第12話 スケルトン界の神を『目指す』


 「サソリ砂漠」への調査結果もようやくまとまってきた。

 「紅蓮の蝶々」に頼んでから1月経過したが、これでようやく動き出せる。


 ダンジョン入口から離れた場所にポラールの転移魔法陣を仕込み終えたのでいつでもご挨拶が出来る。ルーキーが突然ご挨拶に来て歓迎してくれるような魔王がいるかどうかは分からないけど…。


 「紅蓮の蝶々」が攻略しようとダンジョンへ入った時は広さと暑さ対策しないと攻略不可能と判断して速い段階で撤退したそうだ。

 毒持ち魔物が大半を占める「サソリ大砂漠」は毒回復と探知、暑さ対策と日が落ちた時間帯の寒さ対策をしないと厳しいダンジョンのようで、個人的には面白いと感じられるギミックで興味がある。 


 転移魔法陣を仕込めたので、いつでも動けるようになったから準備をしないといけないのだが、今日は少しやりたいことがあるのだ。



「久々だよな~、罠づくり」


「あの時は直接戦えるほど強くなかったもんね!」


「毎日が濃い時間ですので、遥か昔のことに感じます」



 俺はポラールのいる「地獄の門」エリアに罠の材料を出して、久々に罠づくりをしている。

 とても初心に帰った気持ちになるし、ダンジョンにおける罠の重要性に改めて気付くことが出来る。手作りだからDE消費も材料費だけで済むから節約になる。


 スケルトンもたくさん召喚して最初の頃と同じように作っている。

 阿修羅や五右衛門、メルにアヴァロンも参加しており、あの頃よりも格段に速いスピードで罠が完成していく。



「罠と言うのは難しいもんじゃのう」


「若の原点らしい……ダンジョンの重要な要素の1つだそうだ」



 みんなが協力して1つの物を作り上げるのは何だろうと新しい発見をくれると俺は思っている。そして時間をかけるだけ味わえる達成感。

 スケルトンたちも張り切ってくれている。スケルトンもよく見れば個性的な魔物だ。基本指示通り動いてくれるが、少し性格というものがあるようで器用さにも個体差が出ている。



「一匹面白いスケルトンがいるな」


「叱っておきますか?」


「いや様子を見てみよう」



 そのスケルトンの外見は他のスケルトンと何ら変わりがないんだけど、上手く働かなくても周囲から怒られないように立ち回っている。

 困っている他のスケルトンのところへ手伝いに行ったり、そこそこ進んでいる箇所に行き、過剰に手をかして余裕感を出す。仕上げだけ手伝ってあたかも最初からやっていました感をだす。


 他のスケルトンからは英雄扱いなので、さぞ気分も良いだろう。



「頭の良いスケルトンだな」


「狡賢いともいいますが…」



 悪い奴では無いんだと思うし、ああいった存在がいるのも1つのグループ形成では大事なのかもしれない。

 他者に認めてもらいたい感情だったり、自分を良く見せたい気持ちが強いスケルトンなんだろう。

 個人的にはそういった魔物の性格を見るのは面白いし、そういう個性的な奴は好きだ。


 そのスケルトンが出来上がったものを1人で持ってくる。なかなか面白い奴だな。



「やるじゃないか。その調子で頑張ってくれ」



 親指を突き立てて感情を表現してくるスケルトン。少し生意気な気もするが…。

 このメンバーが揃っている中で良い度胸だが、きっと俺の優しさを把握したうえでの行動でもあるんだろう。


 そのスケルトンを気に入った俺は罠づくりが一通り終わった後、個性的なスケルトンを残して配合の準備をする。



「正気ですか? ご主人様」


「なんか俺の勘が配合しろって叫んでるんだ」


「直感大事ー!」


「若にしては珍しいことだな」


「巨大なスケルトンになったら面白いもんじゃな」



 スケルトンが配合アイテムを選んでいる間に、ポラールにニーズヘッグを呼んできてもらう。

 スケルトンは割とすんなりアイテムを決めて、俺のところへ持ってくる。



1.魔名カード『空虚ノ王』 ランクEX

2.魔名カード『審判者』 ランクSS

3.魔名カード『大罪』 ランクS

4.聖魔物『凄く派手なだけの杖』 ランクSS



 なんとなく見た感じ強そうなのを選んだ感が面白いし、魔法は使えないのに杖が気に入っているようで特に何も言わないが、スケルトン本人がドヤ顔なのでどんな結果になっても悔いはないだろう。

 

 コアを呼び出して配合をタッチする。


 4つのアイテムが光となってスケルトンに吸い込まれていく。

 そういえばスケルトン関係の配合はアヴァロンに続いて二人目か。アヴァロンは最早スケルトンじゃなくなったから、このスケルトンはどんな魔物になるのやら。



「期待しておくぞ…『バビロン』」



 魔法陣に立っていたのは、少し眩しいくらいの宝石が散りばめられたローブを纏い、細い骨の指全てに豪勢な指輪をした。ド派手な杖と黄金の杯を持ったスケルトンがそこにはいた。



「ガッハッハハ! 我、ここに降臨!」


「……同じスケルトンなのにアヴァロンとは正反対なのが生まれたぞ」


「我が王に栄光をもたらすため尽力を尽くそうぞ!」



【メフィストフェレス】 アンデット族 ランクEX Lv930 固定

            真名 バビロン 使用DE??

 ステータス 体力 S+30  物理攻 S+15  物理防 S+15

       魔力 S+50  敏捷 S+10  幸運 EX+99


アビリティ ・『全ての嘘はやがてグローリー・オブ真実へと塗り替わる・ピクチャー』 EX

      ・『虚言を貫き通した悪魔メフィストフェレス』 EX

      ・『栄光は我が手に在りクイーンズ・ダウト』 EX

      ・『誰もが我が前に平伏すジャック・ザ・キング』EX

スキル  ・『虚飾ヴァニタス』 EX

     ・スケルトン強化蘇生 EX

     ・黄金の杯 EX

     ・召喚獣『黙示録の獣』 EX


・スケルトン+平均ランクSS以上になるように3種+『大罪』

・『虚飾ヴァニタス』の大罪を司るスケルトン。本体のステータス能力は非常に低いが相手を混乱させて自分のペースに乗せることが出来れば圧倒的な力を持つ。自分に不都合な結果を都合よく変換させることもできるトリッキーな能力持ち。

・『黙示録の獣』のほうが圧倒的に強いのは内緒だ。



「癖が強すぎる」



 強いのは確かなんだけど、あまりに強い癖、圧倒的に低いステータス。そして本体のキャラが面倒なのでポラールに教育を頼むと、さっそく連れていかれていた。


 スケルトン強化蘇生は俺のGランクしかコアから呼び出せない縛りの中では最強レベルに役立つから重宝しそうだ。


 あの見た目で派手な杖を持って魔法・魔導が1つも使えないのはどういうことだろうか…。そういった姿が『虚飾ヴァニタス』に相応しいのかもしれない。


 まともな攻撃スキルがないのが悲しいけれど『黙示録の獣』が強いからいいか。

 

 同じスケルトン派生なのに性格も能力もが真逆なところを見ると魔物にもやっぱり個性があるし、しっかりとした意思がある。

 プレイヤーが言う、これを人が創り出した世界っていうのは無理があると思うんだけどな…。



「スケルトンを大量に呼び出すほどに意味がある」



 スライムに自分の細胞を僅かにでも注入すれば、自身の分裂体として作り直せるメルと同じような戦法がとれるのがバビロン。これはダンジョンエリアを組み直さないといけない。

 スライムもスケルトンも俺が召喚できるGランクの魔物なので物量戦略が2面で展開できるようになったのは素晴らしい。



「サソリ大砂漠で喧嘩売られたらやってみてもいいかもな」



 スライムとスケルトンを大量に呼び出すのは正直DEが余りがちな俺からすれば問題無い。

 バビロンは強化蘇生で骨の欠片でも残っている限り、スケルトンを永久機関に出来るスキルなので、メルのスライム戦術と合わせて砂漠を埋め尽くしてやるのが面白そうだ。



「やっぱり罠とか戦争について考えてるほうが性に合ってるのかも」



 久々に初心に帰って罠づくりをしてみたけど、やっぱり楽しいし、ウキウキする。

 魔王戦争でどういう戦術を使うってのも考えてると楽しくなってしまい時間を忘れて没頭してしまうので、普段は考えないようにしている。


 まぁ戦術に関しては、『枢要悪の祭典クライム・アルマ』のゴリ押しで今のところ済んでいるから出番が無いんだが…。


 そんなことを考えているとポラールがニーズヘッグを連れてきてくれた。レーラズやカーバンクルにシンラも様子を見に来たようだ。



「カーバンクルのほうが先輩だけどやらないのか?」


「きゅっ!」



 配合に誘ってみたがそっぽ向かれてしまった。

 ニーズヘッグは俺のほうにきて頭を差し出してくる。可愛い奴だ。

 差し出された頭を撫でながらアイテムを指さして、そこまで誘導する。


 ニーズヘッグからすれば小さいアイテムたちだから、よくわからんだろうけど、ニーズヘッグの視線でなんとなく察しながらアイテムを選んでいった。

 

 10分ほど一緒に選んで、ようやく4つのアイテムが決まった。



「よし…行こうか」

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