エピローグ 『開戦』にむけて
――『罪の牢獄』 居住区 コアルーム
「『
メルが『
『エリファス』を拠点にしている『八虐のユートピア』には取り逃がした『
『八虐のユートピア』は互いの能力を最低限しか知らないようで、残念ながらあまり詳しいことは知ることが出来なかったが、なんで生贄を集めているのか、それと現状どこまでの目的が達成されているのかは把握出来た。
「たぶんだけど『異教悪魔』の魔名ランク上昇条件の1つなんだろうな」
特定の能力を持った人間の魂を8体揃えることが何個かのうちの1つの条件とみた。そして現在揃っているのは2人だけ、エルちゃんとカノンがその中に入っている。
カノンは死んだら魂が自然と回収されるような力を『
「どうやって自分の魔名ランクを上げる条件を知るんだろうか?」
『豪炎』なんかも自分の魔名の上げ方を知っていたけれど、何らかの方法で自分の魔名ランクの上げ方を知ることが出来るというのを調べてみないとな。
もしかしたら『大罪』のEXランクへの道が開けるかもしれない。『異教悪魔』もEXにむけて人間を使って条件を揃えているんだろう。
「バフォメット様……ね」
メルが喰らった記憶の中に、『異教悪魔』の姿が鮮明にあったそうだ。
真っ黒な体毛に4枚の翼に角、山羊の顔をした魔王、それが『異教悪魔の魔王バフォメット』のようだ。
ちなみに『八虐のユートピア』は『異教悪魔』が育てて、力を与えた人間集団のようだが、本人たちは利用されていることに疑問すら抱いていない。当たり前かのように『異教悪魔』の欲を満たすためだけに活動している。
「これで完全に俺がやったことがバレたな」
『
こちらとしてはルーキー期間が終わる少し前に勝負をかけるつもりだから、それまでに仕掛けてくるであろう相手の行動に上手く対処して準備をしていかなきゃいけないな。
俺みたいなルーキーなんて気になんてかけていない可能性もあるけれど、さすがにそれは無いと考えて進めていこう。
「ますたーは認知されてる。報告している記憶があるよ」
「さすがに用心深いもんだな、『異教悪魔の魔王』」
俺のやり方は調べられてしまうだろう。
そんな中でどうやって魔王戦争を避けて戦うか、『異教悪魔』がどんな手段で魔王戦争に持ち込もうとするかを対策しなくちゃいけない。さすがに魔王戦争では数の差が大きすぎるので正直、やりたくはない。
「ますたー、悩み過ぎるのも良くないよ」
「そうだな……まずはやれることから着実に……だな。考えるべきことはたくさんあるから他にも目を向けないとな」
スライム形態のメルを膝上に乗せながら、気晴らしにダンジョンの様子を確認する。
四大学園の7人は特に問題無くアークを出発出来たようだ、ここから先はルジストルがやり取りをしてくれるんだろう。
モニターをのんびりと確認していると、珍しくリーナ1人がコアルームへとやってきた。
「ソウイチ様にいくつかご報告します」
「あんまり良い知らせではなさそうだな」
「まずはミネルヴァ様からのご報告ですが、公国と王国が大きな戦をするそうです。王国は帝国と先んじて開戦かと思われましたが、公国が隙をついて王国を攻めた様子」
「人間同士の争いも激しくなってきたな」
人間同士の争いは非常に長い。
1戦で数カ月かかることもあるし、四大国のうちの1つが勝利するまでには下手したら100年以上はかかるんじゃないかという感じがしている。
ルビウスで手に入れた資料に過去の戦争に関連するものがあったから目を通してみたが長すぎて途中で断念してしまった。
王国と公国の争いになれば、『異教悪魔』のいるエリファスにも影響が出てくるはずだ。国境からは離れてはいるが、もしかしたら公国騎士が滞在することになる可能性はある。そんな中でどんな動きをしてくるかが気になるところだ。
だが運は俺のほうに少しだけ向いているのかもしれない。迷宮都市ではあるが公国の一員として気にしなくてはいけない要因が1つ増えたのは相手にとっては嫌な話だろう。
「他の報告ですが、聖国に誕生した新たな3人の勇者ですが、早くもSランクダンジョンを攻略をしたようです」
「嫌な報告だな……俺たちが出会った勇者よりも遥かに強いくらいに思っておくのが安全か」
勇者は暁蓮と坂神雫が少し抜けて強いと言う話だったが、それを覆すことも大いに考えられるという報告だ。
もしそうだった場合は、次の勇者による魔王討伐旅にむけての警戒も必要になってくる。頭の痛い話だ。
「帝国の動きも激しくなりそうですね。戦争が本格的に始まるとなれば……帝国騎士団の動きも激しくなるかと思われます」
「あぁ……何が起こるか分からない、しっかり警戒していこう」
ルーキー期間の終わりが近づくにつれて、世界の情勢は大きく変わっていくように動いている。
特に人間界は歴史の境目とも言えるような戦争が始まろうとしている。どのような終わりになるかは分からないが、様々な種族の血が流れ、長引くにつれて苦しむ者が多くなっていってしまうだろう。
もし四大国がそれぞれ覚悟を決めて、最後まで行く気ならば、果てしないほどの長い戦いになる可能性もある。
「それをただ見ているだけってのは……出来れば避けたい」
人間同士の戦争が終わる頃には、各地ボロボロになり、また1から復興にむけて血を流さなくなる未来になってしまう。
そんなものを受け入れてしまえば、俺が理想とする世界からは程遠くなってしまうような気がするので、どうにかしてやっていかなきゃいけない。
とにかく……まずは強くならなきゃ意味がない。
「俺だって正直、運に恵まれてここまで来た……同じような展開になっている勇者がいるかもしれないって考えたほうが、身が引き締まるな」
「そうですね。油断大敵が1番かと思います」
リーナも賛同してくれているということは、相手の戦力を考えすぎると言うのは悪くないと言うことだ。
もしかしたら勇者の誰かがハクやシャンカラ、ポラール級のヤバい奴っていう可能性を考慮しておかなきゃいけないってことか……震える。
「残り数カ月、配合回数はまだ残っているから全部使い切る形で、Gランクの魔物に使い切ろう。そしてLvを最大まで上げれるように考えないと……」
「アークの防備についてもお願い致します」
「もちろん、カノンにアルバス、ソラが居ればある程度は大丈夫だろうけど、相手がどんな形で仕掛けてくるか分からないから、万全と思えるまで試行錯誤してみるよ」
時間は有限だ。
やれることを効率良く、そしてどんなことにも慌てない対策をしていくには、時間を上手に使っていかなくちゃいけない。
ルーキー時代の締めくくり、俺の未来を左右する時間になりそうだ。
『異教悪魔』との戦い、その先をも見据えて動いて行かなくちゃいけない。
「こんなにもポンポン次から次へと……まるで人間が読んでるらしい絵本とやらの世界観だな」
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