第11話 神を纏う『罪』


――『罪の牢獄』 居住区 コアルーム



 阿修羅を迎えに行って、ダンジョンに戻ってきた。


 ハヌマンも目が醒めて、相変わらずの元気そうで大安心だ。

 俺の感謝と謝罪をしっかり受け入れてくれて、引き続き何かしらの仕事を探して頑張ってくれているハヌマンをみて、『枢要悪の祭典クライム・アルマ』たちからの頼まれていることがある。


 チケットが引けていないのとダンジョンエリアを増やしすぎるのもどうかという理由で『大罪』を付与する配合はそろそろ一旦終えようかと思っていたが、ハヌマンに付与してやって欲しいという頼みだ。



 命を投げ捨ててまで俺を助けてくれた勇気に、みんなが感銘を受けたようだ。

 救われた俺としても、自分の発言を曲げてまでハヌマンに『大罪』を授けるのは納得だ。

 配合できる時期にはなっているし、真名を授けることが出来るので、本人がやりたいなら考えてもいいのかな。



「なんか『大罪』っていうより『七元徳』よりな魔物だと思ってたんだが……配合するか?」


「キッーキッー!」



 なんとなくだけど、今まで『大罪』を付与してきた魔物たちとは違う方向性をハヌマンには感じていたから微妙かなと思っていたが、本人がその気なら大丈夫だろう。

 『大罪』を配合したら今のところは100%だけど、もしかしたら失敗する可能性はある。だがハヌマンはやりたいようで、俺はアイテムをとりあえず並べてみる。

 速攻で残り1つの『コピー』を持って行く姿には笑ってしまう。

 2体配合できるが、もう一体はとくに考えていないので自由にやってほしい。


 楽しそうに選んだハヌマンが持ってきたアイテムは、よくわからない選定だった。



1.魔名カード『大罪』 ランクS

2.魔名カード『大罪』 ランクS

3.魔名カード『コピー』 ランクSS

4.聖魔物『古びた布切れ』 ランクEX



 初の『大罪』2つに『コピー』をそのまま使う魔物だな。というか『大罪』をコピーできたことに驚きだ。

 昔ならもったいないって言う気がするが、ハヌマンが楽しそうに選んだものだから仕方ないし。今後のためにサンプルにさせてもらう。



「大サービスだからな、『シャンカラ』」



 いつも通り配合前に真名を授ける。これで真名付与回数を使い切ったかな?

 画面をタッチして配合をスタートさせる。

 4つのアイテムが光になって吸い込まれて、いつもみたいに輝くかと思いきや、魔力で出来た蓮の花が周囲に咲き始める。



『確認:超変異が発生しました。配合を続けます』



 魔法陣から現れたハヌマンの姿は少年のような姿になり、褐色肌にボロボロの布切れを巻いた姿。

 だけど感じるのは爽やかに感じるような魔力と闘気。ハクやデザイアとは真逆な神聖みのある感じだ。


 少しボサボサだが、俺と同じ髪色なのが少し共通していて面白い。



【トリムルティ】 仙人族 ランクEX Lv1000 固定

         真名 シャンカラ 使用DE??

 ステータス 体力 EX+100  物理攻 EX+100  物理防 EX+100

       魔力 EX+100  敏捷 EX+100  幸運 EX+100

アビリティ ・『我は為る。偉大な神にマハーテーヴァ』 EX

      ・『我は創る。宙の悟りをスヴァヤンブー』 EX

      ・『我は壊す。世の全てをラーマーヤナ』 EX

スキル  ・『神化アヴァターラ』 EX

     ・『維持ト存在ノ神ヴィシュヌ』 EX

     ・『破壊ト再生ノ神シヴァ』 EX

     ・『創造ト原理ノ神ブラフマー』 EX

     ・『雷霆ト天空ノ神インドラ』 EX

     ・『時間ト殺戮ノ神カーリー』 EX

     ・『静寂ト芸術ノ神サラスヴァティ』 EX

     ・『太陽ト天翔ノ神スーリヤ』 EX

     ・『災害ト暴嵐ノ神ルドラ』 EX

     ・『闘争ト武天ノ神ドゥルガー』 EX

     

・ハヌマンモンキー+『大罪』+『大罪』+変化系統魔名+『古びた布切れ』

・『神化アヴァターラ』の大罪を司る仙人族。魔物でありながら神へと化してしまう罪の力を使う。状況によって様々な神へと変化して戦う。自身のスキルは絶対に阻害されないという絶対的なアビリティも持っている。

・蓮の花の上で瞑想しているのが日常。信頼関係があれば温厚だが、無ければ会話をすらしてくれず、ずっと瞑想している。



 ハクやポラールと同じような戦闘最強候補だ。スキルが『神化アヴァターラ』による変身だけっていう特化型だが、神の姿になったあとはスキル豊富なようなので相手に合わせて戦えるハクと真逆型だ。


 さすがにハクほどではないが、いい勝負ができそうなほどの力を持っているようだ。


 蓮の花が浮いている理由も分からないし、瞑想しながら話がしっかり聞けている理由も分からないけど、温厚な少年って感じなので、すぐに『罪の牢獄』に溶けこめるはずだ。



「配合しても傷は無くならないんだな」


「……これは勲章のようなものさ……」



 シャンカラは自分の傷を撫でながら微笑んでいる。声からわかる温厚さ半端ない。


 今度こそ『枢要悪の祭典クライム・アルマ』が揃ったことになるかな? 真名付与回数無くなったはずだし。

 これ以上は大丈夫かなって思う。また真名付与回数が増えた時にでも考えよう。

 次からは戦闘と言うよりは生産系だったりルジストルにとって有用な魔物をどうにかして手に入れたい。

 まぁルジストルは1人であれこれ考えているのが好きなようなので邪魔にならない魔物が望ましいけど…。



「みんなに挨拶してこようかな?」


「あぁ…きっと大歓迎だろうさ」



 シャンカラは少し身体を伸ばしながら他の『枢要悪の祭典クライム・アルマ』への挨拶周りを考えているようだ。

 小猿から人型少年になったら誰ってなるかもしれないけど、みんな大歓迎のはずだ、まぁどんな魔物だろうと歓迎するんだけどな。



「行ってくるよ」


「暇そうだったらゆっくり話をしてくるといい」


「そうさせてもらおうかな」



 シャンカラは蓮の花から降りて、ダンジョン各エリアに向かって歩いて行った。

 今のうちにシャンカラのエリアでも作っておくか。

 『枢要悪の祭典クライム・アルマ』は今のところ揃ったから、ダンジョンを弄る頻度は今度少なくなるかもな…。

 『枢要悪の祭典クライム・アルマ』の弱点は基本1体で1エリア作らなくちゃいけない共闘の出来なさだよな~。アクィナスさんとこの『七元徳』の魔物は逆に数が多いと強くなっていくっていう逆なもんだから、その要素を少し欲しいなんて思ったりもするけど、単体でぶっ飛んで強いから大丈夫か。



「こんなもんかな?」



 最早慣れた感じで1エリア追加する。

 アヴァロンが『枢要悪の祭典クライム・アルマ』では一番手は自分を出してほしいと最初からアピールし続けてくれているので、そこは譲らずに残りはなんとなくという感じだ。少しLv順なところもあるけどな。



 ダンジョン名 『罪の牢獄』ダンジョンLv41 知名度B 総合A(難易度EX)

 迷宮都市 街 ルジストル・ホムンクルス多数+リーナ 難易度 無

 1F    薄暗い洞窟 ゴブリン集落+スライム+一角ウサギ 罠多数  F

 地下1F  朽ちた街 スケルトン+子蜘蛛  『銅』の軍勢化  D

 地下2F  湿地帯  スケルトン(泥纏い)+血吸い蠅+スライム  C

 地下3F  灼熱火山 炎腕魔王イブリース(メル分裂体のためランクS)  B

 地下4F  破裂の黒森 偽金剛蜘蛛+偽火竜+偽狼軍  S

 地下5F  暗黒遺跡  デザイアが創り出した生命体たち SS

 地下6F  闘技場   スケルトン+全滅したら出てくるアヴァロン  EX

 地下7F  骨塗れの山  スケルトン+バビロン EX

 地下8F  永遠の星空  ガラクシア  EX

 地下9F  暗黒湿地帯  五右衛門 EX

 地下10F  星海     メルクリウス+スライム多数  EX

 地下11F  永久天地   ウロボロス EX

 地下12F  鬼の花道   阿修羅  EX

 地下13F  白の塔    イデア EX

 地下14F  大いなる大自然  シャンカラ EX

 地下15F  地獄の門   ポラール  EX

 異空間  星屑の祭壇  デザイア  EX


 居住区 果樹園  レーラズ+リトス EX

     コアルーム ソウイチ+ハク EX

            シンラ(各階層にランダム出現) EX



 ちなみ最古の魔王であるリンさんによると、知名度EXは国で1番レベルになるか、伝説になるようなダンジョン。最強の冒険者が挑むようなダンジョンになることが条件らしい。曖昧でよくわからんかったが、まずは帝国で1番有名なダンジョンにならなくちゃいけない。

 個人的には帝都からアークまでが遠いし、道中が過酷なので、そこを考えなければいけないなって思う。知名度ってんだから、とにかく多くの冒険者に知ってもらわなくちゃいけない。


 ミネルヴァに頼んで、まずは帝都から「パンデロム」までの道のりを簡単にするための交渉を「パンデロム」に行ってもらってしてもらうと同時に方法を考えてもらっている。

 ちなみにピケルさんには事前にメッセージを送ってあるので現地で問題になることは無いだろう。


 アークはルビウスにさえ来れれば、馬車が1日に何本も出ているので大丈夫だと思うが、パンデロムからルビウスが長すぎると思うんだよな。

 間にいくつかの村が存在してるから、そこの村に寄付だったり協力して、人が集まって休憩しやすい地域にしていくのがいいもんなんだろうか?



「かと言って勇者に簡単に来れる道のりにもしたくないんだよな」



 勇者様御一行は今もペースをそこまで変えず進んでいるようだ。

 冒険者を減らしたと思ったら公国騎士だったり、現地にいた冒険者に依頼を出しているようだ。

 アイシャが公国騎士を少し叩いたようだが、ラムザさんにお叱りのメッセージがきたようだ。

 ちなみに中身はまだ見てないけど、俺のところにもラムザさんからメッセージが来ていた。



「ラムザさんが勝っても負けても、今後の振り方を考えておかないとな」



 阿修羅だから呆気なく勇者に種を仕込んで撃退できたが、ラムザさんが簡単に勝てるかどうかは分からない。ラムザさんについてはそこまで情報を持っていない。勝つに越したことはないが、種を仕込めたので、ここから先は介入するつもりは無い。


 アイシャには悪いし、嫌な予感もするが……後は見守るとしよう。


 

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