第6話 猛牛『最前線』
『水の魔王』と1vs1戦いたいというアイシャのお願いを聞いて1週間が経過した。
『水の魔法ヴォジャノーイ』の同盟で今回の魔王戦争に確実に参加してきそうなのは調べた感じだと4体くらいかなと思っている。
これがなんとも面白くて、『水の魔王』がいる帝国領土のダンジョン連中なのだ。過去の魔王戦争でも『水』に何度も加担しているメンバーだ。
帝国を上手く制圧していきたい俺からすれば一石二鳥の話だ。
残り3週間程度で4つのダンジョンを攻め込んでもいい。魔王戦争による報酬は手に入らないが、アイシャは『水』だけ手に入ればいいとのことなので、俺の方で挑んでみてもいいだろう。
ちなみに魔王の魔名は『石獣』『偽宝』『轟雷』『巨岩手』というものだ。ランクは『石獣』と『轟雷』がAで『偽宝』と『巨岩手』がSランクとなっている。
さすがの戦力で調べてみた感じ、1番厄介そうなのは『偽宝』かな。宝に扮した魔物が多くて、ステータスが高くてデバフを撒くのが得意な魔物が多い魔名のようだ。
出来れば魔王戦争開始少し前に、4体同時に叩いておきたい。1体ずつにすると警戒されて互いに守り合うような面倒な展開になってしまいそうだ。
『
何が凄いって、ハクとシャンカラは他の誰かがいると自分の影響を受けちゃうから1人で良いと言ったことだ。
ポラールもソロで大丈夫と言ってくれたが、ポラールは俺的にダンジョンに俺と一緒に待機していてほしいので待機組だ。
『石獣』を頼んだのが『ガラクシア』『五右衛門』『メルクリウス』の遠距離得意トリッキー3人衆にお願いした。五右衛門がデコイに役になりつつ、相手の力を奪うことで動きを停滞させて、ガラクシアとメルが遠距離から木端微塵にしていくグループだ。
もしかしたら入り口でガラクシアがぶっ放して終わる可能性もあるけど…。
『轟雷』は正直シンラだけでもいけるかと思ったけれど、『シンラ』『バビロン』『リトス』というチームだ。雷は全てシンラが回収して回復してくれるから、雷だけならば1体で完封できる。バビロンのスケルトン軍団にリトスが喰らった魔力で強化する物量戦争を仕掛けてもらうチームになっている。
一番厄介だと思った『偽宝』は『ハク』に任せた。本気出したらすぐ終わると言っているので大丈夫だろう。デバフは効かないし、そもそも能力発動させないから問題無しのはず!
『巨岩手』は『シャンカラ』に任せた。これもハクと同じで1人で任せて問題ないだろう。正直規格外の2人なら途中で他の魔王が乱入してこようと、どうにかなると思っている。
そしていつでも動けるように待機しているのが『ウロボロス』『ポラール』『イデア』『デザイア』がいる。一瞬にして各地に動ける面子なので、なにがあっても大丈夫だと思う。
『アヴァロン』『阿修羅』『レーラズ』はダンジョンの守護に専念してもらう。
正直言えば、こんな戦力を自由に動かせることがどれだけ凄いことか、本当に15体もいるので、自由に戦術を組み立てられる。各々が核になれる強さもあるし、誰がソロでも攻略出来るんだろうけど、念には念を入れて『石獣』と『轟雷』は複数で挑むことになった。
まだ期間はあるから再考していくけど、何かが無い限りはこのチーム分けで行こうと考えている。
「帝国にいる魔王たちを敵に回すことになりそうだけど……バレなきゃ問題無い。一夜で全部終わらせることができればいけるだろ」
一気に4つのダンジョンを制圧して魔王を倒そうとする行為だ。
帝国領土内にいる魔王には特に目をつけられるだろう。一気に4つもやれるのは『
それでも一夜で4体の魔王を1体のルーキーがやるなんて思われない可能性もあるしな、そもそもバレなきゃ問題なし!
「ますたー、本隊も来たよ」
「ありがとう、メル」
そしてアークに昨日到着した最前線プレイヤー軍団「黒鉄の猛牛」の先行部隊。
本隊が来るまでに宿の確保やら準備やらをしにくる面子なんだろうけど、そのおかげでこっちも事前に準備出来たから助かった。
そしてメルの報告によれば「黒鉄の猛牛」本隊も到着したようだ。
ダンジョンに挑むなら自由にさせるし、残りのことは「紅蓮の蝶々」と『
目新しい情報を持っているわけでも無さそうだし。
「結局弱い」
「まぁこの世界に来て、まだ半年くらいだからな」
半年換算で考えれば相当強いし、成長速度は凄いんだろうけど、俺に挑むのは甘いし、デザイアが召喚した魔物たちには勝つことが出来ないだろうってレベルだ。
本格的に挑むのは下見が完全に終わってからだろうが、どの段階を下見って言うのか分からないから、少しだけ楽しみにしておこう。
そして俺は本日訪れる客人を迎え入れる準備をした。
◇
――『罪の牢獄』 ダンジョンエリア 闘技場
「自信ある」
俺の眼前にはピケルさんがフォルカを参考にして作成された。見た目は完全に人間にみえるゴーレムが立っている。
ホムンクルスと言う訳でもなく、しっかりゴーレムとのことだが、本当に人間にしか見えないのは凄いもんだ。
ピケルさんの実験と俺の『
すると人型男ゴーレムは剣と盾を構えた。
戦い方まで人と同じことが出来るゴーレムなのか!? そんなこと出来るんだな。
「『
俺の両腕に真っ赤な刻印が刻まれる。
ステータスが増大されて、身体が軽くなって、神経が研ぎ澄まされていく感覚がある。
とりあえず阿修羅に教わった何種類かの構えを試しながら戦っていくことにしよう。
――ドンッ!
人型ゴーレムはかなりの勢いで跳んでくる。
この予備動作無しで跳んでくるところは、しっかりゴーレムの動きなのは少し笑えてしまう。
外見で騙して、中身のゴーレムっていうのは、分かっている今はいいけど、初見なら驚くこと間違いなしだな。
「渾身斬り」
「スキル使えんのかよっ!?」
言葉を発しながらスキルを武技を発動してくるゴーレム。
たぶん見様見真似だろうけど、かなり鋭い動きだけど少し単調な気もする。
俺は動きを見切りながら回避していく、軽く打撃を当ててみたけど、しっかりゴーレムらしく硬かった。
「ハンドキャノン発射」
「まるで全身兵器だな!」
――ドドドドッ!
ゴーレムが指先を俺に向けて、指先に突如空いた穴から魔力の弾丸が連射される。
とりあえず走って避けられる程度の攻撃なので、見極めながら立ち回る。
俺の『
「武器変更」
剣と盾が収納されて、ゴーレムの体から薙刀が出現する。
……冒険者が使用しているような武器は全部使えますって流れなんだろうな。
ゴーレムが薙刀を構えて、こちらへ跳んでくる。
「まだ俺の方が速そうだな……俺けっこう身軽だし」
人間らしい戦い方が出来ることにこだわりすぎて、前戦っていたゴーレムよりも速さとパワーは劣っている。
特に体の大きさを人間と同じようにしているからパワーの方はイマイチだ。
俺でも受け止めることが出来るし、見極めることが出来る。
ピケルさんに、しっかりと性能の報告をするためにも、頭の中で情報の整理をしながら戦闘を続ける。
互いに良い実験となった模擬戦は、なんだかんだ1時間以上続いた。
それだけで俺の体力は尽きる寸前まで行ったんだが……。
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