魔法陣から4体の魔物が生えてくるかのように誕生し、どこからともなく生み出された大量の蠅が闘技場中央上空に集合する。
「エントリーNo.3! 『罪の牢獄』が誇る最強マスコットッ! いかなる魔力をも喰らいッ! 啜りッ! 己のものとしてしまう『
「きゅ~~♪」
6本の脚と4枚の翼を持った目の無い5mほどの狼で物理攻撃に秀でている『渾敦』。
8mはある巨体、人間と羊が合わさったような顔に捻じ曲がった4つの角、虎の牙に人間のような手を持つ二足歩行で耐久面に秀でている『饕餮』。
恐ろしく鋭い棘のような体毛を持つ青い4mほどの大虎で、とんでもなく高い敏捷性と反応の速さで敵を追い詰める『窮奇』。
人間と虎を合わせたような顔をした7mほどの蠍の尾を持つ猪、見た目からは想像できない遠距離攻撃に秀でた『檮杌』。
そして魔力を喰らい尽くす蠅の軍団の中から出てきたのは自由奔放・天真爛漫な『
「1体1体がSSランクの魔物であれば圧倒することができる力を持つ『四凶』、そして使う気があるか分からない最高峰の結界魔導と回復魔導の使い手! 魔力の永久機関とも思える吸収力で今日も可愛く宝石をばら撒いていくゥッ!」
「きゅ~~♪」
出てきてはいないけれど、リトス最強の召喚獣である『
それでもアビリティ・スキルともに幅が広く、『
レーラズには及ばないけど極結界魔導を使用できるのもあり、足止めや耐久面でも大活躍できるんだが、じっとしていられない性格なので作戦にいれると言うよりは自由に気の向くままにさせるのが1番結果をだしてくれそうなタイプだ。
アピールというより、四凶たちと楽しそうに戯れているリトスの自由な3分間が無事終了し、4人目の時間になる。
まだ3人か……観ているだけでもけっこう疲れてくるもんだな。
――キィィィンッ
少しだけ耳に響く音ともに闘技場は結界に包まれる。気温が少しだけ下がり、眩いばかりの星空に天に浮かぶ月が照らす空間へと一瞬にして変わる。
「エントリーNo.4! 『罪の牢獄』のアイドルッ! 夜じゃないなら夜にしてしまえばいいじゃないの精神を持つ『
「やっほー♪」
実は『罪の牢獄』の中でアビリティが1番多い『
改めて見ると、漆黒のドレスと翼が醸し出す雰囲気と可愛らしい桃色の髪が独特な雰囲気をだしている。
極闇魔導・星天魔導・禁忌魔導という3つも『罪の牢獄』の中でもガラクシアしか使用できない魔導を使用することができるけど、とんでもない範囲と威力なもんだから普段は抑えてもらっているけど、『異教悪魔』との魔王戦争では大暴れしてもらう予定だ。
「自身のバフや闘技や魔闘技を実は使える『魔人の権能』を使用して見事の舞踊を見せておりますッ! 我らスケルトンを魅了して何がしたいんだッ!? 皆の者! 頼むから我を裏切るんじゃないぞ!」
「そんなに面白いキャラだったのか……」
ガラクシアの武闘にもバビロンのユニークな実況にも驚かされながら、派手さはないけど美しさはピカイチと思えるようなアピールタイムになっている。
ガラクシア本人は目立っていないように思えるが、四大国全土にルビウスで支配した人間が情報収集のために潜んでくれてアークに色んな情報を還元させてくれているといった功績をはじめ、多くのことで『罪の牢獄』に大貢献してくれているガラクシア、もうすぐ1年の付き合いになるが、まだまだ俺も知りえていない技だったりを今一度覚えておかないとな。
ちゃっかりスケルトンを魅了して終わったガラクシアの3分は、ド派手ではなかったぶん、目の癒しになったので順番的には助かった。
――ガシャン ガシャンッ!
静まり返った闘技場に響くは重厚な金属音。
「エントリーNo.5! 『罪の牢獄』の絶対的守護神ッ! その姿はまるで要塞が如く! たった一人でいかなる困難をも粉砕するのはッ! 『
白と黒が半分ずつという目立つ鎧ではあるが、目立つことなく淡々とダンジョンを護り続けてくれている騎士王。
初見では突破することなんてできないだろうと自信をもって言えるような耐久力、そして距離バランスがとれたスキルの数々。
1人でないと真価を発揮できないという弱点はあるが、味方がやられてしまえば強くなり、1人で多数の敵を相手取ることになれば圧巻の戦闘力を見せてくれるのがアヴァロンの真骨頂。
「立ち姿だけで絵になるのはズルいな」
「まさしく不動の守護神ッ! 我らが王から下された命を、淡々と遂行する姿は臣下の鏡! 仲間の屍を越え、大軍に立ち向かうその時こそが騎士王の生きる場所! その背中……まさしく天下無双なり!」
アヴァロンは2分30秒ほどは剣を地面に突き刺したまま、闘技場の中央で不動の状態を保っていたが、最後に天へとむけて『
なんともカッコいいアピール時間に少し感動してしまった。
次で6人目のはずだが、すでに目が疲れてきたのは俺だけだろうか?
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