外伝 『色欲』と朝のやり取り。
無事に『豪炎』との戦いに勝利して、アークを発展させるために頑張っている日々。
そんなとある日の朝。
起きようと思ったら右手が動かない。誰かが堂々と右手を枕にして抱き着いてきている。
別に初めてのことではないので、誰が潜り込んでいるのか、感覚で当ててみることにする。
とりあえず身長と重さ的にはメルじゃないことは確かなので、ポラールとガラクシアのどちらかだろう。
こんだけ堂々と抱き着いてくるのはガラクシアだろうな。
そう思って目を開けてみると。
「……大正解」
ここで実はアヴァロンでした! とかだったらビックリしすぎて気絶する自信があるんだけど、アヴァロンはそんなキャラじゃないので大丈夫だろう。
誰かしらが部屋に侵入してきたり、寝る前にお願いされたりと、さすがに慣れてきた今日この頃だが、部屋に侵入されるときに、まったく気付けないのは魔王として大丈夫なのかと、自分で自分のことを少し不安に感じてしまう。
とりあえずガラクシアが可愛いので撫でておく。
「起きてるだろう? おはようガラクシア」
「…バレたか~♪ おはよーマスター♪」
ニヤニヤしながら撫でられてくれているガラクシア。
俺の呼吸の流れで起きることができるって前教えてもらってから、狸寝入りを見破ることができるようになった。
それにしてもガラクシアの寝間着が薄すぎて、目に毒だ。髪の色と同じ桃色の服装なのだが、薄いし寒そうだし、風邪引くぞって言ったんだが、果樹園の果物食べてれば治るらしいので大丈夫だとのこと。
俺が大丈夫じゃないんだけどな…。
「マスター、今日はいつもより早いね?」
「あれ? まだこんな時間か?」
時間を確認してみると、いつもより90分も早く起きていた。
寝た時間はいつも通りだったんだけど、何かあったのかな?
そんな風に考えていると、ガラクシアに引っ張られ、また寝る体勢にされてしまった。
「一緒に二度寝♪」
「まぁ……時間あるし寝るか」
「わーいっ!」
けっこうな力で抱きしめてくるガラクシア。
ポラールとメルもそうなのだが、ステータスに差がありすぎるのか、起きている時は良いんだけど、寝ているときに本気で抱きしめられて、身体が引き千切れそうになったことがあるので少し怖い。
まぁ起きてるときは天国なんだけども。
「今日の朝ご飯なーに~?」
「朝はいつも通りだな」
「マスター、いっつも朝ご飯同じだね? 飽きないの?」
「飽きるってより、毎日同じのほうが安心というか、なんかそんな感じだ」
「私は甘いのがいいー♪」
抱き着いてくるし、話しかけてくるし、完全に二度寝させる気は無さそうだけど、話すなら話すで別にいいか。
こうやって交流して関係を深めるのも、また1つだからな。
「楽しいか?」
少しガラクシアに体の向きを変えて声をかける。
ガラクシアの顔は、俺の胸らへんにくっついているので表情は分からないけど、とりあえず反応を見てみようと思って観察してみる。
「楽しいよ♪ マスター優しいし、みんな面白いもん!」
「そいつは良かった」
なんか逆に恥ずかしくなってきた。
ゴロゴロと身体を動かしながら嬉しさを表現しているガラクシア、見えないけれど笑っているのが想像できる。
なんだかいたずらしたくなったので、少しだけ強めに抱きしめてみる。
「ひゃんっ♪ マスター情熱的♪」
「動揺の欠片もないとは、さすが」
「とっても嬉しいよ!」
ガラクシアも強く抱きしめてきて、仕掛けたのはいいが、どんどん恥ずかしくなってくる。
ガラクシアが顔をあげてこないから表情は見られてないけど、見られると恥ずかしいから、ここらへんでやめておくのがいいな。
「マスター、夜にこのくらい積極的だと嬉しいな♪」
「どういう意味なのかは聞かんでおくよ」
「もぉ~♪ でもそういうところも大好き♪」
俺を逃がしてくれる気はないようだ。
でも自分の配下と仲良くするのは魔王の基本だと思っているから、こうやって言ってもらえるのもありがたい話だよな。
しかもガラクシアも、とんでもなく強い存在になったのに、変わらない可愛さと元気さをみせてくれるので、本当に良い子だなって思う。
「なんかしてほしいことあるか?」
「おぉ~? なんでもいいの?」
「場合によるな」
「ん~、でも特にないよ、毎日楽しいもん♪」
なんだかんだ欲がない。
こんなにも良い配下を持ってしまっていいのかと、嬉しくて泣けてきそうになるが、確実に見せたらからかわれるので、顔を見られないように強めに抱きしめる。
「あう♪ マスター恥ずかしがってるでしょ?」
「気のせいだな。さぁ二度寝するぞ」
「あ! やってほしいことあった!」
頑張って顔をあげようと藻掻きながら、ガラクシアがアピールしてくる。
さすがに気になったので、少しだけ抱きしめる力を弱めてあげて、様子を窺う。
ガラクシアは顔を上にあげて、俺の顔をみてニッコリ笑う。
「今から時間になるまで、マスターにぎゅっ! ってしてもらいながら二度寝したいな♪」
今まで見たことないようなほど、眩しいくらいに可愛い笑顔だった。
「仕方ないな。よし、寝るぞ」
「マスター♪ 顔真っ赤だよ♪」
「気のせいだって……おやすみ」
「おやすみ♪」
最高に可愛くて、素直で元気な配下が居てくれて、俺は幸せ者だな。
俺はご指名通りにガラクシアを抱きしめて、幸福の二度寝をかますことにした。
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