第12話 『探究者』の噂
僅かな時間にして聖国で募った冒険者のほとんどを失ってしまった勇者一行。
最強と噂に名高い『神速刃・暁蓮』も飛び出したと思ったら、ボロボロになって戻ってきたことで他の3人を驚かせる前代未聞の事態。
勇者メンバーへ素直に謝罪をしたあとに、蓮は遭遇した魔王と魔物の特徴について説明していく。
「逃がしてくれなかったら死んでいた……何故見逃したのかは分からない」
「勇者を全員揃えないと厳しい相手かもしれませんね」
「今から行く魔王の仲間か?」
「油断ならんな。私たちも温存している場合ではない。とにかくダンジョンに辿り着くまで最大限の警戒が必要だな」
こうなることを想定して、公国で事前に冒険者を募ってあるので、近いうちに合流するだろうが、冒険者たちが転移させられた時空間魔法のようなものをどうにかしなければいけないと話し合う。
雫とテスタロッサが結界魔法を使い続ければ防げる可能性があがるという結論になり、消耗を抑えながら結界魔法を使用し続けることに。
さらにここから先は源輔のブレイブスキルの『
消耗は必須だが、蓮が惨敗するような相手に加減などしていてはやられてしまうと判断した4人はさっそく周囲にいる聖国騎士にも伝えていく。
彼らは改めて守備を固めて『天風』の下へと急いだ。
◇
――『罪の牢獄』 居住区 コアルーム
ハヌマンがシャンカラへと生まれ変わった翌日。
ミネルヴァがすぐにでも話がしたいことがあると伝言がパンデロムから飛んできたので、ウロボロスに迎えに行ってもらい、回収してもらった。
その顔は少しお疲れの表情である。こんなお忍びの仕事なんてやったことないんだろう。
「やっぱ姿を隠しながらは大変か?」
「そうだね……帝都から近い分難しいものがあるね」
「考えなきゃな。それで伝えたいことってなんだ?」
「『
「聞いたことない名前だな」
「元最強冒険者パーティーだね」
「最強冒険者か……アークに来るだけで知名度アップを目指せそうだ」
「あんまり驚かないんだね」
「アークに何しに来るかによるかな」
どんな人だろうとアークに悪影響を与えようとしなければ歓迎するし、そんなにビッグネームが来てくれるなら宣伝してアークを広めて欲しいとすら思う。
『
だけど結成から3年で解散してしまい、メンバーのほとんどは行方知れずらしい。
やっぱダンジョンに1度に入れるパーティー申請上限が7人なので、強いパーティーってのは7人ってのが多い気がする。7の倍数の集団で攻略にくる大所帯もいるけどな。
もしアークを拠点にしてくれるなら、ダンジョンの知名度はグッとあがること間違いなしだろう。ぶっちゃけ知名度はダンジョンランクに関わってくるので、少し無理にでも上げておきたい。
もちろんダンジョン攻略に来た可能性もあるので、万全の準備をするんだが…。
「どんな奴が来るかは分からないんだよな?」
「何か目的があるような噂は出てたけどね」
「なるほど、「紅蓮の蝶々」と『
「そうさせてもらうよ」
ミネルヴァは居住区にある部屋で眠るようだ。
事前に調査しておくのもいいが、誰が来るか分からないようだと難しいな。分かりやすいようだと良いんだけど……。
とりあえずルジストルとリーナには伝えておかないといけないな。
正直ゼキルさんも心配だが、本人が嫌がっている以上はあまり気にし過ぎずに自分たちのことを考えないとな、さすがに元最強冒険者が来るのに他魔王のことを気にしてはいられない。
それにしても帝国の辺境の地に、わざわざ何をしに来るんだろうか?
「最強の元冒険者パーティーか」
最近思うんだけど、気にしなければいけない存在が多すぎて困っている。勇者にプレイヤー、騎士団に冒険者、それに他魔王と覚えきれない。
正直な話、自分の配下の「紅蓮の蝶々」と『
まぁ俺の王としての能力不足なところなのかもしれないんだが…。
「まぁ構えすぎずに余裕をもって迎えるとしよう」
とりあえずメルにそれらしき存在が来たらすぐ分かるようにお願いしに行かなきゃな。
そして気になるのは『
もし最古の魔王様たちのようなヤバいとこを4つだったら全力で敵に回したくない存在だし、SSランクダンジョン4つとかでもヤバすぎるから恐ろしいもんだ。
「考えすぎると疲れるからメルのとこ行くか」
コアルームで爆睡しているハクとリトスを置いておいて、メルに数日間だけ監視を強めてもらうために、メルのいるエリアに行くことにした。
◇
――『罪の牢獄』 居住区 果樹園
今日はレーラズが疲れた体に癒しをプレゼントしてくれる日ということで、レーラズが横に居てくれながら、特別フルーツセットを食べている。
これを食べると疲れは飛ぶし、元気になるし、傷は癒える万能薬。
人間に2回ほど食べてもらったことがあるんだが、不治の病すら治してしまうほどの果物で人間界では1個だけしか出していない。
とある商会さんから助けて欲しいとのことで、とんでもない条件を叩きつけて1個だけ渡したことがる。その商人は命がけでアークに尽くしてくれているので感謝だ。
この効果はレーラズが直接育てている果物全てに含まれているらしい。『
そして美人であるレーラズが隣で微笑みながら座っていてくれるだけで少し緊張してしまうものがある。
というより何されるか分かったもんじゃないから構えてしまうというのが正しいかもしれない。
「それにしても相変わらず美味しすぎて、これ以外の果物食べれなくなるな」
「いつでも来てくださいね~♪ 本当、ずっとお疲れなんですから」
トントンッと優しく肩を叩いてくれるレーラズ。
おっとりしているけれど、しっかり『罪の牢獄』のことを考えてくれる。動きたくは無いけれど、いざという時は上手く判断してやってくれるから安心できる。
それに俺が疲れた時を見極めて、自然に誘ってくれる良い女である。
ルジストルと同じで自由にやらせればやらせるだけ結果をだしてくれる驚きの魔物である。だがルジストルと共通してブレーキを知らないけど…。
「よし! レーラズあ~ん」
「は~い、あ~んっ♪」
まったく照れもせずノリノリである。
ちなみにレーラズの別本体でもある巨大な樹の近くに出来ている泉である『ミーミルの泉』の水は、ここの果物と一緒に食べると天下一品なようで、俺も頂いているがたまらん! ちなみにどんな状態異常でも回復させてくれる水だそうだ。
ここの果物は怪我や内臓関係の何かしらに良くて、水は病にも効くとのことでレーラズの実験では結果が出ているそうだ。
アークでもやっている農作物も普通のものとまったく違い、栄養価だったり肌によかったり、味もバッチリなので大人気というか、アーク1番の特産物になっている。
レーラズにはアークを支えてもらっているので、ゆっくりする時間をあげたいが、果樹園から離れるのは好きじゃないし、面倒だからと動く気はないらしい。
なので果樹園に来て、ゆったりと交流をしているのだ。
本当は戦ってもめちゃくちゃ強いんだが、本当に戦いたがらない。今のところ戦力的に困っていないから良いんだが、かなり便利な極結界魔導というスキルを持っているので、たまぁにはお外で頑張ってほしいなんて思ったこともあるが、早々に諦めた現実がある。
「ふふっ……少し眠くなってきましたか?」
「毎度毎度よくわかるな?」
「私はマスターの魔物ですからね。さぁ~、どうぞ♪」
レーラズが微笑みながら両手を広げて、抱擁の構えを見せてくれる。
全然抗えない睡魔の中、少し恥ずかしい気もするけれど、レーラズに身体を預ける。
めっちゃええ匂いするし、柔らかけぇ~なんて想いながら、睡魔に身を任せることにする。
「けっこう寝るかもしれない」
「いいですよ。一緒にゆっくり休みましょうね♪」
「3時間以上寝てたら、さすがに起こしてくれ………」
「わかりました♪ おやすみなさい、マスター」
約束はするけれど、大抵頼んだ時間に起こしてくれないので、期待はしていないが、とにかく眠いので俺は寝ることにした。
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