第5話 正直な『お願い』
――『罪の牢獄』 居住区 会議室
『
デザイアのところに行って愛でようと思ったんだけど、恥ずかしいのかエリアに入れてもらえなかった。魔王が入れないエリアってどういうこと?
ウロボロスは快く頭の上に乗せてくれたので、俺の撫でが伝わっているか分からないけれど、とりあえず頭の色んなところを撫でまわしておいた。
そして1番頑張ってくれたポラールもたっぷり愛でておいたら真っ赤になって倒れてしまったので、とりあえず俺の部屋に寝かせておいた。
「地獄の門」にほったらかしにすると怒りそうなので、ベッドのある俺の部屋にしておいた。
そして今は「紅蓮の蝶々」のレディッシュと『
「プレイヤー間であることが話題になっています」
「話題?」
「最前線組ギルドが『罪の牢獄』攻略に名乗り出たんだ」
「帝都の冒険者ギルドで高らかに宣言したそうよ」
「ちなみに「黒鉄の猛牛」とかいうギルドか?」
「知っているんですか?」
3人が驚いたような顔をする。
もしかしてとは思ったが、まさかあの時の黒ずくめの集団が『罪の牢獄』にやってくるとはな。帝国かどこかの差し金か? 帝国の参謀はガラクシアが弄っているのでアークに悪影響になりそうなことは自然に避けるようになるので大丈夫だとは思うけど…。
まぁたくさんいる中に俺が討伐目標である奴がいるんだろう。
それにしても最前線とやらに高らかに宣言されて、盛り上がるようなダンジョンになったということは知名度が上がっていると捉えれば1人の魔王として少しだけ嬉しいことだ。
「まぁ大丈夫だろうけど、注意しておくか」
「40人規模のギルドだから、かなりアークが騒がしくなりそうね」
「お金を落として繁盛させてもらうとするか……絞れるだけ絞ったらダンジョンに挑んでもらってDEになってもらおう」
「僕らの中でも最強の集団が来るのに、やっぱり脅威にならないくらい強いんだ」
「そんな簡単に負けるほど魔王ってのは甘くないからな……頼りになる配下が多いもんでね」
プレイヤーの特徴として、数が集まれば何でも出来ると思っている過信と、少し魔物や魔王に対して、そこまで脅威に見ていないように感じる。挑んでみればなんとかなるんじゃないかって思っている部分が大きいように見える。
復活出来るからかもしれないけどな。7人ずつしか時間差で入ってこれない時点で魔王有利なのに自信を持ちすぎなんだよ。
人間と魔物じゃステータスの基礎値に大きく差がある。
ただでさえ、Lv差があるのに少人数で挑むのは愚策だ。何故か5人とかで意気揚々と挑んで来るプレイヤーの気が知れない。まぁ速く帰りたいんだろうな。
とりあえず帝都で出会った事について3人に話しておく。
それとアークに来た時はどんなことをするのか、街に悪影響を出すようなことをしなければ報告しなくていいということを伝えておいた。
プレイヤーからみたらこの世界は『Free Desire Online』とか言う世界らしいので、非現実世界だと思って、好き勝手に街でやられると困るので、監視だけは続けてもらわないと。
「「最前線組」はダンジョン攻略に全力だからね。それ以外は特に何もしないと思いますよ」
アイカが同じプレイヤー視点から語ってくれる。
何かがあったら「紅蓮の蝶々」に任せて、普段は同じプレイヤー集団である『
3人には、自分たちがピンチになったら全力で逃げることだけは伝えておき、最終兵器のビエルサにも頼っていいからと言っておく。
プレイヤー最強集団の1つがどんなもんか素直に楽しみにしておくか。
◇
――『罪の牢獄』 居住区 食堂
最前線組とやらがアークに来ると言う話から2日後。
少しプンプンしているアイシャに昼ご飯を提供させていただいている状況だ。
俺との同盟を継続出来て、少し落ち着いたように見えたアイシャだったが、ダンジョンにいきなりやってきて、何やら怒っています雰囲気だったので昼ご飯を提供させて頂いている。
「『
「……確かにそうだな」
「いつの間にソウイチ自身も強くなっていたのですか? スキルはチケットでしか獲得できないのではないのですか?」
「実績で魔名レベルが上がってな。今SSランクになってて、1つだけスキルを覚えたんだよ」
「そのスキルだけで『
「まぁ使用してから時間かけて強くなるタイプなんだけど、しっかり時間稼げれば強いスキルなんだよ」
「少し前まではソウイチ本体が弱いことが弱点でしたのに……」
「今でも俺自身は戦いたくないけどな……というより称号を得られたこと自体、どこか裏がありそうなもんだけど……」
やっぱり他の魔王からすれば『
俺が『
今のところ俺に挑もうとする魔王はいないから安心だ。
アイシャは同盟だから祝いに来たというより、『
「また私とソウイチの距離が開いてしまいましたね」
「アイシャも『
「なりたくない魔王はいないと思います。私も強い魔王を目指しているので、いかなる称号をも手に入れたいと思っています」
「強い魔王を目指しているのは俺も同じだな」
「『
「……アイシャならすぐにでも追い抜かして行きそうで怖いもんだよ」
「言ってくれますね」
けっこう格好つけて言ってみたんだが、なかなか恥ずかしいな。
でもアイシャならば、歴史になんか当てはまらない魔王になると思うし、俺だって誰かの足跡をなぞるような魔王になりたいだなんて思わない。
すでに足跡なんてなぞっていないが、今は理想が違えど、アイシャならば一緒にしっかと我のある魔王同士としてやっていけると思っている。
俺の発言に火がついたのか分からないけど、ドラコーンにヒソヒソと何やら話をしているアイシャ、というかお昼の時間帯にダンジョンのエースを連れて、他ダンジョンに遊びに来れる時点で、アイシャはルーキーにしては相当な大物だと思うんだけどな。
「ここに来たのはもう1つ理由があるんです」
「そっちがメインか」
「『水の魔王』と一騎打ちをしたいんです」
「同盟相手をどうにかしてほしいと?」
「あれだけ大口を叩いておいてなんですが、同盟の多くが参加してくるかもしれないという情報を得ました。魔王戦争のルールなので当たり前のことなのですが、私は『水の魔王』だけで精一杯です」
「……貸し1つだし、俺だってやれるか分からんぞ?」
「そこは『
「強気なのやら、無謀なのやら難しいもんだな」
まずは『水の魔王』の同盟で今回、魔王戦争に出てきそうな相手をしっかり探らなければいけない。
アイシャは無理難題を押し付けているという自覚があるのか、相当申し訳なさそうな顔をしているけど、うちの『
それに厳しいと分かっていても、『水の魔王』に挑まなければいけなかった理由がアイシャの中にしっかりとあるのなら、同盟である俺はそこを支えるだけだからな。
「俺はすぐにでも調べるから、何か分かったら連絡を取り合おう」
「ありがとうございます。『水の魔王』は任せてください。今回の借りは絶対に返します」
「アイシャがどんな手段を使ってでも『水の魔王』を殺したいってのは、よく分かったよ……俺も全力を尽くすさ」
魔王戦争開始までに、どんな準備をしなければいけないかを話し合い、とりあえず今日のところは解散になった。
俺に頭を下げてまで『水の魔王』を殺したい理由が気になるところだが、まずは忙しくなりそうだから、しっかり予定を組まなきゃな。
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