第2話 『四大国』に広がる波紋


――王都アトラス 王城



 4大国で1番広い領土を持つのが王国。

 歴史を重んじることを大事としており、何代にも続いている貴族が多く、数多くの世界的にみて大富豪と呼ばれるような人たちがが王都に存在している。

 王国騎士団という王国建国時から存在している由緒正しい守護の要がいるため、王都の守りは他国にも誇れるほど強靭だ。

 王国騎士学校というところで幼少期から将来の王国騎士団を目指すようなシステムを作ることで、多くの子どもたちが王国騎士団に憧れた結果、多くの騎士が存在し、母数が多くなったことで国全体の守りが盤石になるという流れが完成しているのだ。


 勇者と冒険者が魔王を討伐してくれるようになってから、王国の貴族や参謀たちは他国の領土に目をつける。

 王国騎士団に余裕が出来てきた時世、もはや休戦にしておくのは終いである…と。


 圧倒的な数で他国へと攻め入る王国騎士団。

 守備にも力を入れており、国境付近に建てられている大量の要塞砦が自分たちの攻撃をし易くしつつ、他国からの侵略を防ぐと言う素晴らしい働きをする守りの仮要だということで王国民からの信頼も厚かった。



 しかし、他国との小競り合いを順調に進めていた王国に1つの報告が入る。


 帝国との国境付近に構えていた砦に配属されていた者全員が、何者かにより消されてしまい、帝国に砦を乗っ取られてしまった…と。

 傭兵として雇っていた「桜火の国」の者たちも含む全員が跡形もなく消えてしまったという事実が突然告げられる。


 死体も残らず、血の痕跡も何も無かったようで、今は帝国騎士団が制圧してしまっているようで近づくのが困難な状況だという。

 砦には帝国のアルカナ騎士団第2師団団長『女帝ザ・エンプレス』の姿が見られたようで、帝国がどれだけ本気で砦を取りに来ているか理解できる。


 これをきっかけに各国の小競り合いはさらに勢いを増していくのであった。









――アーク ルジストルの館 会議室



 人間たちの動きが騒がしくなってきた。

 

 まずは各国の領土を巡った小競り合いが激しくなりがちなこと。

 騎士団だったり、人間に手懐けられた魔獣たちがぶつかり合いまくっている。

 副団長クラスも出張ってきているとの噂だ。


 しかもミネルヴァの依頼をこなしてから3日しか経過していない。

 ミネルヴァには知りたい情報について連絡を入れているので、調べ次第連絡があるはずだ。

 帝国騎士団も忙しそうだから焦っていないが、ミネルヴァにはしっかり働いてもらいたい。

 ミネルヴァに助っ人したのは実は情報だけが目当てじゃないんだが、とりあえずは情報を頂けるとありがたいもんだ。


 そしてプレイヤーも大いに世間を騒がしている。

 かなり強いプレイヤーが増えてきて、ダンジョンもいくつかプレイヤーの手でクリアされてきている。


 そん中でも目立つのが「最前線組」と呼ばれている集団らしい。

 大体各国に1グループ、その最前線組ってのが存在しているらしい。かなりの数のプレイヤーが所属しているようだ。


 そのプレイヤーたちが出している噂が1つあり、「迷宮都市を治めているのは全て魔王」というようなことを広めているようだ。

 プレイヤーってのは何故か、魔王側のことを知っているような奴が多い気がする。魔物の特徴なんかも初見でも知っているような感じで対応してくるので謎すぎる。



「地球には俺たちの情報が一般的に知られているってことか?」



 今度『夢幻の星ドリームスター』が聖都から帰ってきたら聞いてみるとしよう。

 それでプレイヤーが頭領である商会が面談を望んでいるとのことでこの後行かなければならない。

 リーナが言うには、出来たばかりなのに凄い勢いで伸びてきている商会だとのこと。



――コンッ コンッ



「閣下、ヒナタ商会のサトウ・ヒナタ様です」


「どうぞ」



 入ってきたのはルジストルと金髪ショートカットのロリだった。外見で判断するのは非常に良くないことだが、商会の長としての雰囲気はあまり感じられなかった。

 しかし表情はキリっとしていて、こちらをしっかり見定めているように見える。


 そしてこのサトウ・ヒナタはルジストルに、この街を本当に治めているのは魔王かどうか問いを入れてきて、ルジストルを精霊だと見破った人物だと報告がきている。


 事前にもらっていた商売関連の資料は目を通したが、特におかしな箇所は無かったので前もってルジストルに許可するように言ったが、どうしても俺に会いたいとのことで興味本位で会うことにした。


 護衛は阿修羅が来てくれている。



「この度はお忙しい中、お時間割いていただきありがとうございます。ヒナタ商会の頭領、サトウ・ヒナタと申します」


「『罪の牢獄』の魔王をやっている。『大罪の魔王ソウイチ』だ」



 自分で魔王を呼び出しておきながら、真面目に自己紹介をしたら驚いているサトウ・ヒナタ、そして何かもどかしそうな表情をしている。

 何しようとしている?



「黙って若にその眼を使うという判断……悪手だ人間」


「……」



 阿修羅の発言に対しては大きく動揺はしていない。

 だがサトウ・ヒナタは勇者が持っている『鑑定』みたいな眼でみるだけで何かしらの恩恵を受けられるスキルを持っているということかな? とりあえずこういうことを見越して阿修羅に来てもらったのは正解だったようだ。



「大変失礼致しました。本物の魔王様かどうか確認したく……」


「今までに魔王に会ったことがあるようだが……魔王を舐めると痛い目みるぞ? 魔王を甘く見ている人間が多すぎるくらいだからな」



 隠しているんだろうが、「やってしまった」って雰囲気をなんとなく感じる。

 まぁ出来立ての商会だから頭領が若いのも納得だが、商売上手ってより、今使おうとしたスキルで成り上がってきた感じに見える。眼で見るだけで色々恩恵があるのならやりやすいんだろう。


 資料には、各国の小競り合いが激しくなってきた中、どの国の国境からも遠く、かつ勢いがあり特産品が他に類を見ない程素晴らしい物であり、冒険者も多く拠点にするほどダンジョンにも知名度があることから、アークで商売をしたいとのことだ。



「店を出す許可は出したが、何故わざわざ「魔王」というワードを出してまで俺を呼んだのか聞かせてもらおうか?」



 阿修羅が後ろから少し圧を出す。

 護衛も連れてきていない商会は初めてだ。それとも自身の戦闘力等に余程自信があるのかって話だな。


 商談時代が初で護衛っていう考えに至らなかった可能性がもしかしたらあるかもしれないが……。



「まず1点は本当に街の長が魔王様であるかどうか確認するためです。2点目、どのような考えを持った魔王様か確認するため、これは私たちプレイヤーが無差別に殺されることは無いか確証を得たかったからです」


「その眼でそんなことが視えるのか」


「はい」



 すっげースキルだな。プレイヤーって自分で言うのも凄いけど…。

 ぜひ俺にも欲しいスキルだけど、プレイヤーのユニークスキルって奴なんだろう。魔王にあったらとんでもないことになりそうだ。

 かなり便利だし、商人じゃなくても、どの道へ進んでも活用できそうな凄いスキルだ。でもそのスキルを過信しているようにも見える。

 残念ながら阿修羅みたいな存在がいることを想定していなかったようだ。


 各国の小競り合いが商人に大きな影響を出している。もちろん商人だけでは無いんだが、目に見えて大きな影響が出ているのが商人なのだ。

 各国を自由に行き来することが厳しくなってきているし、国境付近の街は騎士が在中しているようでやりにくいだろう。

 売れる物も平時と違ってきているそうだ。

 

 それを見極めることもできるような感じだな……スキルがあるおかげで経験の無さをカバーできているってわけか。



「別にプレイヤーだからって無差別に殺すようなことはしない」


「プレイヤーについてもご存じなようで」


「挑まれてる立場だからな。貴方の目的対象は俺ではないのか?」


「私の目標魔王は『雷雲の魔王』です」



 俺が討伐目標じゃないし、商売はスキルのおかげで上手くやってアークを盛り上げてくれそうだから、商売はやってもらって構わない。

 しかも商会に所属している人物の多くがプレイヤーだという、それは戦うことが怖かったものや、ジョブが生産職に寄った人の拠り所を作りたかったからって理由があるそうだ。


 マコ・マコとリンランを合流させるのも面白いかもしれないな。



「少し落ち着いたら見学にでも行かせてもらうよ」


「最大限のおもてなしの準備をしてお待ちしております」



 俺はとりあえず安心ということでサトウ・ヒナタとの話を終えた。

 ルジストルとリーナ、それに街のホムンクルスを見破る能力持ちがついに現れてしまったことに対して、ルジストルとリーナ両名と相談し、1日を終えた。


 色んな人間に出会っているけど、さすがに俺の記憶力がもたなそうなのが怖いぞ…。

 

 

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