第12話 最後の『魂』を継ぎし者



――『罪の牢獄』 ダンジョンエリア 闘技場



1.魔名カード『王豚』 ランクS

2.魔名カード『コピー』 ランクSS

3.聖魔物『神秘の心臓』 ランクEX

4.魔名カード『聖光』 ランクS

5.魔名カード『神之月』 ランクEX

6.魔名カード『天炎』 ランクS

7.魔名カード『古代機械』 ランクSS

8.魔名カード『魔眼』 ランクS

9.聖魔物『邪神のイヤリング』 ランクEX

10.魔名カード『魔雪』 ランクS

11.魔名カード『災禍』 ランクEX



 ソラがアークを拠点としてくれたことにより、まさかのEXランクの人間を3人仲間にした報酬を獲得できたので、かなり久々にガチャを引けた。その結果がこれだ。

 3体追加したばかりだが、配合回数は残っているのでもう数体ダンジョンに配置してみてもいいが、出来ればチケットでGランク以外の魔物を配合してみたい気持ちもある。


 そしてそんな魔物が目の前にいる。


「アオォォォンッ!」


「ピケルさん……どういうことですか?」


「……契約破棄になってしまった。本当にごめんなさい」



 ピケルさんがフォルカの研究、そしてフォルカを参考にしたゴーレムを創り終えたとのことでダンジョンまで返しに来てくれたのだが、俺に跳び付いてきたのは見覚えのある狼系統の魔物。

 冷んやりとした冷気を纏い、少し大きめの身体とふわふわ体毛、フォルカが契約していた『氷月狼ハティ』が何故か召喚魔法を使用していないのに呼び出されている。


 召喚系統能力の契約云々はよく理解していないが、とりあえず俺のところに戻ってきてくれるなら問題は無いと思っておこう。



「……貴方に懐いている」



 どうやらフォルカを使って実験を繰り返していた時、好奇心で召喚してしまい、フォルカを操作していたのが『罪の牢獄』の者じゃなかったことに怒ったハティは契約を破棄して野生の魔物と化してしまったようだ。

 それで研究も終えたから頑張って連れてきたとのことだ。



「契約破棄しちゃったもんは仕方ない。よろしく頼む」


「アオォォォンッ!」



 ピケルさんから限りなく人間に近い構造で作られており、定められた設定により人間で言うジョブに近い戦闘力の違いを引き出すことに成功したとの話を聞いた。

 まだまだ試作段階ではあるが、完成したら俺も数体貰えるとのことなので大変ありがたい。

 さらにはフォルカには使用した者の力が少しずつ宿るようで、俺やピケルさんの力のほんの一部がいずれ形となる可能性があるという話をしてもらった。



「研究を続けたけれど、分からないシステムが多かった」


「ピケルさんが分からないのなら、俺が気にしても意味ないことですね」



 それでも新たなゴーレムが創ることが出来たこと、ホムンクルスに近しいモノではあるようだが、ピケルさんから言わせれば大きな進歩だったようなので感謝された。

 こうやって同盟相手が勢力を増やすというのはありがたい話だ。やはり心の余裕というのは、他者とのやりとりをする上で大事な要素だと感じることがある。俺だって今は落ち着いているから広く構えることが出来ているが、この先どうなるかは分からない。

 出来る時に同盟相手との絆を深めて、より良い関係を気付いておかなくちゃな。



「返しに来ただけ……ごめんなさい。少しやることが残っている」


「わざわざありがとうございます。またゆっくり話でもしましょう」


「楽しみにしてる」



 ピケルさんはそう言うと自分のダンジョンへと戻っていった。

 相変わらずのマイペースさだが、彼女のゴーレムには世界中から人気がある。戦闘力の高い物は人間界には出してはいないようだが、それでも街の門番や警備として役に立つゴーレムを求めて各国から注文が殺到しているようなので、あまり暇な時間というものはないんだろう。


 俺はとりあえずハティを登録するため、そしてせっかくの機会なので配合をしようと思い、コアルームへと向かった。








――『罪の牢獄』 居住区 コアルーム



 ハティが楽しそうに俺と一緒に並べられた配合アイテムを見て周っている。

 冷んやりとした冷気が心地よく、体毛がフワフワで触っているだけで極楽だ。そして面白いのが、どのアイテムがいいか選ぶ気がまったく無いことだ。

 つまり選んでくれということで良いのだろうか?



「マスターに選んで欲しいみたいだよ」


「ありがとうハク」



 コアルーム最強番人、そしてお昼寝マスター2号であるハクがハティの考えを伝えてくれた。ちなみにお昼寝マスター1号はデザイアだ。

 ハティに配合してみたいものは2つのパターンがあって迷っている。


 『水神』や『水銀』を配合して、なんとなく属性特化の道を目指してみるパターンか、とにかく強くなりそうな感じでランクの高さを重要視するかだ。

 

 魔名カードの1つはすでに決めてあるので、それ以外が問題だな。



「悩ましいもんだな」


「ハウゥ~ン」



 まさか主人である俺をここまで悩ませるつもりは無かったのだろう。ハティが心配してくるような表情で甘えてくる。

 アドバイザーであるハク先生は夢の中へと旅立ってしまったので、俺がしっかりと決めるしかない。

 水に近いもので統一してもいいが、それだとメルとなんとなく被りそうな気もしたので、ここは直感で強そうなのを選ぶべしと見た!



1.魔名カード『王虎』 ランクS

2.魔名カード『神之月』 ランクEX

3.魔名カード『災禍』 ランクEX

4.聖魔物『神秘の心臓』 ランクEX



 正直なところ、先ほどガチャで手に入れたEXランクを選んだだけだ。次にGランク以外の獣系統の魔物が仲間になってくれたら、最後の『王虎』の魔名カード、コアを破壊して手に入れたこの魔名を使おうと思っていたから、出来れば高ランクを混ぜてあげたかった。

 先ほどのガチャで都合よくEXをバランス良く手に入れることが出来たおかげで『王虎』以外はEXで揃えることが出来た。


 画面をタッチして配合のボタンを押す。

 4つのアイテムが光となってハティへと吸い込まれていく。


 バチバチッ! と白い何かが弾けている。



『確認:超変異が発生しました。配合を続けます』



 『大罪』を使用していない時に発生した超変異。

 正直失敗の不安はあるが、『王虎』の魔名が俺に安心感を与えてくれているような気がする。ミルドレッドの魂は失敗しないという謎の安心感が。


 魔法陣から出てきたのは、さらに大きくなった大狼。

 白銀の体毛と血の色のような濃い赤い模様がいくつかも施されている。

 アセナよりも感じる圧倒的な獣としての気高き魂と威圧感を感じる。



【フェンリル】 神滅狼族 ランクEX Lv700 最大Lv915

        真名 無し 使用DE200000000

 ステータス 体力 SS+60  物理攻 EX+91  物理防 SS+58

       魔力 SS+43  敏捷 EX+99  幸運 SS+59

アビリティ ・『災禍顕現破滅之神狼フローズヴィトニル』 EX

      ・『希望の陽炎・絶望の川ヴァナルガンド』 EX

      ・『全て掻き消ルナティックす月光之王・マーナガルム』 EX

      ・その姿、幻日の如し EX

      ・『白虎之魂シン・ミルドレッド』 EX

スキル   ・神滅の獣闘技 EX

      ・『氷月ノ神魔槍グングニル・ハティ』 EX

      ・『貪り縛る足枷グレイプニル』 EX

      ・災厄の咆哮 EX

      ・狼王の覇気 EX


・最強の獣族の1体。圧倒的な速さを軸にバフ打ち消しや特殊状態異常である『災禍』を付与させながら戦う物理タイプの魔物。属性攻撃は1種類のみだが、どの属性の魔物とも戦える戦闘力を持つ。

・非常に懐きにくく、疑い深いが懐けば、忠義の高さと統率力を見せてくれる。



「クウゥゥンッ」


「さらにフカフカになったな」



 巨大な体を寄せてきてくれる。スキルのおかげか、いきなり懐いてくれている様子のフェンリル。

 ミルドレッドの名を冠したアビリティを見て泣きそうになるが我慢しておく。


 『大罪』ではない初のEXランクの魔物だ。真名をどうにかしてあげてあげたいが、付与回数が残っていないので報酬で頑張って目指すしかない。

 そしてLv上限があり、まだ700なので阿修羅や五右衛門、アヴァロンと鍛錬してもらってLvを上げなきゃな。


 それにしても超変異のおかげでEXになったのか、超変異のおかげでEXの中でも強い形になったのかは不明だ。

 『大罪』のように個人パワー全開という魔物ではなく、バランスが取れているが、他の魔物と連携をとりやすい性能にもなっている。



「可愛い奴だな! みんなのところに挨拶しにいくか!」


「アオォォォ~ンッ」



 Lvが上がり切ったらエリアのことを考えてもいいかもしれない。

 とりあえずは挨拶が終わったら、なんとなくだがイデアのところに預けて教育してもらうことにしよう。


 デザイアに続いて、『王虎』の魂を持つ魔物が誕生した。そして恐らく最後の『王虎』の力を持つ魔物にもなるだろう。

 後はフェンリルと一緒にミルドレッドを陥れた奴らを地獄に叩き落すだけだ。





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