第19話 『歓喜』と『悲観』
勇者が魔王を討伐という結果は魔王界にコアを通してすぐに知らされた。
そして世界中でも4人の勇者が『天風の魔王』を打ち破ったという話は一瞬にして広まった。
人類の脅威となる魔王、それも長年存在していた上級魔王の討伐成功との知らせに、各地で大いに沸いた。
3人の勇者が同時に亡くなってしまったときは疑心暗鬼になったが、やはり「勇者はやはり最強なんだ」と再び信じることが出来る人々。
各国の関係者も魔王の脅威が1つ減り、それにようやく終わった勇者一行の旅に対してもニッコリだ。
特に公国では『天風の魔王』が裏で手回しをしていたとされていた街を、公国が完全に掌握することが出来るのは国の利益的に見れば素晴らしい結果だと言える。
今回の勇者たちの活躍で、他の魔王も少し活動することに恐怖し、人々に安寧をもたらしてくれと願っている各国の関係者たち。
そして一方を受けた冒険者たちの士気も上がった。
勇者に負けじとダンジョンを攻略しようと意気込む冒険者たち、その流れに乗るプレイヤーの姿も目立ったようだ。
プレイヤーの「最前線組」も次々とダンジョンに挑むのをプレイヤー間ではあるが、公表しているので、人類側に流れがあるのは間違いない状況ではあった。
勇者4人による『天風の魔王』討伐は、確かに世界に大きな影響を与えたのである。
◇
――『罪の牢獄』 居住区 コアルーム
『師匠が敗れたとの報告を受けました。ソウイチのことでしょうから、私のことを心配してくれるのだと思いますが、少しの間、1人で色々と考えさせてください。また調子が戻りましたら顔を出しますね」
「アイシャは真面目だな」
ラムザさんが勇者に敗れて死亡したとのメッセージを得て、すぐにアイシャが連絡をくれた。
ラムザさんの実力を見たことはなかったが、ミルドレッドと同期で仲良しだったのもあり、上級魔王と呼ばれても良いレベルの実力者だった魔王だ。そう簡単にやられるわけないと思っていたが、勇者のほうが1枚上手だったのか。
そして予想外だったのは、今のところ『水の魔王』が動いた情報が1つもないと言うことだ。
昔からの仲だと言うなら、さすがに動きを見せるかなって思ったけども、そういうわけじゃないのか…。
「たった1日で変わりすぎだろう」
勇者によるラムザさん討伐の知らせは、瞬く間に世界中で広まり、たくさんの人間に何かしらの影響を与えた。
冒険者は酔ったようにダンジョンに挑んでくるようになり、途中で引き返していたようなパーティーも最奥を目指して頑張るようになっている。
各国の小競り合いが本格的になりそうだ。
ミネルヴァを失った帝国は付け込まれやすい立場になるだろうが、アーク的にもそう簡単に陥落されても困るんだけど、ミネルヴァ曰く「フェルナンドが居れば大抵どうにかなる」とのことなので大丈夫だろう。
商売的にはそこそこ繁盛しているようで、アークで販売している、アーク産果実の「ドライフルーツ」が大いに売れているようだ。まぁ戦争用だろうな。
「ダンジョンに挑むのは良いが、命を捨てるような挑み方は、ただの無謀だな」
勇者の活躍に感化されて、無謀にも挑んで散っていく冒険者をモニターで確認する。
イブリースのエリアをクリアする冒険者は増えたが、次の階層であるイデアが創り出した魔物軍団を攻略できそうな冒険者は出ていない。惜しい冒険者パーティーはいるのだがな。
ちなみにアルバスとカノンはアヴァロンのところまでは問題なく行けるようだ。さすがに個人EXなだけはあるな。
「俺自身、どれくらい戦えるか分かったら帝都に向かってみるのもいいかもな」
勇者の活躍で流されたが、一応俺自身が戦うことが出来るようになったので、それくらいのもんか試したいが、俺の配下は強さが極端すぎるし、そもそもスキルを発動させてくれないやつもいるので、悩ましいところだ。
ラムザさんが亡くなってしまったのはショックではあるが、立ち止まってはいられない。
「ハク、少し運動に付き合ってくれ」
「はーいっ♪」
アイシャには申し訳ないが、勇者が勝つ流れもある程度想定して動いていた部分もあるから、俺は俺なりに進ませてもらう。
コアルームでまったりしているハクに声をかけて、アビリティを気合でOFFにしてもらって付き合ってもらうことにした。
◇
――『罪の牢獄』 ダンジョンエリア 闘技場
ハクにめちゃくちゃ手加減をしていただいて、動かさせていただいた。
動けるようになったから分かることがあるけど、ハクのステータスがバグってる。
『
ステータスだけで行けば、そこらへんの冒険者は圧倒出来るくらいのものが発揮できるようになった。
ただ『
そして『
『
ちなみに使ったのは『
『
『
『
『
『
『
『
『
みんなが使用できる『大罪』スキル内容と同じだけど、全部使えるのは凄いことだ。アビリティと他のスキル使えてたらやりたい放題出来たのに…。
問題は一気に15個も増えられても覚えきれないし扱いきれないという悲しい現実だ。
俺自身が強くなるからと言って前線に出たいだなんて思わない。余程の意味があれば囮でも何でもやるけど、そうでなければこれだけの戦力がいる中で戦いに意向とは思わない。
俺が元々持っている力でもある。触れて魔力を注ぎ込んだものに『大罪』の影響を与えることが出来る戦法がステータスが上がってやりやすくなったのがありがたい。
将来的には囮作戦は少しだけ考えているから、そん時くらいかな……前線にでようと思っているのは…。
「マスターすごーい! いっぱい出来るようになったね!」
「僕もビックリしたよ」
「若と模擬戦出来る日が来るとはな」
「儂も予約しておこうかのぅ」
「さすがです。ご主人様」
「私たちのマスターとして、強くあってもらえるのは少し安心かな」
「ますたー、万歳♪」
「王の進化に、さらなる忠誠を!」
「みんなみたいなステータスを得ても、今の俺じゃ制御できないから、こんくらいでギリギリだな」
闘技場に見に来ていた面々から言葉を受ける。アヴァロンは剣を掲げて喜んでくれている。
引きこもり組は来ていないが、伝えた時は喜んでくれたので嬉しいことだ。
イデアの言う通り、前よりは確実に強くなったので、守られるだけの存在では無くなったというのは、安心して暴れさせることが出来るってことだからな。
魔王としてのあるべき姿に近づいてきた気がする。配下に守られるだけでなく、偉大な背中を見せることが出来る魔王に。
「ゆっくりと1つ1つを使いこなせるようにしていこうかな」
「じゃ~私の力が使えるようにレッスンしよっ!」
「それなら儂の力もどうじゃ!?」
「ぼ、僕の力が1番だよね!? たくさん付き合うよ!」
「ますたー、私は分裂出来るから24時間営業♪」
「時間を見つけて、順番にやってくさ。今日はとりあえず解散!」
とんでもない喧嘩の臭いがしたので解散させる。
自分のスキルを向上させることも大事だけど、それよりもやらなくちゃいけないことがたくさんあるからな。
勇者パワーで増えた冒険者の侵入に対して、様々な補強をしながら、激動の1日を終えることが出来た。
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