第11話 戯れる『幻獣』たち
――『罪の牢獄』 居住区 果樹園
「おぉー! 速えぇぇぇ!」
「きゅ~~♪」
俺は今、『罪の牢獄』居住区にある果樹園でニーズヘッグに乗って散歩中だ。
レーラズに怒られない程度の速さで木々の隙間を器用に進んでいくニーズヘッグに捕まりながらカーバンクルと楽しんでいる。
けっこうな速さでテンションが思わず上がってしまう。最早散歩と呼べないかもしれないけれど、とにかく楽しい。
「凄いなニーズヘッグ! 大きくなってきてるのに速さは変わらないんだな!」
「きゅ~~♪」
ニーズヘッグに声をかけているのに毎回反応してるのはカーバンクルなのが悔しいけど可愛い。
レーラズの下、日に日に成長しているニーズヘッグ。
身体も大きくなり、自分の尻尾を追いかけまわしていたら巨大な竜巻を起こしてレーラズを怒らせるほどのパワーを得たらしい。
五右衛門を丸のみ出来るほどの大きさだから、木々の隙間を通っていくのは大変なはずなのに器用に動ける敏捷性も凄いもんだ。
「カーバンクルも成長してるのか?」
「きゅ~??」
「惚ける顔も可愛いのは反則だな」
「きゅ~~♪」
あまりにも可愛いので撫でまわして許してしまう。
そんな俺たちをレーラズはのんびりと果樹園の果物たちの世話をしながら見守ってくれている。ヤンチャ子どもにしか見えていないかもしれないが、楽しい時はとことん楽しむのが世の理ッ!
ニーズヘッグとカーバンクルを連れて、普段は出来ないLv上げにでも行こうかと思っていたらカーバンクルが遊びたいとのことで折れてしまったが、これはこれで楽しいので良しとしておくか。
「よし! ニーズヘッグ止まってくれ」
しっかり俺の声が聞こえていたようで、ゆっくりと動きを止めてくれるニーズヘッグ、カーバンクルはまだまだご所望のようだがとある気配がしたので停止してもらったのだ。
木の上のほうを見てみると、空間に大きな穴が開いており、そこからシンラが飛び出してきた。
シンラはそのまま俺のほうにきて、同じくニーズヘッグの上にとまる。
カーバンクルは一瞬にして俺の腕の中から脱出して、シンラの身体を登っていき甘えている。とんでもない浮気者だ。
シンラも5m程の大きさになってはいるが、それでもニーズヘッグの頭の上に俺の含めて乗れるってのは、ニーズヘッグがどんだけデカくなったことやら…。
『
3体で戯れ始めたので、寂しくなった俺はレーラズのところへ行くことにする。
「私も忙しんですよ~?」
「……ごめん」
「冗談ですよ♪ 一区切りついたので一緒にお昼寝しましょう♪」
「やっぱ昼寝なんだな」
果物の様子を見ているレーラズに声をかけたら、一緒に昼寝をする展開になり、地面から出てきた木の根にレーラズの花ベッドにまで連れていかれる。
相変わらず良い匂いのするレーラズが寝転がる俺の横でニコニコしている。よく分からないが楽しそうで何よりだ。
「こういう時間が大切なんですよ♪」
「…たまぁにはいいか」
「おやすみなさい♪」
普段は寝付くのに少しかかるけど、果樹園で寝ると一瞬で寝れるので、月に2回くらいはここで寝ても良いのかもしれないと思いながら、睡魔に逆らうこと無く、俺は意識を閉ざした。
◇
――『罪の牢獄』 居住区 コアルーム
プレイヤーを配下にしてから20日ほどたった。
途中でそういえばと思い実績を見てみたら、いくつかのボーナスが来ていた。
1.プレイヤーを1人以上配下にした記念 【50000DE】
2.プレイヤーを3人以上配下にした記念 【ソウルピック10連チケット】
3.プレイヤーを5人以上配下にした記念 【100000DE】
ガチャの時間だぁぁぁ! と1人で盛り上がってそのままガチャを引いた。
このガチャは基本大当たりの集まりだが、なんとなく傾向を見てみると天使や悪魔、魔王や神属性に寄っているようだ。
他にどんなのがあるか分からないけど、何かに特化したピックアップも存在してたんだろうな。
結果はこんな感じだった。
1.聖魔物『凄く派手なだけの杖』 ランクSS
2.魔名カード『コピー』 ランクSS
3.魔名カード『神喰らい』 ランクEX
4.聖魔物『虹色の宝石』 ランクEX
5.魔名カード『風神』 ランクSS
6.魔名カード『熾天使』 ランクSS
7.魔名カード『天魔覆滅』 ランクEX
8.聖魔物『古びた布切れ』 ランクEX
9.聖魔物『神秘性を纏う皮』 ランクEX
10.魔名カード『コピー』 ランクSS
11.魔名カード『魔人』 ランクS
これでもうすぐ配合できるようになる誰かの選択肢が大きく広がる。
カーバンクルは相変わらず嫌がりそうだからニーズヘッグになるのかな?
まぁ時期が来るまで待つとしようかな。
「それにしてもプレイヤーから得た情報をまとめるとよく分からんのだよな」
「サソリ大砂漠」の調査が終わるまでの期間でプレイヤーの情報についてかき集めてみたんだけど分からないことだらけだ。
まず全員『Free Desire Online』というゲームって呼ばれるものをした瞬間にこの世界に引き込まれてしまったということ。ここからは意味不明だ。
女神という人物にはこの世界に来る前に1度会っているが、この世界に来てからは会ったことがない。
この世界で条件を達成すれば莫大な賞金が元の世界で手に入るとのこと。
この世界と地球では進む時間の速さが違うとのことだ。
まとめてみても理解不能で困る。
『Free Desire Online』の世界は、この世界に入る1年以上前から公開されていたらしい。
多くのプレイヤーがこの世界に来たが、すぐに死んでしまったり耐えられなくなって自害してしまったりしているとのこと。
そしてこの世界と地球は食べ物や金銭の感覚だったり、出てくる魔物は地球での創作家たちが記している物と類似しているので、ゲームと言うのは確かだが、明らかにゲームではないような思考だったり世界の流れなので、プレイヤーたちも混乱しているとのことだ。
つまりどういうことだ?
「この世界はプレイヤーから見たら、地球の誰かが作りだした世界ってことか」
俺たちからすれば何千年もあるこの世界をどう作って歴史を刻んできたのか分からないし、人間は100年ほどで死んでしまう生き物なのは変わらないようなので、少ない寿命でどうやったのか謎だ。俺は生まれて1年も経過していないけど…。
そしてプレイヤーが世界に来たのと同時に生まれた数の多い魔王。
俺の同期は史上1番数が多いので、もしかしたら何か関係あるのかもしれない。
もし行けるなら、みんなを連れて地球とやらに行ってみたいが、プレイヤーたちが暮らしていた地球には魔法も魔物も存在しないようで平和に仕事をしたりして過ごしているようなので、俺たちが行ったらとんでもないことになってしまうからダメだな。
最古の魔王先輩方もなかなか意味不明な情報だったようで報告はしたんだけど、自分たちなりに調べてみるとのこと。
アクィナスさんとリンさんは稀に遊びに来るため直接話したけど、そこまで難しく考えても疲れるから、もっと色々分かってから真剣になるそうだ。
「どのプレイヤーも勇者の一部が名前的に日本から来た人だとか言ってたな」
『神速刃・暁蓮』と『救世の賢者・坂神雫』は名前的に日本人だと全員が言っていた。だがプレイヤーとは違うスキルだし、来た時期も違うことから『Free Desire Online』とは関係が無い可能性が大きいようだ。平和な国からきた人間がいきなり魔王を討伐できる力を得る……だったら女神が直接魔王と戦えばいい話なのに何故そうしないのかは分からない。
もし次に勇者と話す機会があれば聞いてみたい。
「そしてプレイヤーの中でも有名なギルドや猛者がいるってのも聞いたな」
プレイヤーは『メニュー』とやらから掲示板とか呼ばれる機能で匿名同士でメッセージのやり取りのようなものが出来るようだ。
そこで有名ギルドや猛者プレイヤーの話がよく出ているようなので、今度まとめてもらわないとな。
「色々テンコ盛りで訳わからなくなってくる」
とりあえず一歩ずつ進んでいくしかない。プレイヤーと勇者は確実に魔王を狙っているので、決して味方ではないことだけは確かだ。
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