エピローグ 始まりは『最果て』へと
当分帰ってきそうにないシンラを置いておいて虎蜘蛛を見てみると、1枚の魔名カードを見つめて止まっていた。
『王虎』の魔名、これはミルドレッドが最後に俺に遺してくれた物であり、唯一虎蜘蛛だけが宿しているという特別な魔名だ。
俺の初めての配合は虎蜘蛛だし、最初は全部虎蜘蛛が救ってくれた。今では『
『王虎』の魔名カードは俺たちの始まりのカードでもあるからな。
虎蜘蛛はみんなを待たせていると思ったのか、選んであったアイテムを寄せて俺のことを見てきた。
語ることは無いが、覚悟は決まっているという感じだな。
「真名どうしようかな」
「虎蜘蛛は女性だから可愛い名前をつけてあげなよ」
「……女の子だったのか?」
イデアの発言に正直驚いてしまった俺を見て怒ったのか足で頭を突かれた。けっこう痛い。
性別は初めて知ったな。かなり悩むが俺の最初の戦争での相棒で、俺たちの始まりでもある虎蜘蛛にはこの名前をつけるか。
周囲を見ると、みんなかなり不安そうだ。
虎蜘蛛はランク関係なしにみんなのお母さんみたいな魔物だったから信頼が厚い。特にポラールとガラクシアは付き合い長いし仲がいい。
多くの魔物の相談役としても役立っており、本当にみんなを支えてくれている存在がゆえにこの配合の結果は不安なところだろう。
俺の予想では、予想の遥か上をいって、さらに過保護なお母さんになりそうな気がしている。
「ご、ご主人様……怖いです」
「うー、私も!」
ポラールとガラクシアが我慢できずに声をあげる。
虎蜘蛛はそんな2人のもとに行くと、足で器用に2人の頭を撫でている。
3人のやりとりを見ていると、なんだか感動してくる。
画面をタッチして配合を開始する。
1.魔名カード『天上天下唯我独尊』 ランクEX
2.魔名カード『腐夢』 ランクEX
3.魔名カード『大罪』 ランクS
4.聖魔物『悪神台座』 ランクEX
『注意:この魔物は2度目の配合ですが、よろしいですか?』
「どんな姿になろうとこれからも頼むぞ…『デザイア』」
『デザイア』という真名を授ける。
そんなデザイアが選んだ配合アイテムは、虎蜘蛛の言葉ではなく、イデアから聞いた話だが、ランクが高いモノばかりで俺に申し訳ないそうだが、とにかく強くなって、ポラールやガラクシアたちを近くで支えてあげたいとのことだそうだ。
役割はアヴァロンと似た感じの守護神を実は希望しているらしい。
画面をタッチするとシンラの時と同じような黒い光が辺りを照らす。
するとコアルームが少し揺れはじめる。
『確認:超変異が発生しました。配合を続けます』
少しずつ大きくなっていくデザイア、全長15mほどありそうな巨大蜘蛛になり、よく見ると体の上のほうに玉座のようなものが形作られていくように見える。
不思議と不安は感じない。デザイアは俺たちの母だからな。ただ大きくなり過ぎじゃないか?
現れたのは大きくなった黒蜘蛛の上に所々砕けた頭蓋骨でできた玉座、その玉座の下のほうからは触手が伸びており、その触手が蜘蛛と玉座をくっつけているようだ。
玉座には人間形態のメルよりは少し大きい身体をした黒のコートに猫耳フードがついた美女が棒付き飴を舐めながら足を組んで座っていた。
【アザトース】 原初の神 ランクEX Lv1000 固定
真名 デザイア 使用DE??
ステータス 体力 EX+99 物理攻 EX+99 物理防 EX+99
魔力 EX+99 敏捷 EX+90 幸運 EX+99
アビリティ ・『
・無限無窮の最奥 EX
・無明の閨房 EX
・腐敗する智慧 EX
・醒めぬ夢 EX
・現れぬ混沌 EX
スキル ・『
・最果ての思考 EX
・囚われぬ神 EX
・思考具現化 EX
・気付かずの破壊 EX
????
・『
・基本ニートなので自身が落ち着ける空間から出たくない(上の本体が)。
・ちなみにアビリティとスキルは下の『ニャルラトホテプ』も所有しており、アザトースが寝ている時はニャルラトホテプが勝手に判断して活動する。意思は別々。
「さぁ皆で妾たちの王を最果てに連れていこうぞ。……主、お部屋ちょうだい」
「引きこもりが生まれてしまった」
「引きこもりのアザトースに過保護なニャルラトホテプ、まるでご主人様とミルドレッド様みたいですね」
「それは俺が引きこもりって言いたいのか?」
「主……妾にお部屋をちょうだい」
虎蜘蛛は巨大化してニャルラトホテプへと進化したようで、アザトースという主なのか子どもなのか分からないキャラが追加で誕生した。
一応アザトースが本体で、俺が名付けたデザイアはアザトースに付けられたもの、ニャルラトホテプも1体の魔物であるが、アザトースが上位であるようだ。
基本は合わせて行動している魔物で、デザイアはお昼寝をしているので、ニャルラトホテプの判断で活動するって……いいのかそれ?
「妾だってやる時はやるのじゃ……やる気になればの!」
「胸張って言えることじゃないだろ。まぁとにかくエリアを作らないとな」
「妾らのエリアじゃ、もちろん手を加えさせてもらってもよいかの?」
「まぁ…自由にしてくれ」
後できればニャルラトホテプから降りてきてくれると話しやすいんだが…。
自分が住むことになるエリアには並々ならぬ情熱があるようなので、後でじっくりコアルームで決めてもらうことにしよう。
今更だが。魔物のLvって999が最大ってどっかで説明されてなかったっけ? なんかLv1000になっているのはどういうことなんだろうか?
とにかくデバフを撒き散らかすことに特化した魔物だ。ニャルラトホテプがいる限り、デザイアはほぼ不滅。自身以外のステータスはマイナスとかいう異次元の段階まで下がるという反則だ。存在しているだけで全ステータスも下げて、能力ランクにすら影響を与える。
ポラールと並びたてる存在だ。あまりにも強すぎる。
まさかイデアや阿修羅よりも虎蜘蛛ことデザイアが強くなるとは正直思っていなかった。
そして、またしても『
「でも……凄いことだな。こんなにも魅力的な配下がたくさんできるなんて」
こんなにも凄い魔物が集ってくれたのに、黙ってダンジョンに引きこもるのは、そろそろ終わりにしないとな。
さっきポラールに言われた引きこもりというのを撤回させるためにも、覚悟を決めて世界に進出していくことにしよう。
「主……お部屋を急ぐのじゃ」
とにかく……今日も『罪の牢獄』は平和だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます