第7章 大いなる風は『黄金』の意志に

プロローグ 『帝都』までの道のり


――『ゴーレム魔城』 迷宮都市『バルデス』 街の入り口



 ラムザさんが勇者に討たれて1カ月が経過した。

 俺は帝都に行くために、ピケルさん協力でコア転移をさせてもらって、『ゴーレム魔城』のある迷宮都市『バルデス』から帝都に向かわせてもらえることになった。


 ここから帝都までの道のりを見ておきたいのと同時に、帝都周辺の雰囲気と冒険者たちの活動やアルカナ騎士団が今忙しいと思うので、間近な視点で学びたいと言うわけだ。


 そして俺自身、久々な『フォルカ』をピケルさんのところに持ってきている。

 どうしても見せて欲しい+研究させて欲しいとのことで、フォルカでの帝都に行く計画を断念して、ピケルさんへ預けることにしたのだ。


 なので魔王の姿で帝都までの道のりを楽しむことになる。

 外見が完全な人型なので、余程のことが無ければ気付かれないだろうと言う想定だ。

 護衛の阿修羅とメルが大抵の能力を弾いてくれるし、メルは基本気付かれることがないだろうから大丈夫だろう。



「これは凄い。私が求めているゴーレムの派生でもある」


「ゆっくり研究してください。俺たちは帝都に行きますので」


「気をつけてね」



 手をヒラヒラと振って挨拶してくれるピケルさん。

 ピケルさんの優しさあって、最新式のゴーレム馬車と帝都に入るための許可証をいただけることになった。本当にありがたい。


 俺と一緒に帝都までの道のりを楽しんでくれるのは阿修羅とメル、そしてアルバスとカノンにも付いてきてもらうことにした。

 アルバスとカノンはアークで色々活動してもらうのも良かったが、色んな話を聞きながら、帝都に到着した後、スムーズに冒険者ギルドに入るために同行してもらうことにした。


 ピケルさんが作ったゴーレム馬車に乗り込む。魔力を注げば疲労なんて気にせず動き続けることが出来る馬車で、かなりの金持ちだけがピケルさんから買うことが出来る逸品らしい。

 ちなみにフォルカを研究させてくれるお礼らしい。


 必要な物品も数々頂いたので旅の準備は万全だ。

 もしアークに緊急事態が起きてしまったら、とりあえずウロボロスと叫んでおけばどうにかなるので安心だ。


 さっそく俺たちは馬車の乗り込んで、帝都へと出発をする。


 先頭に乗って操作してくれるのはアルバスとカノンなので安心して大丈夫だろう。

 後ろについている荷台もしっかりしていて、中も快適だったのでくつろげそうだ。



「冒険者気分を味わっておくのも悪くないな。自分と違う世界観を味わうのは新たな考えに辿り着くかもしれないからな」


「若の考えは難しいな」


「ますたー、お昼寝してもいい?」


「いいぞ、おいでメル」


「うん♪」



 スライム形態のメルを膝上に乗せてあげる。

 帝都まではそこまで時間もかからないだろけど、こうやっている時間に新しい発見や考えが浮かんでくるかもしれないからな。

 現にピケルさんから物資や馬車を貰うことが出来たので、収穫があるし、朝早かったので人は少なかったけど、『バルデス』の街を少しだけ観ることが出来たのも収穫と言っていいと思う。


 阿修羅は煙管を弄りながら、窓の外を見て観察をしてくれている。別に見なくても気配で感じることが出来るだろうが、俺の考えを律儀にこなそうとしてくれている。



「もし何かあったら、俺の『大罪之烙印クライム・スティグマ』を実戦で試しておきたいしな」


「ここらへんで感じる気配じゃ、近づいてくる魔物はおらんと思うぞ」


「その時のための阿修羅さ、付き合ってくれるだろ?」


「若の場合、スキルより基礎的な武技を身に着けたほうがいい」


「そうだよな」


「見様見真似でも練習あるのみ」



 いくらステータスが上がって、凄まじい身体能力を得ても、やることが普通の殴る蹴るでは話にならないと阿修羅は言いたいんだろう。

 俺のその通りだと思うし、20分経過して『原罪之アマルティア・烙印アドヴェント』を発動しないと、まともな技が無いってのは致命的だと感じている。

 かと言ってスキルの習得は出来ないという『大罪』の縛りがあるので、見真似でやってみるしかないんだよな。



「もっと派手な魔王になりたいな……前線に出たいってよりもカッコいい魔王になりたい」


「若には俺たちがいるから大丈夫さ」


「それを言われては何とも言えないな」



 15人の『枢要悪の祭典クライム・アルマ』を越えてくることが出来そうな存在は今のところ想像できない。

 最古の魔王様たちとやりあうことになったら物量で攻められるかもしれないけど、それぞれが一騎当千の強さを誇っている『枢要悪の祭典クライム・アルマ』ならどうにかしてくれるなんて思っている。



「若は帝国に存在している他の魔王を知ってどうするつもりなんだ?」


「まずは帝国最強の魔王を目指そうかな……ってのと過去に関する面白そうな資料が欲しい」


「最強の魔王……若が恐れる2体に関してはいいのか?」


「ピケルさんみたいな人がいたら話は別だけどな。やっぱ王って言うんだから、たくさんいらないかなって思うんだよ。俺の恐れる2体は、このレベルじゃ直接手を出してこないと思う」


「俺たちからしたら若以外必要ないけどな」



 最古の魔王様たちに憧れがあるので、あそこまで自分のいる地域を掌握して、完全に好き放題出来るような立場になっておきたい。

 ルーキーのくせに生意気とか言われそうだけど、この魔王界は強さこそが全てだと思っているから、全員力でねじ伏せて行こうと思っている。

 

 アークに協力的だったり、理想が近い魔王は別だけどな。出来れば仲良くしたい。


 阿修羅とそんな将来の話をしながら、全然揺れない馬車での時間を過ごしていると、お昼ご飯の時間ということで、外でピクニック気分でお昼だ。


 帝都までの道のりは草原や谷のような箇所を越えるだけなので、そこまで道に苦戦することはないだろうし、天候も今のところ快晴だ。


 火を用意して、食材を鍋に突っ込んでいく。

 アルバスとカノンが手際よく準備していってくれるので、俺たちは手伝いをしつつ、周囲の景色を確かめている。


 すると阿修羅とメルがコソコソ話をしている。



「何かあったか?」


「ストーカーかもしれない」


「探知能力は使用させてないが、街を出てから30分後くらいに出て、今のところ同じ道のりだな」


「商人とかじゃないくてか?」


「乗ってる人間は全員武装している」


「なるほど……まぁ来るなら容赦しないさ」



 わざわざ迎えに行ってみるのも面倒なので、アルバスとカノンが用意してくれた昼食をみんなで頂くことにする。

 かなり野菜が多くて栄養満点な鍋だ。外で食べる飯というのは、何故か同じメニューでも室内で食べるのと違った感じがするのは不思議なことだ。



「久々だな~! こんな感じでご飯食べるの」


「こういった楽しみを味わうために冒険者をしている人間もいるのかもな」


「美味しいって言われてる魔物だけを狙うギルドなら存在しているな」


「ますたー、おかわり」



 2人が作ってくれた鍋を囲みながら話を続けていく。

 『七人の探究者セプテュブルシーカー』結成時の時代は、まだ魔王を狙い続ける冒険者が多くなってきたが、最近では商会お抱えで素材集めに特化していたり、眠っているお宝探しをする集団や特定の街周辺の魔物を討伐するのを専門としているギルドも存在しているそうだ。


 俺たちが向かっている帝都は、王都の次に人口が多くて、その分商会や冒険者などなど様々な集団や店、施設が多いらしくて、とても賑わっているとの話だが、最近の国同士の小競り合いの影響がどこまで大ごとになっているかは、行ってみないと分からないらしい。


 そして2人も後ろから来ている集団には気付いているが、もしかしたら普通に通り過ぎていくかのと思って気にしていないと言っていた。


 さすがの俺も近づいてきたので、気配をしっかり感じるようになった。馬車の人間が放っている気配的には、たぶん襲ってくるだろう。



――キキ―ッ!



「おいテメェら! 馬車と荷物をッ!?」



――グシャッ!!



 華麗な決め台詞を吐こうとした男たちは、残念なことにセリフを言い終わる前に、メルの『歪み渦巻く怒りの海リヴァイアサン』に美味しく頂かれてしまった。

 意外と治安が悪いもんなのか、街から出たらこんなもんなのかってのが分からないな。

 ただメルの『歪み渦巻く怒りの海リヴァイアサン』にアルバスとカノンが仰天していた顔が面白かったことは確かだな。

 

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